1-5 闇
「ほんっとーに!お疲れ様でした!」
ライトは食堂で二人に頭を下げる。
結局あの後、魔方陣が現れもとの位置に転送された。
行き絶え絶えの三人はやっとの思いで脱出。
町に戻りギルドに報告をしても信じてもらえず。
当然燃え去り消えてしまった魔物の証拠は何もなく
証明のしようもなくなった。
「誰にも信じられませんでしたが、我々はあのミストの真のボスを
倒した!・・・という事にしましょう」
「そうだな」
「うん」
飲み物が運ばれてくる。
各々がコップを持つ。
「では!」
「「「乾杯!」」」
この世界の酒はハッキリ言って不味い。
転生後何度か酒場に行ったり、この宿屋で試したが何を飲んでも不味かった。
やはり現代日本は酒をおいしくするための技術が発展していたのだろうかなどと
哀しんだが、勝利の後の酒、祝い事での酒は特別な旨さがある、そんな気がした。
「ふへへ、もっと持ってきてくだしゃい」
「ライトって未成年じゃ・・・」
「未成年?彼女はもう15だよ」
数秒考える。
「まいっか!」
異世界だもんな!そんなこともある!
というか仮にも魔王なのにそんな事を気にする必要はない気もする。
俺がルールだ!
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「リリス」
「はいはい。まったく、アンタの小間使いじゃないんだけど。」
宿の裏口、タクトはトイレにいくと言いリリスを呼び出す。
シエラを助けることが出来た時、確かに自分は喜んだ。
その感情は紛れも泣く人間として人間を助けた安堵でもあり
喜びでもあった。
魔族としてライトを利用する、その信念に揺らぎはなかったが
彼は自身の中の葛藤を消化しきれないでいた。
「お前は、人間のことをどう思う」
「どうって、大嫌いよ。あんなイキモノ」
「それはわかってる。魔族のほうが優れているとか、そういう話だ。
人間は捕食されるべきだとか、そういう」
「ああ、そんな話。思想なんて魔族だってバラバラよ。
アタシは少なくともそんな風には考えてないわ。
いえ、考えてたけどその考えを改めつつあるってとこね」
リリスはふわりとタクトの隣に降り立つと光に包まれる。
その粒子がタクトよりすこし背の小さい女性を形作る。
アビスから救い出したときと同じ姿、異なるとすれば
不自然ないよう街娘の服装をしていること。
銀色の髪に深紅の瞳。角は魔術で隠しているのだろうか。
「これがアタシの本来の姿。見た目はニンゲンと大差ないわ」
「そうだな」
「屈辱にもニンゲンにアタシは負けた。だからって認めるって訳じゃないけど・・・。
人間にも魔族を越えるものがいるって事は理解しないとアタシも強くなれないわ」
「真面目なんだな」
「魔王様のためだもの」
タクトは空を見上げる。
「いい機会だから聞いておきたいんだが、なんでそんなに魔王に拘んだ?
一人で好き勝手に生きればいいじゃないか」
「それは・・・アタシを救い出してくれたからよ」
「救う・・・?」
「アタシは時の狭間にずぅっと封印されてたわ。ずっとずーーっと昔からね。
その封印を解いてくれたのが魔王様」
「命の恩人ってわけか」
「アタシを自由にして、アタシが魔王城の最後の防衛線が砦だって!
でも・・・それでも、それなのに、アタシは負けちゃったわ」
リリスは物悲しげに微笑んで見せた。
「魔族も泣くんだな」
「当たり前でしょ。だからアタシはニンゲンを認めて、また超えるわ」
「・・・ところでどうやって情報は入手したんだ?」
「キングとクインって奴を捕まえたの。」
「・・・何?あいつら・・・」
「捕まえて吐かせたわ、あら、気がつかなかったの?アイツら魔族よ」
人間に擬態していたのだろう、タクトは全く気がつかなかった事に驚いた。
「やっぱり、前の世界でシエラは「ジ・アイ」に殺されてるわ。アイツら
シエラを「ジ・アイ」まで導いて生贄にしようとしてたもの」
「ああ、そこまではわかる」
「でも、殺された方がニンゲンにとってはマシだったかもね」
「どういうことだ?」
リリスは飛び切りの笑顔を見せる。
「選定された人間を陥れ「ジ・アイ」まで導くの。高貴なニンゲンの血を好む魔獣
だそうだからね。だから・・・ここでシエラが生贄になれば数年何もせず「ミスト」の
主として大人しくしていたでしょうね」
「ああ、だがそれだとライトは勇者として・・・」
「ふふ、アンタは最高の仕事をしてくれたわ」
リリスが嗤う、笑う、哂う。
いかにも嬉しそうに空を飛んで見せる。
「「ジ・アイ」の死によって魔王様が進軍を始めたの。ここに脅威がいるってね。
本来ニンゲンが倒せるような存在じゃないのよ?あの柱」
「な、に・・・?」
「くふふっ!ああ、やっと魔王様に会えるわ!」




