第四十七話 復帰Ⅲ
アーザ第一部隊はアスとナザレの復活を切っ掛けに、パーティーメンバーを大きく変えた。
まずエースであるアスと、パーティーリーダーであるナザレ、それにギフト使いであるマルチーザ、さらに少し前に加入したナダ。他のメンバーは最近アーザに入ったブラミアとアマレロとなった。
コルヴォは一時的に第一部隊から抜けることとなる。その理由としては、これ以上前衛の冒険者は第一部隊に必要ないこと。また第二部隊の戦力増強として、第二部隊に一時的に属することをコルヴォ自身が決めたのだ。
そのことについて、誰も反対はなかった。
新たな形となったアーザ第一部隊の初冒険は、ソールの中層を目指すこととなった。
パーティーの形もそれに合わせることとなり、先頭が軽戦士であるブラミアとアマレロ、中衛にアス、ナザレが続き、ギフト使いを守る役目と後方の警戒がナダとなった。
アスが前衛から退いたのは、パーティーで最も火力があり中遠距離攻撃もできる特性上後ろに下げ、いざというときの補助に徹し、強敵の場合は“溜めて”からの一撃でモンスターを狩るためだ。もちろん戦力の温存という兼ね合いもある。
ナダが後方なのは本人がそれを望んだことと、パーティー内でアスに続く視野の広さからである。
ナザレも何も言わなかった。ナダの探知能力についてはアスには劣るものの一目置くほどはあるとこれまでの冒険、並びにガスパロの情報で知っていたからだ。
実際にアスが不在の第一部隊では、他の冒険者よりも遠くまでの敵を見通していた。その実力を疑う冒険者は一人としていなかった。
「じゃあ、どんどん行こうぜ!」
「やれやれ、責任重大でござるな」
ブラミアとアマレロは並んで前へと立つ。
まだ浅層。現れるモンスターは火人。触れれば爆発するようなモンスターを相手に、二人は見事な連携を見せていた。迫り来る火人へブラミアは『重力からの開放』を使って遠くまで飛ばし、アマレロはそんなブラミアよりももっと先まで『自由への疾走』で空中を移動し、事前に何匹かの火人を狩っておく。
「動きが軽いようで何よりだぜ!」
「ブラミア殿こそ、まさか拙者との連携がうまく行くとは思わなかったでござる――」
浅層如き、二人だけでも十分だと力を見せつけるように、アーザ第一部隊は先へと進んで行く。
「アマレロ、右の奴が出遅れているぞっ!」
「分かっているでござるよ! ブラミア殿こそ、左の敵を!」
二人は互いに指示を出し合い、見事な連携を仲間に見せつける。その様子に、ナダは口角を少し上げた。
「まさか、アマレロとの訓練がこんなところで役に立つとはな!」
「そう言えば、拙者と何度も手合わせしたでござるからなあ!」
二人は軽口をたたく余裕さえあるほど、火人を楽に蹴散らしていく。その理由の一つにマルチーザによる光のギフトによって攻撃力が底上げされていることもあるだろう。
「今となっては嫌な思い出だがな!」
「そうでござるか?」
「ああ、なんたって、結局オレはアマレロに一対一で殆ど勝てなかったんだ! 全く嫌味な野郎だぜ!」
悪態をつきながらもブラミアは笑顔だった。
「今の拙者は“もっと”強いでござるよ?」
アマレロもよく聞いたブラミアの言葉だと、特に気にする様子もなく、神速の剣技で火人を斬殺していく。
(……そう言えば、俺も何度か呼ばれたな)
ナダはラルヴァ学園で龍に食べられた冒険をした後も、ブラミアとアマレロとの交流が続いたことを思い出す。何度かブラミアの道場へ通い、木刀をぶつけるようにしてお互いの稽古に励んだのだ。もちろん殆どアマレロの勝ち越しであったが、もう一度武芸を見直すいい機会だったことは記憶に深く残っている。
どうやらナダが学園を旅立った後も、ブラミアとアマレロの交流は続いたようで、互いを高め合うように訓練に励んだようだ。
その成果が、この戦いの結果だとも言えるだろう。
二人はそんな調子で、中層まで差し掛かった。
次の敵は蛇人だ。二人とも戦闘経験があるが、より強力な敵相手にはもっとアビリティを絡めるように倒していく。
一体の蛇人に対して、まずはブラミアが先行する。最初に剣をぶつけて、『重力からの解放』によって、蛇人の体を浮かせるのだ。初めての感覚に戸惑う蛇人は空中で無防備になる。暴れるように手や足をぶんぶんと振るう蛇人であるが、残念ながら姿勢制御はできない。初めて使う者がうまく行くほど、『重力からの解放』は甘いアビリティではなかった。
そこを、アマレロが首を跳ねていく。アビリティを使わなかろうと、光のギフトに強化されているアマレロの剣は早く、鋭い。蛇人の首であろうと何の苦労もなく跳ね飛ばした。
数体の蛇人が現れても、やはりブラミアが先行し、全ての敵を撫でるのだ。空中で無防備になったところを、アマレロ、あるいはアスが切り殺していく。
「これがブラミアのアビリティ。モンスターに対する牽制としては優秀で……本人も強い……。事前に聞いていた通りだ」
アスは薄い風を纏わした剣を、蛇人を真正面からはらわたをぶちまけるようにふるっていく。彼の破壊力に満ちた剣を前に、蛇人達は耐えることすら出来ていなかった。
そんなアスは、ブラミアとアマレロの実力に驚愕していた。ガスパロと同じ、いやそれ以上の冒険者がナダに続いてまたもや現れたと。それもあまり名の通っていない冒険者だったため、不思議に思うほどだった。
「……私と比べて」
そんな中、活躍する二人に恐れを抱くのがリーダーであるナザレだった。リーダー経験が長いため、今すぐに地位が脅かされるわけではないが、アーザに飛び込んだ“新しい冒険者達”はナザレにとっても脅威だった。
より蛇人の数が増えた為、ナザレも先頭に参加する。
『光の鍛冶屋』によって、光の槍と化した杖は、簡単に蛇人の頭を貫いて殺すことができるほどの攻撃力を誇るが、その範囲は狭く、移動速度も並みなので三人が零すモンスターを的確に殺して行くだけだった。
「いい感じだな――」
ギフト使いの傍で控えているナダは、呑気に欠伸をして暇を潰した。アーザ第一部隊の進行速度があまりにも早いので、後ろからモンスターが現れる様子はないので手持無沙汰であった。
「暇そうだね!」
そんなナダへ、隣にいるマルチーザが下から覗き込むように話しかけた。
「仕事がないからな」
「そうみたい。でも、不思議ね。ナダが来てから優秀な冒険者ばかりアーザに入っている気がする。少し前までは落ちぶれた冒険者か新人しか入って来なかったのに」
「……その中でもマルチーザは選ばれて入ったんじゃないのか? 優秀なんだろう? 実際に第一部隊のギフト使いに選ばれているんだから」
「そうでもないよ。私はそれほど実力は無いけど、光のギフトが追い風となったから選ばれた感じかな? 他のギフトと違って光のギフトは単純なものが強いから、あまり創意工夫なんて求められていないもん。そもそも優秀なギフト使いは他のクランに取られているからね」
アーザ第一部隊にギフト使いはそれほど多くない。五人ほどしかいなかった。その中で最も単純で威力が出て、付与が得意なマルチーザだったからこそ、第一部隊のメンバーに選ばれたと言えるだろう。
だからマルチーザは他の冒険者との連携もあまり必要なく、付与以外のギフトはあまり求められていなかった。
「なるほど。新たなギフトを覚える気はないのか?」
「どうなんだろうね? 新しく覚えたい気もするけど、このまま付与を極めてより威力を高めていった方がパーティーに貢献できるかも、と考えることはあるんだ」
「確かに、それも一理あるな――」
「沢山の種類を覚えれば覚える程、一つ一つのギフトに対しておざなりになるから威力が中途半端になるのも困るからね。たまにそうじゃない“神に愛された人”もいるけど、私はそうじゃないから」
ナダは“神に愛された人”と称されるギフト使いを何人か思い出してしまった。これまで学園でも、オケアヌスでも、トップクラスのギフト使いと組む、あるいは出会うことが多かった。彼らはギフトの種類も多く、それぞれの威力も高かった。だが、一般的なギフト使いはそうではなかった。
「そう言えば、俺のような剣使いは剣の威力を上げる時に筋肉を鍛えるか、剣術を学んで体の動かし方を知るぐらいだが、光のギフト使いはどうやって威力を上げるんだ?」
「簡単だよ。ひたすらギフトを使って、光のギフトの“叡智”を知っていくの。そうすると、より使い方が洗練されて威力が上がるの。もちろん込める力を強めれば威力は上がるのかも知れないけど、そんなのは長い間使えないからゴミだね」
「なるほど……」
ギフト使いの感覚にあまり理解が追いつかず、ナダは取りあえず頷いていた。
そんな無駄話をしている間に全ての蛇人を殺し終えて、冒険者総出でカルヴァオンの剥ぎ取りに移る。それからまた下へと潜るのだ。
いつも感想ありがとうございます。
そう言えば次のモンスターは何にしようかと悩んでいるので、好きな恐竜を教えていただけるともしかしたら今後登場するかもしれません。オリジナルのほうが需要があるんですかねえ?
※第二巻発売中です。




