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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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29



「君は……魔物だね?」

「……………………まちがってはいない」

「一応君に関してはエルフの村に行く時に見たけど……人間にしか見えないけど、やはり魔物なんだね?」

「………………まものといわれるとちょっとこまる。でも、まものにはちかい。ホムンクルス」

「ホムンクルス……一応話に聞いたことはあるけど……でも君みたいに意思を持つ存在ではないらしいけど?」

「…………ほんらいは。わたしはちょっととくしゅ」

「特殊かあ……調査……したいけど、ホムンクルスだとそこまで熱心に調査する必要性は薄いかもしれないな」


 アルディーノもある程度はホムンクルスのことを聞き及んでいる。魔物ではあるがどちらかというと人造の魔物であり、その生態に関する調査もアルディーノ自身が行ったわけではないがされている。しかしその調査情報に関してはいろいろ下手に触れると危ないところもあるし、再度作成することもできないものであるし、繁殖して増えるということもなく、いずれは滅びを約束された人造生命体。だからこそ研究したいと思う面もあれば、それでは研究しても先がない、面白みがないと思う面もある。そしてなによりも研究自体既に誰かが触れ、誰かが残しているだろうものだ。

 まあ、結局のところホムンクルスは作成してはいけないゆえに研究自体が碌にできるものではないので興味があっても触れられないものである。厄介な。そんなこともあってアルディーノもやりづらいところだ。


「でも、興味はあるんだよな……」

「わたしはすこしべつ」

「別?」

「キミヤがあいてをしたホムンクルスと、わたしたちだったホムンクルスはべつ。あたらしいホムンクルスをさくせいしたそしきのまえのホムンクルス」

「…………それは初耳だな」

「もともとわたしたちはキアラートにいた。フェイといっしょに」

「フェイ?」

「……………………ひみつ を まもる こと を やくそく して ほしい」

「……そうだね、それが必要なことなら。僕は研究者だけど、結局のところ僕が知りたいから、というだけに過ぎないからね。守ろう。何であっても」


 ウィタには秘密がある。それがフェイだ。フェイに関しては他社には教えづらい秘密である。なお、アルディーノはウィタの変化をちょっと疑問に思ったが怪しく思っていない。というよりウィタはもともと独特なところがあるためフェイが憑依してもその独特さは変わらないというか。


「………………これがフェイ」

「……アンデッドなのか。それは確かに、秘密にしておいた方がいいのかな?」

「ぼく は うぃた に ひょうい して こう やって はなしたり たたかったり いろいろ できる」

「………………アンデッドの憑依に関しての話は聞いたことがあるが、アンデッドは調査がしにくいからね。そういう意味ではウィタ君もそうだけど、フェイ君、君に話を聞けるのも結構重要なことかもしれない。アンデッドの調査にはとても役に立つかも」

「…………ひみつにしてくれる?」

「もちろん! その代わり君たちに関して詳しく教えてもらえれば僕はそれで十分だよ」


 ウィタとフェイの独特さ、ホムンクルスとアンデッド。そもそもウィタ自身の自我に関してもフェイとの遭遇がなければ得られなかった可能性すらあるくらいのものである。そのことについても話せばアルディーノとしてはかなり興味を惹くだろう。もっとも興味を持ってもホムンクルス関連のことであるがゆえにアルディーノでも特に何かできるというわけではない。ホムンクルスは作成禁止、研究も基本はしてはいけないもの。まあ、アルディーノにとっては調査できるだけでも十分価値である。興味を引く喪に関して知ることができる、それだけで研究者としては万々歳。もっともその研究成果を何かに使ったり発表したりはできないのは少々もったいないところでもあるが、このアンデルク城ではそういうものも珍しくないので仕方がないところである。




「この先は妖精境です。ここには入れるという時点で許可はもらっていると思いますが、念のため確認させてもらえますか?」

「……君もアンデッドか」

「カシスです。ここでこの地の特別な墓所の管理、あとは妖精境の方の状況の確認なども多少させていただいています」


 カシスというアンデッド。そもそもアンデッドが一般的に生活するというのは難しい。アンデッドは死者、この世界に存在する生者の摂理から外れたもの。本来なら、まともに生きておらず生きる者を殺す存在。死者であってもなかなか一般的な生活は難しく、腐臭やらなにやら、そもそも死んだ者を安らかに眠らせずそのまま生かしたまま、というのもおかしな状況になる。彼らは年も取らない。そういう点では死んだ者より生きる者が死ぬのが先になることもある。そういう奇妙さ、おかしな点もアンデッドという存在の性質、特色。まあ、ともかく何を言いたいかと言えば、フェイもそうだがアンデッドでまともに普通に生活できているのが異常、なのである。フェイの場合はウィタという器と一緒に生活した結果丸くなった、大人しくなった、生者の側にいる、ということで可能性はある。ある意味では共存しているが故の安全さだ。しかしカシスはアンデッドでも霊体よりの存在。普通ならまず大人しく墓守をしているというのもありえない。まあ、アンデッドの中にはそういったまともな意識を持つこともあるので完全に否定される、否定できる存在であるわけでもない。もっとも、カシスはそもそも単純な霊体のアンデッドでもないが。いや、そもそも厳密にいえばアンデッドというと少し語弊がある状況でもあるが。


「君はアンデッドだけど……いや、そもそもなんでアンデッドがいるんだろうね? 一応自然発生もあるけど、アンデッドは一般的にはネクロマンシーが作る存在だ…………君の場合はそれを考えても、少し違う気がする」

「そうですか?」

「アンデッドもいろいろとね、独特なんだよ。雰囲気とか。空気とか。その中で君は……近寄りがたい、ほかの普通のアンデッドよりも少し忌避感が強い。アンデッドだから、というわけではないけど……」

「申し訳ありませんが、私は公也様のためにここにいます。なので私は私のことに関しては詳しく話すことはできません。必要なら公也様にお聞き下さい」

「…………また彼がかかわっているんだね」

「ここにいる皆さんは大体公也様が関わっていますよ。そもそもアンデールができたのも公也様の影響が大きかったからです。公也様はそういうお方なんです」

「慕われているねえ……」

「それはもちろん。悠久の中苦しんでいたのを助けられたのですから」

「………………やっぱりただのアンデッドじゃないよね」

「それは秘密です」


 カシスもまたいろいろ独特である。しかしカシスが普通であるかどうかの判断に関しては完全にアルディーノの独特な感覚、経験によるもの。アルディーノはそれなりに魔物研究でアンデッドに関して触れた結果である。もっともこの場でカシスは教えない。カシスには公也に取って特になるかどうか、害になるかどうかの判断が重要であり、その判断のしようがないため現状では無言を貫くしかなかった状況である。


「それで。妖精境に行かれるのですか?」

「いや……妖精たちの話は聞きたくあるから少し話を通せないかな、とは思ったけど、妖精たちの中に身をさらすのは危険すぎるからね。今回は君と話ができた、ということで十分だと思っておくよ」

「口説き文句でしょうか? 残念ながら私は公也様に身を捧げることを決めているので……」

「いや、口説いてないから。僕は魔物研究者だからそっちの意味でね?」

「あら、そうなのですか。私としてはどちらでも構わないことなので何でもいいのですけど」


 クスクス、と笑いながらカシスは言う。まあカシスとしても本気で口説き文句で言ったとは思っていない。戯れに訪れた相手をからかってみた、程度の物であるのだろう。アルディーノとしては普通ではないアンデッド、独特な性質を持つアンデッドを見られたということで一応満足はしている。ただ、それに関する興味は余計にそそられるというか、もっと知りたいことが増えたので後で公也に詳しく話を聞く機会を設けるつもりのようだ。こればかりはカシスが公也の許可なしに話せないということでしかたがない。


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