52 マサル峠を越えて_14
* *
ホンと、……。
マジで、「半次郎」は油断のならないヤツだね。
私は、元女盗賊が「半次郎」のせいでおかしな判断をしないよう、……。
そう思って、さっそく念話を送ろうとしたところ、……。
『「半次郎」、アタイば、ハルコン殿ば指示に従うでやす。突撃するんば、「半次郎」だけでするがよかっ!』
『えぇ~~っ、ウチだけぇ~~っ? マジでぇぇぇっ!』
『アタイば、やらんと!』
『マジでぇぇぇっ、ハルコンに褒められたくないのぉぉっ?』
『るさぃっ! しぇからしかねっ!!』
その言葉を受けて、「半次郎」は少し俯きながら顔を背け、黙ってしまった。
「……」
時おり鼻を啜る音がしたけど、……。
でも、これって「半次郎」お得意の演技なんじゃないかなぁって、……。
そう、ハルコンは思った。
『なら、ウチだけ吶喊しちゃうけど、……。止めないでね?』
そう言って、「半次郎」が茂みから立ち上がろうとすると、……。
『待つでやす!』
言葉と同時に、元女盗賊の右手が、「半次郎」の左手首をガシッと掴んだ。
元女盗賊の心拍数が、再び跳ね上がった。
その意識にダイブしていると、こちらまで緊張感が伝わってくる。
『元女盗賊ぅ~~っ! 痛いって、痛いってば!!』
『決して、離さんでやすよ! ハルコン殿から、アタイらば、タマ取ってこいとば言われてなかっ!!』
『痛いっ、痛いってばぁ! ワァ~~ッたよ。ちゃんと斥候役務めるからぁ~~っ!』
『げにまっことでやすな? アタイば目ぇ、ちゃんと見んしゃい!!』
2人のやり取りを窺って、……。
マジで、「半次郎」のヤツ、とんでもねぇなぁとハルコンは思った。
このまま放置していたら、2人が喧嘩を始めてしまい、野盗達に見つかってしまうかもしれない。
もう、こうなったら、……。
掴み合いをしている元女盗賊と「半次郎」を他所に、……。
右後方に控えていたクマと角ウサギの群れに、私は野盗達に向けて吶喊を開始させた。
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