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価値を書き換える俺は、正義を名乗れない  作者: 逆回転カエル


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1/6

価値を書き換える俺は、正義を名乗れない①

この国では、人間の価値は数字で決まる。


 それが、絶対だ。


「神代 恒一。総合価値“4”」


 査定官の声は、感情がなかった。


「平均を大きく下回る。資源として非効率だ」


 視線が集まる。


 興味ではない。


 確認だ。


 “価値の低い人間”を。


「よって、君は解雇だ」


「……そうですか」


 反論はしない。


 意味がないからだ。


 外に出る。


 曇り空。


 重たい空気。


「……終わりか」


 呟いた瞬間だった。


 視界に、数字が浮かぶ。


「……は?」


 人の頭上に、数値。


 淡く光る。


 通り過ぎる男。


 ――76


 女。


 ――42


 子供。


 ――15


「……なんだ、これ」


 自分を見る。


 ――4


 さっきの数値と同じだ。


「……触れる?」


 指を伸ばす。


 触れた。


 確かな感触。


「……動くのか」


 なぞると、数字が揺れる。


 嫌な予感。


 でも。


 ほんの少しだけ。


 4を削って。


 5にする。


 その瞬間。


 頭が、ぐらりと揺れた。


「……っ」


 何かがズレた感覚。


 だが、それだけだった。


「……気のせいか?」


 違和感は残る。


 でも、確証はない。


 そのとき。


 かすかな音がした。


 路地裏。


 雨が降り始めている。


「……人?」


 近づく。


「……おい」


 壁にもたれた女。


 血が滲んでいる。


 視界に数字。


 ――8


 低い。


 助からない側の人間だ。


「……医者は」


 思いかけて、やめる。


 意味がない。


「……っ」


 女が目を開ける。


「来ないで……」


「なんで」


「巻き込まれる……」


 意味がわからない。


 だが。


「……助ける」


 口が勝手に動いた。


 理由はなかった。


 ただ。


 目の前で死ぬのを、見たくなかった。


「……無理だよ」


「いいから」


 視線を落とす。


 ――8


 さっきの感触を思い出す。


「……試すだけだ」


 自分に言い聞かせる。


 8に触れる。


 温度がある。


 少し迷って。


 数字を書き換えた。


 ――20


 瞬間。


 また、あの違和感。


 だが。


「……っ」


 女の呼吸が、わずかに安定する。


「……え?」


 本人も驚いている。


 血の流れが、止まり始める。


「……なんで」


 理由は、わかっている。


「……たぶん、俺だ」


 女がこちらを見る。


 困惑と警戒。


「何したの」


「わからない」


 正直に答える。


 わからない。


 本当に。


 ただ一つ。


 “変えられる”ということだけ。


「……名前」


 女が言う。


「白峰……澪」


「神代だ」


 短いやり取り。


 それだけなのに。


 妙に現実感がなかった。


 そのとき。


 遠くで、何かが崩れる音がした。


「……今の」


「……聞こえた?」


 二人とも、同時に顔を上げる。


 雨音に混ざって。


 確かに、何かがおかしかった。


 理由はわからない。


 でも。


 嫌な予感だけは、はっきりしていた。


「……帰れるか」


「……たぶん」


 白峰が立ち上がる。


 まだ不安定だが、さっきよりは明らかにましだ。


「……助かった」


 小さな声。


 それを聞いて。


 なぜか、胸の奥がざらついた。


 助けたはずなのに。


 何かを間違えた気がしていた。

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