1-7 王都襲撃
外に出ると警備兵と思わしき人物は0人。
「酷い・・・!」
どうやら二人がいた場所は王都の端の留置所だったようだ。
見上げると城が火花を上げながら崩壊して行く。
「タクト!いきましょう!」
ライトは走り出す。
先ほどまでの青い顔が嘘のようだ。
割り切ったのか、人々の救出の感情が先行しているのか。
「お前はそういう奴だったよなっ!」
困っている人間を放っておけない。
それがたとえ一国の国王であっても彼女はそうなのだろう。
フードの中のリリスは先ほどからショックのあまり失神していたので
胸ポケットに移動させた。
駆ける、駆ける、街を駆ける。
国民は混乱し、狂騒の中二人は駆ける。
検問も何も機能していない。
轟音を上げ砕け散る王城。
空に浮かぶ火急が流れ星のように煌いている。
「間に合って・・・!」
涙目のライトと駆ける。
どれだけ走っただろうか、ようやく王城の堀が見えてくる。
展開された王国軍が王を中心に先ほど見せられた炎と氷の大悪魔二人と
まさに現在進行形で戦いを繰り広げていた。
いや、目に映るそれは戦いなどと呼べるレベルではない。
一方的な蹂躙だ。
閃光と爆音と血飛沫と、混沌とした状況。
「ハッ、この音は・・・」
「やっと起きたか」
リリスが胸ポケットを乗り出す。
「アイツ、アポロニアならアタシを・・・!」
なにやら合図を送っているのだろうか、リリスが魔方陣をいくつも展開しては消しを
繰り返している。
アポロニアと呼ばれた悪魔が戦いの最中一瞬此方を見た気がした。
「?」
悪魔も困惑した表情。
「やっぱわかってないんじゃないか?」
「んなっ!?」
ライトが駆ける。
「シエラ!」
「ライト!どうしてここに」
後方支援を行っていたシエラの元に。
彼は前線部隊の救護や回復にあたっていた。
「もう訳が分からないの!どうして私達が捕まって、シエラがここで働いていて!」
「ごめん、落ち着いたらちゃんと説明するから」
一際大きな爆炎と悲鳴。
そして訪れる沈黙。
「シエラ様」
鎧を着込んだ老いた騎士が話しかける。
「王が身罷られました」
「・・・そうか」
シエラは苦い顔をする。
攻撃がやみ、大悪魔は引いてゆく。
「シエラ、いるか」
「兄様」
特徴的な鎧の、三十代程だろうか、部下を引き連れた男が現れる。
「その者達は捕らえたはずでは」
「違うんだ!兄さん!彼らが僕の冒険者仲間で」
「だからといって魔族と内通していたものを野放しになどできるか!」
シエラと言い争いが始まる。
「父が身罷った今、この国を守っていくのは、もう俺達二人なんだぞ!」
その言葉でタクトは察する。
ライトは状況について行けていない顔をしている。
「ライト、俺達はこの場を離れた方が・・・」
「へ?」
拠点へとなにやら国の重鎮と思わしき人物が集まってくる。
「何をぼさっとしている!その者らを拘束せんか!」
「チっ・・・遅かったか」
小太りの男が怒声を放つ。
「やめろ!彼らは僕の友人だ!」
「こればかりはそうも言ってられませぬ!わがままも、いい加減にして
くだされ!」
再び取り押さえられるタクトとライト。
「まったく、国の有事と言うのに、何でこうも・・・」
「そうは言っても始まらんぞ、大臣」
「しかしですな」
後方支援部隊はいつの間にか軍議の中心となる。
「勇者などこの国をくまなく探して見つけられるものか!」
「どうです?ギルドから有力な冒険者を勇者として」
「冗談を言っている場合か!誰が好き好んで死にになど」
言い争う声、それを抑えようとするシエラの兄の声。
シエラの説得など誰も耳を貸さない。
「そうか、適任がおりましたな」
視線が集まる。
ホラヤッパリ。タクトの嫌な予感は的中した。
「聞けば~?数日前、ギルドでこの者どもは、目玉の化け物を
倒したなどと嘯いていたとか」
「ほうほう、それが真なら本物の勇者ではないか!」
「差し出してしまえ差し出してしまえ。そんな娘。魔族への対策の為に
時間をたっぷりと稼いで貰おうぞ」
ライトが頭を掴まれる。
「ふむ、勇者にしてはちと若すぎるかな?」
「ガハハハ、それくらいが逆に真と見えるものよ」
「ですが――」
タクトの堪忍袋の緒が切れる。
「それが人間の・・・」
「いいですよ、私が勇者です。それで皆さんが助かるなら」
ライトはあっさりと言ってのける。
「勇者ってどんなものか・・・よくわかりません。でも、それで皆さんが
助かるんですよね?」
「ワハハハハ!これはなんと忠誠心か!先代の王に感謝ですな」
「ヘンリー卿、不謹慎ですぞ」
ライトの瞳は真っ直ぐ彼らを見つめる。
「その男はどうする」
「勇者の一行であろう。お供させて差し上げろ」
拘束が解かれる、退席させられたのだろうか。シエラの姿は無い。
「ライト、お前」
彼女は何も答えない。
「勇者様をご案内しろ。一級の宿を用意してやれよ。ワハハハハ!」
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兵士達に連れられ、王城近くの宿へと二人は案内された。
道中兵士達は「お前達のせいで王は身罷られたのだ」と呪言を吐いた。
それでもライトは「ごめんなさい」としか言わない。
客室につき、だだっ広い部屋のソファにタクトは腰をかける。
「おい、さっきからなんで黙ってるんだ」
「タクト・・・どうしましょう。全然勝てる気がしません」
「あたりまえだろ」
この期に及んで勝つ気でいたのかとタクトは呆れた。
タクトはベッドに寝転がる。天蓋つきのベッドなんて初めてだと感動する。
「三日あるんだ。最悪逃げればいいさ」
「逃げる・・・そんな事できません。この国の人々のためにも」
「じゃあどうするんだよ」
「戦います」
「一秒でバレて王都が落ちるな」
「・・・そうでした!私が負けちゃダメじゃないですか」
胸ポケットのリリスを見る。
こちらはこちらで戦意喪失か。
「俺も身の振り方を考えるか」




