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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十三章 神の剣
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「くっ…………伝承通りとはいえ、本当に伝わっている話通りの場所だとは……もう少し手心を加えてもよかったろうに」

「はい、確かにこれは大変ですね……」


 カウルゼンツ・ラグフレア・ニネフォス。前ニネフォス王である彼は現在ニネフォス王家に伝わるかつての王家、ニネフォスの始祖が持っていたといわれる国作りの剣、莫大な力を秘めた国をひっくり返すほどの力が存在する剣を探して過酷な洞窟を探索中である。彼についてきた数人の部下、彼を慕い、あるいは忠誠を誓っている彼らはカウルゼンツについていっている。正直その中に裏切り者とか、あるいは探している剣を奪うつもりでいる人物もいるのかもしれないが、少なくともいつもカウルゼンツのそばに控えている人物はカウルゼンツに忠誠を尽くし、その身を粉にして働いている。なので今のところカウルゼンツは問題なく探索ができている。

 ただ、カウルゼンツ自体はそこそこの年齢で、また王としてあまり外に出ることなく贅沢な生活をできていたためか、その身体能力は洞窟を探索するのには向いていなかった。それなりの期間の逃亡生活があったとしても、なかなか体力は年齢からか身につかず、洞窟探索は容易ではなかった。また、洞窟自体かなり大規模であるようで探索も簡単にはできない。地図を作り、行き来に必要な食料を持ち込み、徐々に内部の様子を把握してようやくかなり奥の方まで探索で来た。かつての王はどうやらあまり厳しい剣の封印を行ってはいないが、簡単に剣に手を届かせることはできないようにしているらしい。長期間使われていなかったこともあって魔物や獣も一部入り込んでいたりしてそれらの存在もなかなか探索が厄介なことになっている原因である。


「しかし、しばらくは一本道であった。そろそろつくのではないかと思う」

「洞窟の規模から考えても、そろそろという可能性は高いでしょう」

「うむ。お前たちだけが頼りだ。よろしく頼むぞ」

「ええ、もちろんです」


 探索もかなり長期に渡ったがそろそろ剣のある場所にたどり着く頃合いであるようだ。これに関しては彼らの経験、あるいはなんとなく力のある剣の気配を感じているためか、もしくは洞窟の大きさから全体の様子、外からの様子で推定しているのか。あとはいくらかつての王が圧倒的な強者であったとしても、そこまで無駄に深い洞窟を作ることはしないだろうという考えもあるだろう。かつての王は剣もあり強者だったのかもしれないが、その後の王は普通の人間と大差はなく、またかつての王も剣を手放せばそれまでの経験ゆえに結構な身体能力を持っていただろうと思われるがそれでも大分力は落ち、洞窟を抜け出るのが大変なことになる。自分のこと、その後の子孫のことを考えれば、探索自体はかなり厳しく、また入り込み調査しよう、探索しようとは思えない深さではあるが、そこに何があるかを知っていれば奥まで行くつもりになる、そんな深さにしていると思われる。まあ世の中の冒険者はそういった未知に対する好奇心が強いのでもしかしたら入り込み探索しようと思った冒険者もいたかもしれないが。そもそも場所が隠されていたり、探索するのに必要な食料やら持ち込むべき物品の多さからかなり難易度は高く、たまたま偶然奥まで入り込めたということでもなければまずそうそう探索使用とは思えない環境、思えない程度には深い場所である。







 そして彼らはたどり着く。それまでもまだ人工的な環境だったが、長年の経過か、あるいは通り道であるがゆえにそれほど厳密に作られたわけではないからか、そこそこ雑で大まかなつくり、乱雑で自然にできた洞窟と言われてもまだ信じられる程度には荒い作りだった。しかし彼らがたどり着いたのは明確に人工物であるだろう扉。


「おお……この先にあるのだな」

「でなければこの扉が何のためにあるかわからないでしょう」

「もしかしたら剣があるのではなく、何者かの集落などがあるかもしれませんよ?」

「…………それはないでしょう。人が来るにはここは深すぎるところです。行き来もこれまでの道を思えばあるようには思えません」

「あ……確かにそうですね」

「ふん。そのようなことは考えずともよい。何より先に進まねば何もわからぬのだからな。さあ、扉を開けよ」


 カウルゼンツの言う通り、この扉がなんであるかは先に進みそこの様子を見なければわからない。ただ、いろいろな想定はしておいた方が安全のためにはいいだろう。もっともカウルゼンツは王。探索においても魔物や獣を相手にすることはなく、あくまで自分に従う部下についてきただけに過ぎない。そして扉を開け、その先の様子を見るのは部下の仕事である。仮に扉に罠があったり、無効に魔物や獣がいたりして襲ってきたりしてもカウルゼンツは別に危なくない。なので遠慮なくそのようなことが言えるのである。

 まあ、そのあたりのことはあまり考えなくてもいい。実際先に進まなければ話にならない。わざわざここまで来たのも剣のある場所に到達するため。何かあるかもしれないと身構え怯え、危ないかもしれないから戻ろう、そんな話にはならない。結局ここまでかなり苦労してきたのだから先に進まなければ完全に無駄骨、苦労するだけ無意味だったということになってしまう。


「む……? ここは洞窟内であるはずだが」

「明るいですね……しかし、何らかの明かりが存在している可能性はあり得ます。かつての王が強者だったならそう言った仕組みを作っている可能性はあるかと」

「冒険者でも探索した遺跡にかつて存在し今は存在しない様々な仕組みがあるという話はありますし」

「なるほど……確かに珍しい魔道具、希少な魔道具にはずっと機能し続ける物もあるな。あるいは……光晶などの永遠に光を放つ意思を使っている可能性もあるか。稀少でめったに見られるものではないが、かつての王が剣を持っていた時の強さであればそのような代物を入手していてもおかしくはなかろう」


 この世界にも魔道具と呼ばれるものがあり、場所によっては永続的に機能するような魔道具を作ったり、それを残していたりすることもある。王が使っていた力ある剣を封じておく場所であればそのようなものが使われていてもおかしくはない。まあ封印といっても特別な力で封じているわけではなく、この地に隔離しているという形で封じているわけだが。また光晶と呼ばれるようなずっと光を放つ鉱石などもある。この世界はファンタジーに寄っている特殊な物品や生物が存在する世界。そんな世界であるがゆえにそういった本来ならありえないような代物、魔法のような代物も存在する。いや、魔法が普通に存在する世界なわけだが。


「なんと…………下手をすれば我が城よりも装飾が立派であるかもしれぬ」

「確かに素晴らしい出来ですね……」

「ここにあるものを持ちかえればそれだけで一財産になるかもしれないですね」

「それは認めぬぞ。ここは我らがニネフォス王家の管理するべき場所。この地にある物はすべて我の物である。持ち帰ったとしても我や我が妃などが使うのを許されるだけだ。勝手に触れるでないぞ」


 不満そうな顔をする一部の部下。まあ、彼らもカウルゼンツについてきたことには打算があったからというのもあるだろう。追いやられた王に価値などない。そんな王についてきたのはやはりこういった特別な代物を得て一攫千金を得られる可能性があったから、あるいは王が一発逆転してニネフォスを取り返す可能性があると考えたからだ。こうしてせっかく得られるかもしれないと思ったもの二触れることすら許されない、機会を与えられないのは彼らとしては大いに不満である。


「しかし、ここにある物のなかで最も価値があるものは……あれだ」

「…………カウルゼンツ様がお話していた、かつての王が振るいし剣ですか」

「うむ。あれこそ神の剣。神剣である」


 そういった彼らの見つけた価値のありそうなものよりも、荘厳な場に刺されている特別な剣。それこそこの場においてもっとも価値のある代物。かつての王が振るいし剣、神の剣と呼ばれる代物。ただ見るだけでは何も感じられない、よくわからない、ただ、それがただの剣であるようにしか見えないのに。しかし、やはりそれは特別な剣であるようで、この空間においては異彩を放つ代物であった。



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