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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十三章 神の剣
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3




「あの剣普通の剣と何ら変わらないようにしか見えないな……」

「なんかこう、やばい剣ならそれっぽい雰囲気を感じると思うんだが」

「そんな感じもしないよな。ほかの場所の方がよっぽど……」


 その剣はこの場には似つかわしくない、そう思っていいくらいあまりにも普通に感じられるものだった。まあ、この場、ほかの場所、その場所の方がよほど雰囲気が凄いというか、装飾や素材、様々な要素でそのような感じている。剣は特にこれと言って装飾がされているということもなく、まるで普通の剣にしか見えない。剣から何か特別な気配を感じるわけでもなく、何か力があるように見えるわけでもなく、そしてあまりにも普通というか、王がかつて使っていたといわれても信じられないほどに普通、みすぼらしいといってもいいくらいの代物だ。


「確かに見た目は普通の剣にしか見えぬであろうな」

「……私もそうとしか見えません」

「だが考えてもみよ。この場所に普通の剣があるのが普通だと思うか?」

「…………いえ、確かに……この場所の普通の剣が置いてあるのはおかしな話になりますね」

「それは……言われてみれば」

「で、でも、あんな普通の剣が本当に使われていたのか?」

「見た目などいくらでも変えようと思えば変えられるかもしれぬ。それにあの見た目が本当の見た目であるとも限らぬ。誰もあの剣を怪しまず、ただの剣であればいらないと考え放置する、そうさせるように見た目を普通に見せているかもしれぬ。あるいはあのように刺してこの場においてるからこそ見た目があのように見えているかもしれぬ。人の手に持たれなければただの剣である、そう見せかけているかもしれぬな。だからこそかつての王もあの剣を有しながら、とられることなく剣をしまっておけたという可能性もある。真実は分からぬがな」


 明らかに荘厳で、様々な魔道具が使われた封印施設、あるいは倉庫のような施設。そんな場所にわざわざ地面に突き刺してまで置かれている剣が見た目が普通の剣だからと言って、本当に普通の剣であるかと言われればそんなはずはないだろう。普通の場所にあるならばともかく、ここにある。そこに刺さっている剣が普通の剣であるはずがないだろう。

 あるいはかつて王が使っていた剣というのは力ある特別な剣であるがゆえに、自身の見た目を変化させるような特殊な力があったという可能性もあり得る。特殊な剣だからそういった力を持っていてもおかしくはないだろう。もっともそんな要素にリソースを使うくらいならばもっと特殊な力を強めたり様々なことができる方に力を費やすと思われる。

 一番可能性があるとすれば、単純に剣がそのままその形であるという点。確かに王が使った剣ということで特別であるが、その形まで特別にする必要性はないだろう。もちろんカウルゼンツの言う通り、この場において今の姿、形をしている可能性もないとは言えないものである。


「なに、あれを抜けばわかることだ。剣の見た目がどうであれ、この場にある剣はあれのみ。あの明らかにこの場があの剣に作られたといわんばかりに突き刺されているのだからあれが本物ではないとは考えられぬ。ここまでの道をわざわざ用意していたのだぞ?」

「確かにそうでしょう」

「さて、それでは抜こうではないか。ああ、もちろんあれは我が抜く。あれは我の手にあるべきもの、ニネフォス王家にあるべき代物である。他の者はあの場に上がるでないぞ。ああ、上がらせるなよ? 我に大人しく従っている者たちしかいないと我も思ってはおらぬ」

「御意にございます」

「……………………」


 いくらカウルゼンツに傲慢なところがあろうと、自分に付き従う部下たちが本当に本気で自分のことを尊敬し付き従っているとは思っていない。一部の部下はまだ本気で忠誠を誓い共にしているのでまだ信頼はあるが、現在の部下の中には途中で部下になったもの、金で雇ったものもいる。信じられるはずもない。


「ふふふ……歴代のニネフォスの王すら得られなかった剣を我は得るのだ。これで我を追いやった者たちを排除しニネフォスを取り戻せる……いや、それだけではない。テイスピース、キアラート、周辺各国への反撃も可能であろうな……く、くふ、くくははは!」


 笑いながらカウルゼンツは剣の柄に手をやり、剣を引き抜いた。剣はそこまで深く刺さってははいないものの、しっかりと刺さっているように見えた。しかし、カウルゼンツが剣を抜く際にはあっさりと剣を抜くことができた。別にカウルゼンツの力が強いというわけではなく、単純に剣が誰が持っても抜きやすいように仕込まれていたから、である。


「っ!?」

「これは……」

「雰囲気が変わった……!」


 そして剣を抜いた瞬間、剣の雰囲気が変わる。見た目は変わらない。剣の雰囲気が変わると同時に、その剣を持つカウルゼンツの気配も変わった。強者にある独特の雰囲気、気配、威圧感、存在感、それを感じられるようになった。剣を持った時点で確かに剣を有する者を強化するようである。それであるからこそ、その剣は国をひっくり返すくらいの力を持つとして王が使っていたのだろう。単純に剣自体が強い、剣を有する者が強くなる、それだけでも価値としては大きい。しかしそれくらいならば普通の魔剣でもできなくはない。神の剣と言われるほど強力な剣の真骨頂は他にある。


「ほう…………確かにこれは。相当なものだ。我が持つにふさわしい代物よ」

「カウルゼンツ様。問題ありませんか?」

「うむ。流石神の剣と言われるほどの代物よ。あふれ出るほどの力を感じる。そして、この剣より我に贈られた様々な知識、力もある」

「知識と力ですか」

「剣として強力な武器である、持つものを稀代の強者とする、それもこの剣の力であるようだが、それ以外にも多々この剣は力を持っているようだ。なるほど、これならば一国をひっくり返す、国づくりを可能にする、それがわかるというものである」

「……そうなのですか」

「その一端を見せよう」


 カウルゼンツは最も自分に付き従っていた部下に対し、剣で指す。その意図はその場にいる者にはわからなかった。カウルゼンツだけが、その意味を理解している。


「う………………があっ!?」

「生まれ変わるがいい。これよりお前は永久に我に仕える。今までも十分なほどにお前は忠誠を誓い仕えていたが、これから先はこれまで以上のものとなる。そして強くなる。多少見た目は変わってしまうがな」


 カウルゼンツが行ったのは自分の部下を自分の僕と変えること。彼は今までも十分に、カウルゼンツに心の底から忠誠を誓い従っていた。それでは足りない……というわけではないが、カウルゼンツはもっと自分に従ってもらいたい、そう考えた。誠の中心であるからこそ、そのすべてを懸けて自分に従ってほしいのである。そして神剣の力にて、生まれ変わらせる。肉体の変質、存在の変質、少なくとも本来の人としての在り方から変化した。それくらいの力が神の剣にあったのであった。



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