36話 初収穫
平日は学院に通い、土日はパラディスの運営に勤しむ。
これが夏季休暇後の俺の日常だ。
そして今日
「旦那!見てください!大豊作ですよ!」
街ができて最初に植えた農作物の数々。
その初収穫を迎えた。
天候が良かったのもある
土地が良かったのもあるかもしれない
だが何より、みんなの努力が実を結んだのだ。
素晴らしい質と量。
これなら売りに出すことだってできるだろう。
思わず笑みがこぼれ出る。
だが当事者であるみんなの喜びようはそれこそはち切れんばかり。
街をあげてのお祭り騒ぎだ。
「本当に、すごいです…!」
いつも控えめなセリス
だが彼女でも今日は喜びを抑えきれていない。
「量も申し分ないですが、特に質に関しては文句のつけようがありません…!すぐにプラン商会と話をして、他の街々に売りに出すよう動きます…」
プラン商会
パラディスにわざわざ来てくれていた行商人達だ。
結果的に彼らの期待通りになったわけで、投資を回収できると喜ぶだろう。
今後も力になってもらいたい。
しかしどうしてこんなにうまくできたんだろう?
彼らは元々農業をやっていたとはいえ、どうして以前よりもいいものが?
その疑問に対して、みんなは笑顔で答えてくれた。
「だって頑張った分だけ自分たちのものになるんですよ?前とは気合の入りようが違いますよ!」
「そうそう!しかも水と塩だけのスープで一日中働かされたりせず、毎日ちゃんと飯が食える!」
「だから毎日全力出せますからね。それに正直黙ってた知識とかも惜しみなく出しましたよ。みんなで全身全霊で打ち込んだ結果です!」
以前は無理やり働かせられ、しかもどんだけ頑張っても何も見返りはなかった。
でも今は違う。
今は自分の頑張りが結果につながれば、全て自分に返ってくる。
気合が入らないはずがある。
これだ。
下民が自分のために、みんなのために頑張って、笑顔になる。
これが、俺が見たかった光景なんだ。
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「ソラ様、おめでとうございます」
「殿下、おめでとうございます!」
「新しい街つくるならいつでもおっしゃってくださいね!」
みんなも我がことのように喜んでくれた。
本当に嬉しくて涙が出そうだった。
その日はささやかながらお祝いの場を設け、みんなで乾杯した。
「ソラ様、お客様がおいでですよ」
ビスケッタさんが連れてきてくれたのはミネルバとエメラルド。
もちろん、こちらから声をかけたのだ。
「ソラ、やったな!」
「ソラ、心からお祝い申し上げますわ!」
「ああ!ありがとう、二人共!」
友人達からの祝福。
俺は本当にいい友人をもった。
よく俺と友達になってくれた。
本当に、本当にありがとう。
嬉しくてまた泣きそうになった。
「こんなめでたい日に涙なんか似合わないぞ?もっと笑え!街のみんなも笑っていたんだろう?」
そんな俺の背中をエメラルドが優しく叩いてくれる。
エメラルドの言うとおりだ。
こんなめでたい日に涙は似合わない。
精一杯笑おうじゃないか!
喜びで笑うこと
みんなで笑い合うこと
それがこんなに素晴らしいことなんて、今まで俺は知らなかったのかもしれない。
それぐらい、今日は嬉しい日だった。
なお
「こんないい日は、飲むしかないな!」
そんなふうに俺に酒を飲ませようとするエメラルド
やんわりと拒否するのにはなかなか苦労した。
だが途中で対象がミネルバに変わったおかげで、なんとか難を逃れることができた。
「エメラルド様って本当に優秀で可愛らしくて素敵なお方だと、私、以前から思ってましたの…」
「な!?ミネルバ、お前、何をする!?」
「やれーやれー!いっちゃえミネルバちゃん!」
楽しそうだ。
エメラルドがじゃれ合うなんて珍しい。
「みみみミネルバ!?ソラが見ている!いや、そうじゃなく、ユキはどうだ?着痩せするタイプだから、実はかなりのものだぞ?」
「エメラルドちゃん!友達を売るの!?」
「最初にこの野獣を友達にけしかけたのは誰だ!?」
「エメラルドちゃんが飲ませたのにー!」
「私は最初の一杯だけだ!」
「ユキ様、お可愛らしい…」
「きゃー!?」
楽しい声が聞こえてきて、俺も嬉しくなってしまう。
ああ、今日は本当に、いい日だなあ。
セリスは顔を真赤にしながらこの光景を見ています。
そんな彼女にミネルバが気づくのはもう間もなく。




