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フロンティア・アイズ・マナ《VRMMORPG世界の侵略》  作者: フィガレット
第10章 アイズロード外伝『ニャーレ』

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ヴィライン会議

 全てのヴィライン達が集まる会議。

 その参加人数は僅かにフォリスも含めてたったの八人だった。

 一方、ファスの村は既に50人を超えていた。

 この人数差は、圧倒的な戦力差を生み出す。


「さて、ヴィライン会議を始める」


 開始を宣言したラーキ。しかし、話の進行はコウメイが務める。


「まずは今後のヴィラインの方針なんだが、テイマー達の力を使って村を発展して行こうと思う」


 現状、技術力に余りにも差が有り過ぎた。このままでは装備品の差で、特殊スキルを上手く使っても同人数、一対一の戦いですら惨敗する。


「そこで目をつけたのが、リスポーン地点の丘の反対側の森を抜けた場所で現れるゴブリンだ。奴らは人の姿をしているので労働力に丁度、良さそうだ。それと人の1.5倍程の身長を持つ怪力のオーガ。奴を仲間に入れる事が出来れば労働力の差は埋まる」


 ラーキ達は基本的には働かない。働きたくない。だから魔物に働かせる為にテイマーを確保した。ただ、問題なのは・・・


「ただ、テイムをする為には様々な条件がある。通常はテイマー単身で魔物を圧倒して服従させる必要があるのだが・・・」


 ゴブリンは兎も角、オーガはソロどころかパーティで挑んでも軽く粉砕される。

 そんな相手を服従させるなんて不可能に思えた。


「まずゴブリンについてなんだが、テイマーがテイム出来る魔物は、今のレベルでは2、3匹程度だ。しかし、それでは話にならない。レベルを上げるかと考えたが良い案が見つかった。アンナが悪妖精に騙されて連れて行かれた場所にゴブリンの集落があったんだ」


 アンナはヴィラインで悪妖精使いのジョブを割り振られた女の子だ。その子は悪妖精にずっと悪戯で振り回されていた。そんな中で森の奥に連れて行かれてゴブリンの集落に遭遇した事があった。そこではゴブリンの上位種がゴブリンを使役している様子があった。


「つまり、上位種をテイムしてれごと従えられれば、人数差を埋められる」


 これがコウメイが考えた案だったのだが・・・


「いっそ、集落ごと奪っちゃったらいいんじゃない?」


とフォリスが提案した。


「・・・ありだな」


 コウメイは気付いた様だ。既にファスに把握されている今のヴィラインの根城は初期リスポーン地点から見える場所の為、勧誘には都合が良かったが、何をするにしてもバレバレである。新しい拠点は必要だと考えていた。そこに来て、丁度ファスから距離を置く場所で発見された森に囲まれたゴブリンの集落はとても都合が良かった。水や資源の意味でも既にゴブリンが都合が良いからそこに住んでいるのだ。それを奪い取る。それこそヴィラインの真髄だったのかも知れない。


「つまり、どう言う事だ?」


 ラーキは話に既に付いていけなくなっていたのでコウメイは整理する。


「森の中にゴブリンの集落があるから、それを丸ごと奪い取って新しい拠点を造るって事だ」

「なるほどな、だがゴブリンの集落なんて使い物になるのか?」

「そこは奪ってから改造させればいいさ」

「・・・いいじゃねぇか」


 ラーキは納得いった様で満足気な表情を浮かべていた。


「しかし、今の我々では上位ゴブリンと戦うのも正直言ってキツい。多分、ソロで倒せるのはラーキぐらいだ」


 ラーキは単独犯ビーストのジョブの恩恵で戦闘力が高いが、ジョブの制限のせいで装備が自力確保しか出来ず、イマイチだ。それでも上位ゴブリンには勝てるぐらいにはプレイスキルは高かった。MESによるモーション作成も武闘会以来、試行錯誤を繰り返しモリスに匹敵する程になっていた。やれば出来る男ではある様だ。基本的にはやらないが。


「色々調べて見たんだが予測するに、あの集落は魔物の侵攻の前兆だと思うんだ。放置すれば恐らくはヴィラインに攻め込んでくると思われる」


 そこで新しい事実が発覚した。魔族の特権として、この侵攻軍を討伐する事で事前にテイマーが宣言していれば、集落の魔物をテイム出来る。


 侵攻戦は宣言されると掃討戦に切替わる。これはプレイヤー同士の場合も適応されるが、相手側に倒されると、その侵攻戦には参加出来なくなる。相手プレイヤーへの攻撃が通らなくなる。そうでなければ永遠にリスポーンする敵と戦い続ける事になってしまうからだ。


「早々に侵攻戦をゴブリンに申し込んで各個撃破を狙いたいのだが・・・戦力が足りない」


 そう、今のままではヴィラインはゴブリンの集落に勝つ事は難しい。未だに鉄の装備すらないのだ。武器は木刀である。それでも上位ゴブリン(ホブゴブリン)を倒せるラーキのプレイスキルとビーストの恩恵は大きいとも言える。装備さえ整えば、上位種を含んだ集団ですら圧倒出来る可能性すら秘めていた。だが、ラーキは自ら創った装備しか使えない。そう考えられていた。そう設定されていた。しかし・・・


「買えば良いじゃない♪」


とレイラが頭からっぽで発言した。


「いや、そもそも俺はトレードが出来ない」


 そう、ラーキはトレードウインドウすら表示されないのだ。


「そっかぁ。無理なのかぁ」


とレイラがガッカリしていた。そこでフォリスは少し助言する事にした。


「私から奪えばいいんじゃないかな?私のアライメントは下がりまくってるからキルされたら、ほぼ確実に装備をドロップするよ?」


 そう、その為にアライメントを下げて来たのだ。

 しかもフォリスはまだヴィラインに属していない。だから、ラーキがフォリスをキルする事も可能なのだ。


「なるほど!いや、しかし買おうにも我々は皆、魔族だからギルドで買おうにも・・・ん?そういえば一人、アライメントが普通に高い人族がいたな」


 ヴィラインには、一人だけ何故か魔族を選ばずに通常のプレイを続けていながらもヴィラインに属していた者がいた。


「不思議だよねぇ。狼の中に羊が一匹混ざっていたら、それはもう普通の羊ではないだろう?それこそバフォメットなのではないかと恐怖する者すらいるだろうさ。私もとても興味があるんだけどね♪」


 フォリスも気になっていた。その男の名は【アクツ】。

 無口な彼はようやっと口を開いた。


「そんな大した話じゃない。私は大衆が苦手なだけだ。あと老人も苦手だ。だからファスは居心地が悪い。ただそれだけだ」


 理由を聞いて見れば、シンプルだった。ただ、それでもここに属する事に抵抗がない彼は一般的な普通からは少し逸脱していたのかも知れない。現実でもその逸脱から来る何かの息苦しさを感じていた。ファスにはそれがある。だからここに居る。


「みんなからマナを集めてギルドで装備を購入するパイプ役になって欲しいんだが頼めるか?」とコウメイが聞くと、「対価は貰う。しかしリスクはない。ただ預かって買って渡すだけなんだからごくごく僅かの手数料でかまわない」とアクツは答えた。


 それでも費用は取る。それは彼なりの辻褄合わせなのだろう。むしろそこに誠実さすらフォリスは感じた。


「それで構わない。これでラーキの装備が整えば、ゴブリンの集落の制圧も可能かも知れないぞ」


 コウメイは思っていた以上の会議の成果に内心、興奮していた。


「今後も私はヴィラインには属さず、ラーキに従う方針で行こうと思うけどいいかな?その方がラーキにとって都合が良さそうだし♪」


 フォリスは自分の位置付けを周囲にハッキリさせて置いた。武器を奪わせる為にはラーキがフォリスをキルする必要がある。同じ所属のローダーをキルする事は出来ない仕様がこの時には出来ていた。ヴィラインに属すると都合が悪い。ただ、フォリスにとっては実はそれだけではなかった。実は彼自身が動き易くする目的の方が強かったが、この時点では誰にもそれを悟られる事なく隠し通した様だ。


「随分と殊勝な心がけだな。何を企んでいるんだ?まぁ、恩恵はあるし今は乗ってやるよ」

 ラーキは直感的に何かを感じ取っていた様だが・・・。

「本当に君を応援しているだけなんだけどなぁ。まぁ、それは行動で示していくとするよ♪」


 害するつもりはなくとも都合よく操ると言うのは、悪性を持つのだろうか?

 それが互いにとっても良い結果を生み出すとするのならば・・・。

 所詮は好みと視点の違いでしかないのかも知れない。

 そして、フォリスは自分の道を行く。辻褄合わせはするが、大義は見失わない。


 否、大義ではないか。彼は人の道を外れているのかも知れないのだから・・・。

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