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迷宮のナダ  作者: 乙黒
第五章 石の王

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第三十二話 アーザ第一部隊Ⅳ

次の更新は3月25日20時となります。

 それからも、何日か、アーザ第一部隊は変わらない冒険を行っていく。

 火人を狩り、蛇人を狩り、ラプトルを狩るのだ。苦難はあまり訪れなかった。事前にナザレが情報を集め、アーザ第二部隊やアーザ第三部隊が事前調査を行う事によって、アスがエースの第一部隊は安全に、それでいて確かな冒険を行うのだ。


 冒険の基本は、苦難がなく、安全でいて、確かなカルヴァオンと実績を得る事だ。実績はどれだけ深い階層に行けたか、もしくは新たな道を開拓したか、など様々な観点から評価される。評価自体も、冒険者組合自体から評価されるのか、それとも他の冒険者に評価されるのか、もしくは同じクランや同じパーティーメンバーに評価されるのかは時々の冒険による。


 アーザからの、第一部隊の評価観点は――いかに深い場所に行けるかである。

 現在のアーザにあるパーティーで、深層に達したパーティーは存在しない。

 だからアーザ第一部隊の最終的な目的は、他のクランと同じく深層に辿り着き、その果てを冒険することであった。


 だが、未だにアーザ第一部隊は深層に辿り着いていない。未だに中層に留まっている。もう一歩を踏み出していない状態なのだ。

 その理由の一つを、コルヴォはいつもの屋敷で行う明日の冒険のために開いたパーティー会議で、簡単に述べていた。


「ソールの深層は、環境が一気に変わる。ラプトルに簡単に勝てるだけでは、すぐさま、くたばってしまうような場所だ。多くの龍種が存在するんだ。その為の準備を今はしている――」


 深層に着くと、どうやら戦うべきモンスターである“龍種”の数も、種類も、爆発的に増えるらしい。

それに対応するため、冒険者達は中層で龍種の対応を学ぶのだ。もうそれは大部分を果たしているため、アーザ第一部隊は次なる目標を定めていた。


「次は“はぐれ”を追うぞ――」


 耳元の赤いピアスを握りながらナザレは第一部隊の仲間達に向けて、強く言った。

 と言っても、ナザレが狙うのは、一般的にどの階層にも出現しないような“特殊なはぐれ”ではなく、深層から中層に紛れ込んだ“はぐれ”である。

 コルヴォもナザレの提案に、深く頷いていた。


「この挑戦は、アーザの次へと繋がると思うから、是非しよう――」


 したがって、アーザ第一部隊の次なる目標は、最近現れたとされている新たな“はぐれ”になった。


 そのはぐれの名が、パキケファロサウルスと言う。

 別名、石頭龍だ。

 体長は四メートルから八メートルほどであり、個体によって大きく異なる。

 そんなパキケファロサウルスの最も大きな特徴が、頭頂部に固いこぶを持っているのだ。それは緻密骨ちみつこつのドームとなっており、冒険者の剣やギフトでも壊せないほどに固い。またそんな頭頂部を武器にした頭突きが、パキケファロサウルスの最大の攻撃である。

 それだけではなく、くちばしの歯も湾曲し牙のように鋭くなっており、両手に生えた五本の指の牙もナイフのような切れ味を持っていた。


 彼らは太い後肢とどっしりとした胴体を持ち、当たるだけで人にとっては大きな損傷を与える。

 またそれだけではなく、彼らの足は速い。突撃機関車のようであった。


「確か石頭って、深層に出現するモンスターだろう? 以前にフォカオンが倒したらしいな。それが中層に現れたのか?」


 ガスパロも当然ながら、パキケファロサウルスに関する情報は頭に入っている。

 彼らはそれ自体が特殊なモンスターなのではなく、普段は深層に生息しているのに、中層に“はぐれて現れるモンスター”だから、“はぐれ”と呼ばれているのだ。

 したがって、討伐例自体も非常に多い。それほど深層ではポピュラーなモンスターであるが、当然のようにラプトルよりも強いモンスターだった。


「そうだ。既に倒し方のメソッドはフォカオンが確立しているが、私たちはまだ倒していない。私達の“今”の実力を知るにはちょうどいい相手だろう。私達が目指すのは、深層だからな――」


 ナザレは腕を組みながら、今後のアーザ第一部隊の展望について語る。

 その後に、ナザレはパキケファロサウルスについての情報を仲間達と再確認する。


「――パキケファロサウルスの最大の特徴が、頭突きによる攻撃と龍麟による高い耐久力だ。また突進の速さがモンスター随一で、横に曲がるのは苦手だ」


 ナザレは事前に調べてあるパキケファロサウルスの特徴を述べる。

 またフォカオンが事前に確立しているパキケファロサウルスの倒し方についても、仲間達に伝える。


「フォカオンは、パキケファロサウルスの倒し方を、こう述べた――」


 パキケファロサウルスは突進力があり、頭突きをまともに受けると簡単に内臓が破裂してしまうほどの威力があるが、そのあまりの速さと視野の狭さにより、攻撃が当たる直前に避ける事によって、パキケファロサウルスを壁に当てる事が可能なようだ。


 そうして壁にめりこんだパキケファロサウルスへ、全力でアビリティやギフトを叩きこみ倒す、というのがフォカオンが確立したメソッドである。

 特にフォカオンが深層へ潜っているパーティーでは、一撃に定評のあるアビリティを持つ冒険者が多いようだ。それこそ――パキケファロサウルス“程度”の龍麟ならば、簡単に貫けるようなアビリティを持つ者が数人いるらしい。フォカオン自体もそれほどの力を持つ冒険者の一人のようだ。


「――私たちのパーティーでは、そのような破壊力を持っているのはアスと、コルヴォだけだ」


 ナザレは二人の冒険者を順番に見つめた。


「オレはまだまだだよ――」


 アスはそんなナザレの評価に、と謙遜するように首を横に振る。まだそれほどの自信はなかっただろう。上には上がいる。そのことは未だに深層に挑戦できないアス自身が最も強く感じていた。


「ナザレにそう言ってもらえるとは光栄だね。当たれば殺せるだけさ。まあ、オレはアスとは違って、当てるまでが大変なんだけど――」


 コルヴォはやれやれと両手を上げた。

 コルヴォの持つ『鬼殺し(オーガ・スレイヤー)』に、速度を上げるなどの要素はない。リーチが少しだけ伸びるだけだ。弱いアビリティではないが、似たようなものはありふれており、コルヴォ自身は大したものではないと思っている。

 彼が説明口調だったのは、ナダへと伝えるためだろう。


「コルヴォは、戦う気はあるのか?」


 ナザレが聞く。

 最近のコルヴォはあまり積極的に前に出たがらないからだ。


「いや、オレはいい。オレのポジションはナダに任せるつもりだ。ナダ、パキケファロサウルスを殺せるか?」


「どうだろうな。出会ったことがないからな。俺の剣で斬れるなら殺すさ――」


「内側の白い鱗なら小さくて、少しだけ柔いさ」


「なるほどな――」


 コルヴォは簡単なアドバイスをナダに言う。

 ナダは顎をさすりながら興味深そうに聞くが、その顔に危機感も覇気もない。腑抜けた表情で聞いているのだ。

 二人の会話を聞いて、やはりナザレは不快そうだった。特にやる気があまり感じられないナダが、どうしてもナザレには気に食わなかった。


(……やはり、アスがもっと強くならないと、このクランは終わるかもしれない)


 ナザレは、もう、ナダが弱いとはもう思っていない。

 だが、このままパーティーの中心がアスではなく、ナダになったら将来性がないとナザレは思っていた。

“多少強い”ナダの実力はよく分かるが、彼を立てても他のクランを追い越すどころか、並ぶことも敵わないと思ったからだ。

いつも感想や評価などありがとうございます!

恐竜に関しては名前については悩んだのですが、これまでのモンスターもほぼそのままだったので、そのままにしています。


第二巻は3月30日発売です!

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
ナザレの言に同意するわけじゃないけど ナダは不老不死と図体以外カタログスペックだけ見るとパッとせぇへんように見えるからね。 戦闘勘はずば抜けてるけど剣技もそこまで向上してなくて、武器の弱さが火力の低さ…
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