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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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「ところで」

「なんでしょう?」

「……彼女はなんでここに?」


 アルディーノが視線で指し示すのはぶすっとした表情をしながら奥の方で立っているプルート。死の精霊である彼女はどうやらこの場に配属された、というかこの場に留め置かれることになったようだ。


「ああ、彼女ですか。彼女は外に置いておくにはよくない存在であるのは理解していますよね?」

「うん……まあ、一応は?」

「死の精霊、その力は容易に多くの生者を死に導く、死をもたらす危険なものです。しかしそれはアンデッドには通用しづらい。私であれば他の方よりも彼女に殺される可能性は著しく低い、ということになります。だからこそ彼女を監督するのにふさわしい立場であるということになります。ゆえにここに彼女を置いておくことになっているわけです」

「…………なるほど?」


 一応死の精霊の力はアンデッドに通用しないというわけではない。死の仕組み、性質が通常の生物とは異なるゆえになかなか殺しにくいというのはあるが、それは絶対のものではない。ただ、やはり殺すのに必要な条件が厳しいというか、アンデッドの性質や仕組み、そのこの世に残っている条件、死の排除要因など様々な点が影響して死の力の通りやすさにつながる。そういう点ではカシスの場合は彼女の力でも容易ではない、という感じになっている。

 カシスはそもそもアンデッドでも霊体でもなく死者でもない。というよりカシスは厳密にはアンデッドとも言い難い存在だ。アンデッドにおいて彼女がなんであるかはあえて言えば不死、つまりは通常のアンデッドは一線を画する存在なのである。カシスを生かす要因は呪い、それも物質化し残り続けこの世界に繋ぎとめる楔となり得るくらいの強力な呪い。死の精霊がどうにかするべきはその呪いであり、カシスをどうにかするならばその呪いに干渉しなければならないが……力にもさまざまな性質がある。強い力は弱い力よりも強い……いや、当たり前であるのだが、力のステージとでもいうべきだろうか。レベル帯というべきだろうか。その力のレベルよりも上のレベル帯の力はその力では干渉できない、あるいは干渉できても影響力が普通に力を使う場合よりもはるかに小さなものとなる、そんな感じの特性がある。

 厳密にいえば特性というとまた少し違うのだが……極端な例を言えば、公也の力がわかりやすいだろう。公也の力はほかのあらゆる力に干渉できる。ヴィローサの力然り、プルートの力然り、魔法という力然り。公也の力はこの世界のあらゆるすべてよりも上にある。<暴食>はもともと異世界の神、邪神より賜った力でありその邪神の格がその力の強さに影響する。この世界……大規模な世界の枠組みにおいて邪神と呼ばれる存在は世界でも最上位級の力を持ち、そこから格の落ちた力を公也は受け取ったが、もともとが強力すぎる力、その力は普通の多くの世界、そこに存在する多くの存在よりも格が上の力となる。今世界のほぼすべての存在はその力に対抗できない、それくらいの強さである。まあそれに対抗できる力を持つ存在が生まれる可能性があるのがランダム要素の発生が起こり得る管理されない世界の強みだがそれはさておくとして。

 カシスをアンデッドで言えば不死、厳密には呪いに塗れほぼ呪いと一体である呪いの存在と変化させている強力な呪いはかなり特殊で上位の力である。単純な自然寄りの死を与える力では難解で複雑な呪いの力は紐解くことが難しく、プルートではカシスをあっさり殺すことが不可能ということになるわけである。ゆえにアンデッドであるかどうか、というのはそこまで重要とは言えないが、カシスであればプルートの管理、監視がやりやすいということになる。まあ仮にプルートがカシスを殺したとして、どこ逃げるのかという問題もあるだろう。妖精境を超えていくのは大変そうであるし外に出るには城の中を脱しなければいけない。そもそもこの墓場は城の内側という扱い、部屋の扱いになる。つまりはアンデルク城、ペティエットの管理下、監視下にあるということ。なおペティエットを殺すことはプルートでも難しい。城の生死は一部分を殺すことはできても単純な城魔ではない建物となるだけであり、城魔がまたその建物を自分に加えるため回復には時間がかかるがそれだけ、ということになる。それはそれで結構大きなことかもしれないが、城自体を殺すことは不可能。むしろペティエットの方が相対すれば殺せる分だけやりやすい相手、となるだろう。そのあたりもまた独特だ。


「何よ? 何か面白いわけ?」

「いや……なんでここにいるのかなと」

「それね、あなたからも言ってくれない? 私こんなところで一日中ずーっといるのはどうにも……」

「あら。あなたはそういうことを言うのですね、プルート?」

「っ!!!」


 カシスに声をかけられただけでプルートはびくりと体を震わせる。プルート自身の強さ、死の力をもってしても、カシスという存在はプルートにとっては恐ろしい相手らしい。ある意味では呪いというものはそれほどに厄介な力ともいえる。公也やメルシーネのような強者ですら、除去できるとしても影響は受ける。メルシーネともなると抵抗耐久はあっても除去はできず重ねていけば確実に弱体化できる。プルートはその前にカシスをどうにかできる……というほどでもなく、また死の力で呪いを殺せない。ある意味では呪いは普通の力とも異なる性質の力である。死による呪い、死者の呪い、アンデッドの呪い、そういう呪いもあって呪いもまた普通の死の性質とは違う死の性質を持ったものである様子だ。通用しないがゆえに、プルートは恐れている……というわけではないが、ともかくカシスはプルートにとってはやばい相手らしい。


「そんなにこの場所から離れたいですか? いえ、いたいとは思わないのかもしれませんが……出ていくというのであれば、私もあなたを簡単には許しませんよ? いえ、今も許してはいないのですけど」

「………………大人しくしてる。反省……していないくもないから」

「そうですか。そこは素直に反省しています、もう二度としません、許してくださいくらい行ってほしいところなのですけどね」


 まさか精霊という強者である彼女がこういった対応をしなければならないくらいにカシスはやばい存在なのか。というよりカシスがプルートに対してここまで辛辣は何なのか。まあ、いろいろと事情があるのである。出会いがどうのこうの以前の問題であり、プルートの所業であったり、カシスの立場であったり。ともかく公也が今のプルートの状況に大きくかかわる要件である。




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