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選択の先

人々に囲まれ、居場所を失った彼女は町を去ろうとする。


しかし、道の先にゼロは立ちはだかる。

彼は、いったい何を伝えているのか。


そして、彼女が選ぶ未来とはーー。





足を止めた彼女を、ゼロは真っ直ぐに見つめていた。


その視線には、敵意も焦りもない。


ただ静かに、揺るがない意志だけが宿っている。


言葉はなかった。

それでも、何を求められているのかは、不思議と理解できた。


拒まれることに慣れきったはずの感覚が、わずかに軋む。


近づけば距離をとられる。


それが当たり前だった。



それなのに――目の前の存在は、違っていた。



威圧ではない。


逃げ道を塞ぐのでもない。


ただ、進むべき方向を示している。



彼女は思わず視線を逸らした。


だが、逸らしたところで何も変わらないことも、理解していた。


胸の奥で、別の感情が微かに芽を出す。



それは、迷いでも、恐れでもない。

もっと別のなにか――。




やがてゼロが、ゆっくりと街の方へと歩き出した。


振り返ることはない。

それでも、その背中は語っていた。


ついてくることを疑っていないと。



彼女はしばらく、その場に縫い止められたまま動けなかった。


足が重い。

まるで過去そのものが、足首に絡みついているようだった。



拒絶された記憶が、何度も脳裏をかすめる。



それでも。


ほんのわずかに、足先が前へと動いた。


一歩。

それだけの距離が、ひどく遠い。



それでも彼女は、踏み出した。


離れたはずの場所へ、再び足を向ける。



戻ってくる影と、前を歩く巨大な存在。


その異様な光景に、ざわめきは瞬く間に広がった。


戸惑いと警戒が、空気の中で形を持つ。


誰もが言葉を飲み込み、ただ目の前の現実を見つめていた。


やがてゼロは足を止める。

彼女のすぐ傍で、動かなくなる。


その場に立つだけで、空気が張り詰める。


口を開く者はいない。


ただ、沈黙の中で、確かな認識だけが広がっていく。



ゼロは、彼女を拒んでいない。



排除するでも、遠ざけるでもなく。

むしろ、その内側にある何かを、受け入れている。


言葉にはならない確信が、人々の間に浸透していく。


後ずさる者、目を逸らす者。


息を呑む音だけが、わずかに重なった。



ただひとり、老人だけは警戒を解かない。


恐れはある。

だが、それ以上に、目を逸らせない理由があった。



かつて、同じように立ち尽くしたことがある――。


忘れる事はない。


腕の中で、ゆっくりと変わっていく体温。

何度も呼んだ名前は、次第に意味を失い、その姿すら形を変えていく。


周囲は、恐怖に押されるように排除を叫んだ。


あのとき、自分が何を選んだのか。

その感触だけは、今も手の奥に残っている。


握ったはずの手の重み。

離したのか、離れてしまったのか――その境界すら、もう曖昧だった。



ここで引けば終わる。


災いの種を、見逃すわけにはいかない。


それがどんなに小さなものでも。


遠い記憶が、彼の意思を強くしていた。




そのときだった。


低く、地の底から響くような振動が走る。



足元がわずかに揺れ、体に響くような唸り声が届いた。



恐怖が、一瞬で塗り替える。



誰かが弾かれたように走り出した。


それを合図にしたかのように、人々が一斉に動く。


押し合うように、音とは反対の方向へ逃げていく。



悲鳴も足音も、すぐに遠ざかっていった。


残されたのは、わずかな者たちだけ。



その中で、老人が一歩前へ出る。


逃げなかった者たちへ向けて、強く訴えかける。



原因は、あそこにあると。



揺るがない断定とともに、恐怖の矛先が再びひとつに集まる。



向けられた先は――。



ゼロの隣に立つ、小さな存在だった。





ここまで読んでいただきありがとうございます。


この作品は、実際に見た夢を元にしてます。

そのため、現実的な理屈よりも、雰囲気や感覚を大切に描いていきます。


よければ、また次話も読んでいただけると飛び跳ねて喜びます。

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