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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十三章 神の剣
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6




「………………前ニネフォス王、カウルゼンツによって街が落とされたと?」

「はい……」

「あの人がそのような戦力をどうやって確保したのかがわかりません。一体どうしたというのですか?」


 カウルゼンツ・ラグフレア・ニネフォスが大きな声で宣言し現れ、国の奪還を宣言した。そのうえで街の兵士と戦いそれらを圧倒して街を自分のものとした。そういった報告が現ニネフォス王のもとへと届く。彼としてはかなり胃の痛い問題となる。前王であるカウルゼンツは指名手配し探していた人物。本来ならホムンクルス関連やテイスピースを攻めたことなど、様々な要因として彼が原因とされた。まあ、一瞬のスケープゴートとしての利用としてのものだ。一応カウルゼンツの責任が大きいところであるが、すべてをカウルゼンツに押し付けるには少し足りないというべきだろうか。

 しかし、そのカウルゼンツがどうやら兵を指揮し街を奪ったらしい。その報告がニネフォス王のもとに届き、その対処が必要な状況となっている。町一つが奪われたのを放置できるはずがない。それにカウルゼンツの方も宣言された内容からすればどうしても最終的な目標はニネフォスの現王となるだろう。そして将来的に他国へと手を伸ばす、まずはテイスピースがその目標となり得る。それはそれで問題、困ることだ。テイスピースだけでなくキアラートも対象になり得る。それも問題だろう。

 ともかく、どうにかして何とかしなければならないが……そもそもカウルゼンツがそういったことをできる方がおかしい。町を奪える規模の兵を指揮していればそのことから情報が洩れるだろうし、そもそもそんなに兵を率いることができるかといえばできない可能性の方が高い。なぜなら兵を率いるための資金源がない。またカウルゼンツという人物に対する信用の問題もある。ある程度の知己のある人物であればカウルゼンツが前王であること、指名手配されていることなど知っているだろう。そんなカウルゼンツにつき国に対して反するというのは彼らとしても危険な行動となる。むしろ指名手配されているのだから国に逆らうよりもカウルゼンツを捕まえて連れて行く方がいい。カウルゼンツも当初はそこまで兵を率いているということもなく、人数は少なかっただろうと思われるからそういったこともできたはずだ。だがそうはならなかった。


「……聞いた情報ですと、戦力は二十もいなかったと」

「……………………どういうことですか? 強力な魔法使いでもいたと?」

「わかりません。ですが、こちらに伝達してくれた者からは……神の剣を前王は得てしまったと」

「神の剣…………それはニネフォスの歴史、国の樹立に関わった王の持っていたといわれる?」

「おそらく」


 神の剣、王の剣、呼び方はいろいろ有れども、ニネフォスの樹立に関わる話に出てくる剣、その持ち主である王の話は有名だ。ただ、剣がきわめて強力でありそこに特殊な力が宿っていた、という剣の特殊性についての話はそこまで知られているわけでもない。王が強かった、という伝説、歴史の話はあっても、王が持つ剣が神の剣と呼ばれるほどの特殊な剣、強力なものであったということはそこまででもない。ただ噂話として、また王家に伝わる話としていくらか知られていることはあった。下に伝わる内容はかなり伝言ゲームで本質からは離れているとはいえ、それでもやはり剣についての話として知られており、貴族や王家ともなればその詳しい真実は知らずともかつて国の樹立に関わった王の持っていた剣は特別で強力な代物である、というのはある程度知られている。

 ただ、それが今も残っているとか、あるいは本当に特別でそれこそ国家を転覆させられるほど強力であるとか、そこまでの考えはない。一種の魔剣として特別扱いされそこそこ強力であった、そういう考えが主流。また一部の家にはこれがその剣だとして残されているものもある。これらも含めて本物の剣を隠すためのものだったのかもしれないが、それは今では彼らの知るところではない。


「…………神の剣がどういうものかは知りませんが、十数人の規模でも街を奪える、それくらいに……いえ、そもそも。前ニネフォス王が参加したのですか?」

「いえ……おそらくはその部下である兵が参加したのみかと」

「……部下にも神の剣は影響を与えると?」

「わかりません」

「それもそうですね……しかし……」


 十数人で街を奪えるほどの強さ、それでしかも神の剣を持つ王が参加していないという話。仮に王の参加もしていればその強さはいかほどなものか。そもそも正確な強さの情報はまだ得ていない。得られている情報は前ニネフォス王が街を奪ったこと、国に対して敵対的……いや、国を奪おうと画策していること。その最終目標はニネフォスの王であること。それくらいだ。


「………………放ってはおけません。すぐに準備をして前王を倒す算段を立てましょう」

「はい」

「そしてこのことはテイスピース、キアラート、そしてアンデール……いえ、周辺の国すべてに伝達を」

「……いいのですか?」

「私がどうにかできれば何の問題もありません。ですが何もできなかった場合、それが最大の問題なのです」


 仮にカウルゼンツをニネフォスだけでどうにかできればそれはそれで問題ない。もともと処刑するつもりの相手である。生かしておく必要性はないし、殺せるならその方がいい。また今回神の剣を持っているという話。仮にそれが本物ならば現在のニネフォスにとっても大きな意味がある。まあ、それでニネフォスが他国に攻め入るようになるかといえば、どうかはわからないが、ともかくそれをどうにかして奪えれば大きい。

 しかし、そうできるかもわからない。それこそ国を作るのに関わるほどの力であれば今現在のニネフォスの兵で対抗できるかもわからない。そしてその目的は国家転覆、ニネフォスの王を倒し自分が王に返り咲くこと……まあ、カウルゼンツ、前ニネフォス王の性格を考えればそれが目的になるだろうと推測できる。そうなってから問題に対処するのは大変だ。事前に今回のことに関して伝えておいた方がいいだろう。その方がニネフォス的にもいい。


「私は最後まで王として前王を止めるための指揮を」

「……逃げないのですか?」

「向こうの目的には私の存在もあるでしょう。私が逃げれば前王は私を追う。それは面倒なことにつながりかねません。それに……彼の王に逃亡を許してしまったのは私です。どうにかする責が私にはあるでしょう。私は今はもうこの国の王なのです」


 簡単にはいかないということは分かっている。しかし、王という立場になった以上、ニネフォスの現王にも王としての矜持はある。それゆえに最後までニネフォスに残る。もちろん最悪の場合前王に討たれることとなるが。


「特にアンデールには絶対に伝えてください。仮に彼の王が持つ剣が本当に神の剣と呼んで差し支えない強大な力であれば……並の兵ではかなわない。数をそろえようと対抗できない可能性がある。彼の王との因縁はわが国にあるでしょう。しかし、前王の横暴を許すわけにもいかない」

「…………わかりました」


 アンデール、正確にはアンデールの王である公也はテイスピースとの戦争への参加、またホムンクルスのことを暴き完全に打ち止めたという点、いろいろな意味でニネフォスには因縁がある相手だ。ただ、現ニネフォス王にとってはだからこそ頼るべき相手であるし、それほどまでの力を有するがゆえに頼れる相手であると考えている。もしカウルゼンツの得た神の剣が本当に神のごとき力を有するなら、トルメリリンのワイバーン部隊、あるいはキアラートの魔法使い部隊、ほかの国に存在する隠し玉と言える多くの強力な兵でも勝てるか不明だ。もちろんそこまでの力を有するとは考えていないが……いやな予感というものはある。それに、歴史に語られるその力の特殊性、また部下十数人で街を奪った事実もある。油断はできない。




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