引力
壁の町を守る“神”――ゼロ。
だがその正体は、世界を蝕む“0細胞”の実験体だった。
やがて彼は、侵食に耐性を持つ少女と出会う。
ある夜、ゼロの視線の先に、ひとりの少女が現れた。
胸の奥――いや、もっと深いところで、何かが引き寄せられる。
本能とも、記憶とも違う。
だが確かに、内部のどこかが反応している。
一歩、踏み出しかけて、身体が止まる。
――近づくべきではない。
言葉ではなく、思考でもない。
もっと原始的な何かが、警告していた。
未知の存在。
触れてはいけないもの。
それでも。
視線だけは、外せない。
その存在を、確かめるように、ただ見つめていた――
。
またある夜、ゼロは壁の外の不穏な音に気づいた。
いつもの様に、広場へ向かう。
そして、身を低くして襲撃に備える。
ただ、ひとつ、いつもと違うことがあった。
少し離れたところに、少女の存在を感じる。
ゼロは迷わない。
もし、少女の身に危険が近づいても、絶対に触れさせはしない。
その思考は、最初から決まっていたかのようだった。
それから、侵食体の群れはすぐに現れた。
その数は今までにないほど多く、ゼロの体力は削られていく。
そんな崩壊の連なりの中で、その瞬間は唐突に訪れる。
数体の侵食体が、ぴたりと止まった。
――違う。
止まったのではない。
止められている。
視線の先。
少女の周囲だけ、わずかに空気が歪んでいた。
体の内側で、何かが強く引き寄せられる。
しかし、理解よりも先に、身体が動く。
その瞬間を、ゼロは見逃さなかった。
踏み込む。
地面が沈む感触。
次の瞬間、止まっていた時間が一斉に動き出した。
振り抜いた腕に、確かな手応えが返る。
鈍い衝撃とともに、障害が消える。
だが、それすらも重要ではなかった。
視線が、引き戻される。
少女は息を乱し、それでも立っている。
その姿から――なぜか、目を離せなかった。
視線が合う。
言葉はない。
それでも、確かに通った何かがあった。
内側で、わずかに変化が起きる。
定義できない感覚。
だが、はっきりと残る。
――この存在は、特異である。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この作品は、実際に見た夢を元にしてます。
そのため、現実的な理屈よりも、雰囲気や感覚を大切に描いています。
よければ、また次話も読んでいただけると飛び跳ねて喜びます。




