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迷宮のナダ  作者: 乙黒
第五章 石の王

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309/336

第三十一話 アーザ第一部隊Ⅲ

次の更新は3月23日20時となります。

しばらく更新頻度を上げる予定ですのでお楽しみに!

 それから二日後、また第一部隊の冒険者達は迷宮へと潜る。

 ソールだ。

 コルヴォも当然のように入り、隊列はこの前と一緒である。

 メインに潜る階層は依然と変わらず中層だ。ナダは深層へと一度挑戦してみたい、とコルヴォにこっそりと進言したが、このパーティーではまだ早い、損失が出るかも知れない、と言われて断られた。


 第一部隊の冒険者達は、蛇人を中心に狩って行く。依然と変わりはしない。アスを中心にして、他のメンバーはそのサポートだ。アスの隣にいるナダでさえも、アスが狩り損ねたモンスターを狩る冒険者にすぎなかった。


 中層に潜ることで、必然的にラプトルと戦う事も増えた。

 階層を選んだとしても、蛇人だけと戦うのはどうしても難しい。ラプトルは中層ならどこでも出現する可能性が存在し、時々“はぐれ”と呼ばれるラプトルが浅層に出現することさえあるのだ。

 ラプトルは、それほど冒険者にとっては慣れたモンスターであった。


 だからこそ、ラプトルの行動、習性、攻撃などは冒険者の間に広く知れ渡っている。

 どんなパーティーであれ、ラプトル一頭と十二分に戦える、あるいは逃げ切れるかがソールで活動できるパーティーの最低基準となっているのも事実であった。

 とはいえ、そんなラプトルが十頭現れたとしても、十全に対応できるのが、深層に挑戦できる最低限のパーティーであった。


 アーザ第一部隊のパーティーも、当然ながら、その立ち位置を目指していた。

 だからアスを中心にして、ラプトルをいかに効率よく倒せるかを模索していく。


 アスの攻撃は早かった。風により移動速度を上げ、剣速を上げ、時に風で切り刻む。その攻撃力は確かなものだが、やはり少々時間がかかるのが難点であった。次から次にモンスターが出現する迷宮において、一撃の威力というのも大切な戦闘能力の一つである。


そんな威力不足を補うためにアスはマルチーザの光のギフトを借り、時にはナザレがとどめを刺し、ガスパロが牽制することで一撃に全ての風を込めた“必殺”をモンスターに叩き込むのである。


 その一撃の名が、『竜巻の如き一撃トルナード』だ。剣が見えなくなるほどに銀の風を纏わせて、剣に触れるだけで斬撃と共に切り刻むような無数の鋭い風を相手に浴びせるのだ。


 ラプトル程度の龍麟であれば、『竜巻の如き一撃トルナード』は容易く切り刻む。

一撫ででラプトルの命を簡単に奪うほどだ。

 だが、その一撃を放つには“溜め”がいる。アスの『竜巻の如き一撃トルナード』は、アビリティによって自らの風を起こし、ギフトによってその風を増大させて集める技だ。だから祝詞を唱える時間が必要なのだ。

 その代わりに、一度発動することが出来れば多数のラプトルを一撃、あるいは二撃で倒すことが出来るのだ。


「ラプトルにも、そろそろ飽きてきたな――」


 その一方で、着実に頭角を現すのが――ナダであった。

 ナダもラプトルと戦うことが増えた。アスが疲れたからだったり、対処できないほどの数が現れたり、もしくはたまたまナダがいた場所にラプトルが現れたり、と。その要因は様々だ。


 ナダは基本的にラプトルと相対しても、無駄に攻撃はしなかった。牽制もあまりしない。無駄にロングソードを振るえば、ナダの早すぎる剣の振りとラプトルの龍鱗の固さにより、剣が簡単に欠けるのだ。それを何度もナダは経験していた。


 だから、アスやナザレが牽制したり、ガスパロが『魔弾バラ・マジカ』を撃った時、もしくは他の何かに気を取られた時に、ナダも一撃でラプトルの首を刎ねて仕留めるのだ。首の龍鱗は小さく、脆い。それも内側はより柔らかいので、ナダは狙いすましたかのようにその場所を狙う。

 ラプトルの弱点として、冒険者に広く知れ渡っている場所だった。


 その一撃の度に、仲間達のナダの評価が上がっていく。

 狙いすましたかのようなナダの一撃は、外すことがなかった。


「あいつ……あれほど強かったのか?」


 あまり人を認めないガスパロも、的確にラプトルを倒していくナダの評価を徐々に上げていた。


「ナダ――」


 それはアスも一緒だった。

 隣にいるからこそ、ナダの強さを徐々に感じていた。

 いつもは覇気もなく、餓えも全くない冒険者なのに、時々、“圧”を感じるのだ。それはラプトルを倒す一瞬の出来事である。

 その度に、アスはナザレの言葉を思い出す。


「――あいつは、確かにコルヴォの言う通りの実力者かもしれない。だから、アスはあいつよりも強さを見せつけるんだ」


 ナザレの言葉と共に、アスはより“風”を強く意識する。

 自身に眠る最大の牙を。

 アスは負けるわけにはいかなかった。

 ――目標が、あるからだ。

 その為には、どんな手段も問わないつもりだった。


「力はすぐに増すことはない。じゃあオレの出来る事は――」


 人は急に強くなれない。力が覚醒して増す事などもっとあり得ない。だから“風”に意識を移し、無駄を省いて行く。今ある力を小さく密集することで、より鋭く研いでいく。


「いい兆候だね。やっぱりナダ、君はアスにとっていい踏み台になるよ。ナダのおかげで、アスはもっと強くなる――」


 コルヴォはマルチーザを護衛するという名目で、ほぼ手を貸していない。必要ないと思っていたからだ。

 全てはアーザの戦力増強の為に、アーザで最も才能のあるアスをより強い冒険者にする為だ。

 アスもそれを望んでいることを知っている。

 コルヴォとアスの目的が合致している限り、コルヴォは協力を惜しまないつもりだった。


「はあああああああああああああ!!」


 三体のラプトルに囲まれたアスは、一振りで全てのラプトルを切り刻んだ。先ほどまで大雑把に腹を全て切り刻んでいた一撃が、頭部を抉る一撃へと変わっていく。それは動く頭を的確に狙えることと、より力を引き絞ることで可能になったのだ。

 さらにもう一体のラプトルを殺せるほど、アスの剣に風はまだ残っている。

 その変化に、コルヴォは嬉しそうに口角を上げた。


「アスのこの変化は、ナダにとっては、どう映っているかな? ナダに変化は無さそうだからな。彼の強さは未だに底が見えないからね――」


 コルヴォはそれ以上何も言わなかった。

 ナダが現在、必要な時に必要なだけの実力しか見せていないことにコルヴォは気がついていた。


 何故なら、学生時代の彼はもっと強かったからである。

 当時の彼なら――ユニコーンと戦った時のナダの姿には、あと数十体ラプトルが現れても、一人で対処しそうな凄みがあった。


「まあ、こんなものだろう――」


 それからも、ナダは時折――実力を見せる。

 必要以上には見せない。その理由の一つに、ナダよりもアスの移動が異次元に早かったからだ。ナダ自身は少し足が速いだけで、アスの風の力を得た移動速度には到底かなわない為、モンスターと会った時にどうしてもアスの初動に遅れてしまうのだ。


 だから現在の自分の実力に、ナダは特に不満もなかった。

 今のパーティー内での自分の実力は、ナダ自身としては妥当だろうと思ったからだ。


(そう言えば、あの時のナダの武器は“大型武器”だったね。今のナダの武器は市販されている低級の――ロングソード。ナダにとっては物足りないか)


 コルヴォはラプトルとナダが戦っている最中に、ナダの動きが少しぎこちないことに気づき、それからナダが手慣れた武器でないことを思い出す。

 かつてのナダは大型武器を使って、モンスターの数も、モンスターの強さも、仲間も関係なく、多くのモンスターを撫で斬りするかのように蹂躙していた。その強さには当時の冒険者の誰も付いていくことができず、最終的にはナダが一人で目当てのモンスターを倒した“ユニコーン”との戦いを、コルヴォは思い出していた。


 あの時に、コルヴォは本当の意味でナダの強さに憧れたのだ。

 他者を寄せ付けない圧倒的な強さ。それはアビリティにも、ギフトにも頼らず、ただ己の腕のみでモンスターを駆逐するナダの姿に、コルヴォは憧れて、目指し、はぐれを一人で倒そうと粋がって――失敗したのだ。

 これまでラルヴァ学園で築いてきた成功があるコルヴォは、初めて乗り越えられなかった壁に挫折したのだ。


「全く、だからオレはクランを作ったんだ。改めて思い出すよ――」


 そんな事実を思い出して、まだ、先があるのか、とコルヴォはナダの“まだ見えていない実力”に絶望した。

いつも感想や評価などありがとうございます!

特に感想はとても楽しく読んでいますので、これからもぜひお待ちしております!

ちなみにですが、アーザに所属するほぼ全ての冒険者はアスよりも弱いです。


第二巻は3月30日発売です!

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
一日考えたけど、今回の武器全く想像できない…。
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