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1-6 魔王 宣戦布告

仮宿で装備の手入れをするライト。

本を読むシエラ。

タクトはベッドに座ると違和感を感じる。


「ゆれてる?」


カタカタと揺れる机の上のコップ。

いち早く気づいたのはライト。


「地震か?」


その言葉と同時、扉が乱暴に開かれる。


「取り押さえろ!」


なだれ込む鎧の男達に取り囲まれタクトとライトを拘束される。


「うぐっ!」


油断していたタクトは何も出来ぬまま兵達に身体を固められた。


「シエラ様」

「これはいったいなんの真似だ!」


視界には床の茶。

大人数の足音。


「王がお待ちです」

「だからって、なにもこんな乱暴な・・・!」


タクト達はアイマスクとと口には縄。耳もふさがれついになんの情報も

得られなくなり、薬品の臭いと共に気を失った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


目を覚ますと鉄格子。

隣で眠るライトの姿。


「どこだ、ここ」


監獄らしき場所。

目の前の房にはキングとクインが倒れている。

彼らもどうやら捕まっていたらしい。


格子を揺らす。当たり前だが鍵がかかっている。

タクトが本気で逃げようと思えばこのような格子も

破壊できるのかもしれないが、状況がわからず静観を選択。

遠くから漏れる灯りがゆらゆら揺れる、地下房だろうか。


「タクト・・・?」


目を覚ますライトが目を擦る。


「どこ、ここ」

「わからん」

「そうだ、シエラが連れて行かれて、えっと・・・それから」

「俺もそこまでしかわからないよ」


薄明かりの漏れる方向に「おぉい!」と叫ぶ。

鉄格子をガチャガチャと揺らすも何の反応もない。


「私達は・・・捕まったのですか?」

「さあな」


タクトは座り込む。

胸ポケットを触りリリスを探す。


「ここよ」


フードから小さな声。


「ついてきていたのか」

「まあね。もうすぐ面白い事がおきるしね」


リリスがそう言うと空気が揺れた。

鐘を突いたかのようなどぉん、と振動。


「何だこれは」

「んっ!」


その感覚は短くなる。

ライトが耳を塞ぐ。

タクトも同じく耳を塞ぐが何の効果もない。

頭に直接音を流し込まれているかのような錯覚。

爆音の連打に激しい頭痛がする。

皆蹲ると、目の前が不思議な光景になっていた。

それは真っ暗な空間、房でも、宿屋でもない。

いつの間に連れてこられたのか、否これは魔術が見せる幻想だろう。


「リリス?」

「いるわよ」


周りにはリリスのみ。

バン、と目の前に真っ黒な存在が現れる。

真っ暗なのにそこに何かがいる、と確信させるほどの存在感。


「始めまして、人類諸君」


ノイズ交じりの低い声。

しかし安心させるかのような優しい口調。


「突然の魔術での挨拶、失礼。我は魔王、といってピンと来る者はいるだろうか」


リリスは瞳を輝かせている。

コイツが前回の魔王か。

タクトの前の魔王、タクトに魔王の座を引き継いだ存在。


「先日我が配下魔人十三柱が一柱「ジ・アイ」が人間に敗れた。

魔王軍にとってこれは大いなる問題だ」


ギクリと背中に汗が伝う。


「現状・・・ニンゲンは放置しても問題ない畜生と思っていたのだが、

一柱を打ち倒す程のニンゲン・・・そう、「勇者」の誕生は我にとって

脅威になる可能性があると判断した」


勇者は泣いて逃げ回っていただけです、なんて言っても信じて貰えなさそうだ。


「お前達の国王に勇者を差し出すよう命じたが・・・蒙昧な貴様らの王は

我が要求に答えず徹底抗戦を選択した。

だから仕方ない、これは仕方のないことなのだ」


魔王がわざとらしく、芝居がかった口調で言う。


「貴様達の国ルリエは三日後、滅ぼすとする。そうだな、これは宣戦布告だ」


魔王の瞳がこちらを見つめている、錯覚ではない。

見えない瞳が確実にこちらを見ている、そして目をそらせば今この場で殺される。

そう思わせるほどの殺気。


「男は痛めつけ殺し、女は辱め殺す国を滅ぼす。何もかもを燃やし尽くす。

攻め込むを三日後とする我が慈悲に感謝せよ。」


一方的な宣告。


「ただ、一つだけ貴様達に助かる方法を与えよう。

勇者を差し出せ。」


ここでこの国が勇者を彼らに差し出せばタクトの計画は崩れてしまう。


「しかし、ライトが死に、魔王軍に合流すれば、いや・・・」


タクトは混乱する頭を抑える。


「三日後、最後のチャンスだ。貴様らの真摯な心を我は信じている・・・。

と、これだけでは我にその実行能力があるか何の証明もしていなかったな」


影の後ろからさらに四つの影が現れる。


「紹介しよう、炎を司る大悪魔アポロニア」


影がはれ、現れる美丈夫。

背丈はタクトと変わらないほどであろう、その姿は

燃えるような黄と赤の髪色、鋭い眼光の反面その表情は笑顔。


「氷を司る大悪魔ゲィト、風を司る大悪魔トゥスル」


大剣を背負う甲冑の騎士と巨大な蛇のような異形。


「そして、時を司る大悪魔」

「来たわね、アンタとの生活も楽しかったわよ。じゃ、アタシはこの

術式を使って魔王様と合流ね!」

「ファウスト」

「・・・」


リリスのような翼、リリスのような髪色。

異なるといえばその性別。


「ほへ?」


リリスの顔が見た事のない状態になっている。

頭の中がパニクっているのだろう。


「ちょっとまって!時の大悪魔はどうしたってアタシ一人のはずよ!直談判してやるわ!」


リリスはブツブツ呪文を唱えなにやら足元に魔方陣が現れる。


「ふぎゃ!」


魔方陣から黒い雷撃が放たれリリスは蚊取り線香の上を通り過ぎた蚊のように地面に落ちる。


「おかしい、おかしいわ。こんなの・・・」

「・・・なんて言うか・・・元気出せよ」

「うっさいわ!」

「手始めに」


魔王が話し始める。


「貴様らの王を殺す。国民諸君今から起こる出来事を見て、勇者を探すかどうか決めてくれて

構わない。すぐにでも結果は出せると思う。では、以上だ」


視界が戻る、と同時に爆音。

地下房はビリビリと振動し、砂が落ちる。


「どわっはっはっは!なにやら魔王様が仕掛けたご様子!ボクたちも急がねば!」


目の前の房のキングがいつの間にか鉄格子の外に。


「おい!お前らいつの間に!」

「仕事があるのでな!サラバ!あと時の大悪魔だとか言って驚かせてきた

そこのちっぽけな悪魔よ!嘘はあまりつかない方が良いぞ!ハッハッハッハ!」


クインを抱きかかえたキングは廊下を走っていった。


「・・・私、私は」


真っ青な顔をしたライト。

何度も何度も響く爆音と衝撃。伝わる閃光。

タクトは鉄格子を押す倒す。


「私達の中に勇者が・・・?」

「行くぞ!」

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