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53話 初めての後輩

 その日はエメラルドが泊まってくれた。


 一緒に夕食をとり、順番に風呂に入る。

 風呂上がりのアイスの美味しさにカレンが感動してるのが面白かった。

 あれは本当にうまい。


 用心のためとエメラルドは俺の部屋の隣で寝てくれた。

 カレンはビスケッタさんが即興で準備してくれた部屋。

 即興なのに準備は完璧。さすがだ。


 夜は何事もなく明け、朝食も一緒にとった。


「朝も夜も訓練がないので、ちょっと不思議な感覚です」

「朝も夜も訓練してたんだ…」

「朝も夜も訓練するとは感心だな!」


 カレンの呟きにエメラルドが目を輝かせていた。

 同情する俺をよそに、二人でトレーニング話に花を咲かせている。

「今夜は三人でやろう!」なんて予定も組み始めてるじゃないか。


 三人目って、誰なんだろうねえ…。


「いってきます」

「いってきます」

「いってらっしゃいませ」

「二人共、気をつけてな!」


 エメラルドは今日は非番らしい。

 ビスケッタさんと部屋で待ってるとのことだ。


 そう、ビスケッタさんも部屋で待っている。

 カレンがいるから俺の移動に不自由がなくなり、付きそう必要がなくなったのだ。


 護衛のために付きそうかという考えもあったのだが


「私では、カレンからソラ様を守ることが、できません…!」


 あんな悔しそうなビスケッタさんは初めて見た。

 もしかしたら今日もエメラルドとトレーニングでもするつもりかもしれない。


 そういうわけで、カレンと二人で登校。

 昨日の帰りと同様に沈黙の時間が続く。


 昨日は色々ありすぎたせいでそんなこと気にする暇もなかったが、この沈黙はなかなかに気まずい。

 共通の話題といえば、俺の暗殺ぐらいか?

 そんなこと口にしたくもない。

 ペラス家より先のことをカレンが何も知らないことは昨夜確認済みだし、聞いても無駄だ。


 気まずい。

 やはり無理にでもビスケッタさんに付いてきてもらうべきだったか。


「あら、ソラではありませんの。ごきげんよう」


 なんとここで救いの女神!

 女神様って金髪縦ロールだったんだ!


「おはよう!ミネルバ!」

「お、おはようございます。ずいぶん元気ですのね。あら?隣りにいるのはカレンではありませんか。いつの間にそんな仲良くなりましたの?」


 当然だがミネルバは俺の隣のカレンに気がつく。

 だが昨日のノヴァ達とはずいぶん反応が違うな。


「ミネルバは、カレンの強さに気づいてない?」


 小声で聞いてみると、カレンも律儀に小声で返してくれた。


「基本的に力は隠してます。今の私はそれなりに優秀な貴族の子女といったところに見えるはずです」


 なるほど。

 俺には全然違いがわからないが大したものだ。


「?ずいぶん仲がよろしいんですのね?」


 小声で言葉をかわす俺とカレン

 それを怪訝そうに見つめるミネルバ。

 だがミネルバのおかげで気まずい空気もなくなり、三人での登校が始まった。


 ミネルバ様様じゃないか。



 ---



 学院に入れば学年も違うためカレンとは別々になる。

 授業も別だし昼食も別。

 だが帰りは一緒で、登校時と同じくミネルバと三人で家に帰ることになった。


「ペラス家のお話は聞きましたわ。本当に、言葉もございません…」


 ペラス家の人々はカレン不在時に、()()()()()により全員死んだ。

 ()()()()アテネ大公家の人間が近くにいたため、事件はアテネ大公家預かりになったらしい。

 親衛隊が出張る前に調査と後始末を完了させるという、実に鮮やかな手並みだったとか。


 明らかに怪しいが、それは俺達がカレンのことを知っているから。

 親衛隊の任務は皇帝の守護と帝城内の治安維持。

 貴族の自滅に係る義務はない。

 まして大公家が関わり、彼らが主導すると言っているのだ。

 深入りするはずもない。


 だから裏を知らなければ、ミネルバのような反応になるのは当然だ。

 魔法の暴発だってそこまで珍しいものではないらしい。

 高みを目指し自滅する貴族は、大勢いるのだから。


 ミネルバはペラス家をそんな騎士の家系だと思っているのだろう。

 そしてカレンのことを家族を失った可愛そうな少女だと思っている。

 だからカレンが俺の部屋に居候するということも違和感なく受け入れられていた。


「ソラ、路頭に迷った後輩に直ちに救いの手を伸ばすなんて立派ですわ!」


 そんなふうに手放しに褒めてくれ、逆に申し訳なくなってしまう。


「今日はエメラルド様がソラのおうちにいるとお聞きしましたわ。お会いできるの楽しみです!」


 そしてようこそ四人目の君。

 三人目が誰かというのはすでに諦めている。


「おかえりなさいませ。ミネルバ様もようこそいらっしゃいました」

「おかえり!ミネルバもよく来たな!今夜は四人で頑張ろうじゃないか!」


 ビスケッタさんとエメラルドのお出迎え。

 やはり三人目はすでに当確だったらしい。


 帰宅してすぐには特訓は始めず、お茶とクッキーで小休止。

 ユキの手作りクッキーはいつでも美味しいな。


 特訓は、予想と違ってずいぶん楽だった。

 カレンとエメラルドがマンツーマンでとんでもなくハイレベルなことをしており、俺とミネルバはそれを見ながらいつものメニューをこなす感じ。

 いつものメニューでも帝城に来た直後なら半死半生になっていたが、一年経った今では慣れたものだ。

 慣れとは実に恐ろしい。


 しかしエメラルドはやっぱりすごいな。

 カレンは本気を出してはいないのかもしれないが、ノヴァに匹敵するという実力者に一歩も引かない。

 地水火風の四大属性はもちろん雷や氷に植物まで、多種多様な魔法が繰り出される。


 カレンが木の根っこでエメラルドを捕らえる。

 それを一瞬で燃やし尽くして束縛を解いたエメラルド。

 逆襲とばかりに無数の氷の矢を放つが、これはカレンが一瞬で蒸発させる。


 だがそれこそがエメラルドの罠。

 蒸発によって生じた大量の水滴で光を乱反射させ、一瞬だけカレンの視界を潰す。


 エメラルドにはその一瞬で十分。

 瞬時のうちにカレンの懐に潜り込み、体に直接稲妻を打ち込んだ。


 ここで模擬戦終了。

 俺がこの間に入ったら一瞬で消し炭になりそう。


「史上最年少の親衛隊隊員、エメラルド・エメラルダ。噂には聞いていましたが、噂以上ですね」


 あれだけの稲妻を受けてもカレンはケロッとしている。

 そんなカレンに、エメラルドが苦笑しながら答える。


「何言ってるんだい。君が全力を出せば私なんてあっという間に制圧できるだろう?わざわざ魔力を落として付き合ってくれて感謝するよ」

「魔力量はあなたと同等にしてますが、技量は変更ありません。つまり純粋な技量ならあなたは私より、確実に優れています」

「それは光栄だね。じゃあ、そのままの条件でもう一戦するかい?」

「はい。こちらこそ光栄です。ぜひお願いいたします」


 再び激突が始まる。


「私たちも、負けてはいられませんわね!」


 ミネルバも何かスイッチが入ったらしい。

 あちらよりも数段レベルは落ちるものの、俺達も特訓を続けたのだった。



 ---



「今日は私も泊まっていってもよろしいですか?」

「もちろんだ!」


 なぜか俺より先にエメラルドが答えていた。

 だが答えは一緒だからもちろん問題なし。


 ミネルバはカレンの裏事情は知らないが、彼女の実力はうっすら感づいているだろう。

 そうは言っても年下の後輩。

 一緒にいられて嬉しそうだ。

 もっと仲良くなりたいのかもしれない。


 そしてエメラルドは明日も非番。

 学院も明日は休み。


 明日は地上に行こうと思っていたから、せっかくだしミネルバも一緒に行こう。

 もちろん、カレンも連れて。



土日が時間とれなさそうなので本日更新いたします。


下民貴族とは関係ありませんが、短編を書いてみました。

これのおかげでこちらも筆が進み、無事今日更新することができました。

お読みいただけますと幸いです。

エルフ王の恋

https://ncode.syosetu.com/n4446hg/

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― 新着の感想 ―
[一言]  ソラ殿下は有能人材ホイホイですな。  何か誘引物質でも発しているのでしょうか。
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