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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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「なんか僕とんでもない話を聞いていないかい?」

「とんでもない話をしているな。当然だがこの城の諸々も含めて秘密で頼む」

「まあ、代わりにこの城に存在する多くの魔物について調べさせてもらっているし、いろいろ教えてもらっているし……それにホムンクルス関連の資料もここにあったとはね」

「もちろんそれも秘密だからな? それに関しては俺も表に出さないよう封印しているものだ。見せるだけでも特別だと思ってもらう」

「わかってるよ。ホムンクルスに関してはね……僕も変にかかわりたくないからね。魔物研究者としてはちょっと気になるけど。一般的な魔物とも違うからね、人造の魔物はまた少し話が違ってくるし」


 魔物研究者として研究するべき魔物は基本的には普通の魔物。魔物に普通も何もないかもしれないが、要は自然発生した魔物が主となる。そういう点ではホムンクルスなどの人造魔、アンデッドなどの死者や霊体や不死の魔物は研究における対象にはなりにくい。もっともなりにくいがならないわけではないのである。少なくともアルディーノにとっては自身の興味という面でも調査、研究の対象にはなり得る。


「それで、いろいろ見て回ったが今後はどうするつもりだ?」

「とりあえずはまだまだこの城で魔物の調査だね。アンデールの周辺地域の魔物も僕は完全に調査したわけではないし。いろいろ見て回ったり調べたりしたいものもあるし、ロムニルやリーリェたちともいろいろ話しておきたいこともあるしね。精霊だってまだまだ未調査な面が多いから」

「そうか……しばらくは残るんだな」

「うん。まあ、ロムニルたちにはちょっと悪いかもね」


 一応ロムニルの自分に対しての対応、雰囲気がちょっと棘のある感じというのはアルディーノは分かっていないわけではないが、別に友人である事実は変わらないしその対応自体はロムニルがアルディーノを意識するがゆえの物。結局友人関係を続けていくうえでそれ自体をどうにかするのは難しいため基本的には考えないようにしてやっていくしかないものだ。まあ、それがゆえにアルディーノもあまりロムニルたちのそばに長居をしないのかもしれない。いや、普通に魔物調査の方が優先するため長居しないのだとは思うが。そういう点では今回のアンデールでの滞在は未調査、普通では見られないような奇特な魔物が多いためその調査、研究で結構な期間居つくかもしれない。




「しかし、エルフたちとはうまく関係の構築はできなかったわね……同盟、あるいは何か助け合う契約、盟約でも結べればと思ったけど」

「それは仕方ない。それだけ人間とエルフの関係は複雑だってことだろう」

「ここまでとは思わなかったけど……意外と多種族とも仲良くなれるのはここで経験しているからなんとかなる、と思っていたのかしら」


 公也とハルティーアでエルフとの良い関係を構築する約定を結ぶのに失敗した話をしている。


「ダメだったのですか」

「ダメだったんだ。まあ、今回は精霊をどうにかするついで、みたいなものだったから」

「私の方はそっちが本命だったんだけど?」

「アンデールとしては精霊よりもエルフとの関係の方が大きいのですが?」

「………………一応アルディーノから頼まれたのは精霊の方だから間違ってはいないだろう」

「そっちだけが目的だったら絶対に行かせるつもりにはならなかっただろうけどね」


 一応今回の件でエルフとの関係構築に関しては精霊を退けた後の話。そして公也やアルディーノは精霊の方が目的だった。しかしエルフとの関係も重要なもの、少なくともアンデールという国においてはそちらの方が重要であり、わざわざハルティーアがついていったのもそちらが目的だったからだ。そういう点ではハルティーアがついていってもうまくいかなかったというのはハルティーアの力が足りていないともいえた。そういう点でハルティーアはちょっと傷心である。もっともクラムベルトがついていったところで話はうまくいかなかっただろう。そのあたりの話は結局のところ人とエルフの関係という点の問題につながっている。


「でも、今回助けたことで少しは仲良くできるかしら」

「彼らとなら、可能かもな。さすがにエルフ全体は無理だろう」

「……いっそエルフを受け入れる土壌でも作ろうかしら。アンデールの環境ならそういった場を作れるかもしれない」

「それはいいかもしれませんね。住むところがない人種の皆さんを招き住んでもらうというのもありかもしれません」

「簡単ではありませんよ……それにエルフが来るとなると誰が統括することになるんですか……アンデール様であれば場所を作ることは容易かもしれませんが」


 いっそエルフと仲良くなるために住む場所を失っている、過酷な場所で過ごしているエルフを招くのはどうだろうと考えるハルティーアにアリルフィーラ。しかしクラムベルトは招いた後の問題も考慮し、微妙な表情だ。公也としては受け入れ自体は別に構わないが、そういう国にするのはどうだろうという考えがある。とはいえ、もともと避難所、駆け込み寺みたいな雰囲気の国になっているのでそういうのも悪くはないかもしれないとは考えている。


「それはできるし、やるのも俺は構わないと思うが……問題はエルフ側が受け入れるかどうかだと思う」

「それはそうよね。人間との関係と今自分たちの環境を天秤にかけてこっちに来ることを受け入れるかどうか……」

「…………そこまでの環境にエルフを追い込んだのは私たち、になるのでしょうか」

「人間に追いやられて人間に助けられる? マッチポンプになるわね。向こうにとってはいい表情にはならない内容ね」


 エルフたちとて森の中という環境に、人里離れた場所に自分たちの村を作り住んでいるのは何も彼らが森の中で生きることを選びそれを好き個のでやっているからではない。いや、彼らもその環境が自分たちに適しているという面もなくはないが、人間がこれないような離れた場所に作っているのはやはり彼らが人間との関係であまりよくない形をたどってきたからこそだろう。獣人もそうだが基本的にあまり人間の村、里、街の近くに彼ら他人種の住んでいる場所というのはないことがほとんどだ。


「……それでも滅びを待つだけのエルフを救うのは悪くないというか、彼らをどうにかするのはありかもな」

「そうね」

「ですがそれ以前にそんな彼らがどこにいるのかわからない以上、結局のところ手は出せないと思うのですが」

「…………それもそうだな」

「慈善事業じゃないものね。偶然見つけた、とかならともかく、わざわざ探して連れてくるというのは少し話が違うかしら」

「エルフたちにとっては無理やり連れていかれていると感じるかもしれません」

「何のためにエルフを攫っていくのか。人間たちはエルフを何に利用するのか、そう考えられることもあるかもしれません。迂闊なことはできませんね。国の問題にもなり得るかもしれませんし」

「人助けも容易じゃないなあ……」

「当り前よ。簡単にできるならだれも苦労しないわ」

「でもその考え自体は良いことだと思います」


 いろいろ考え誰かのために、何かのために。それ自体は悪いものではないだろう。ただ、それを行った結果どうなるか、その先にどういう結末が出てくるか、そういった点を考慮して行動しなければならないところはある。そういう点では公也はその場その場で突発的な行動をとることが多いのでもう少し考えて行動してもらいたいところである。今回もある意味ではそういった感じのことだったのだから。


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