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迷宮のナダ  作者: 乙黒
第五章 石の王

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第三十話 アーザ第一部隊Ⅱ

「さ、ラプトルはどんな強さなんだ?」


 ナダはラプトルへと愚直に距離を詰めた。

 そんなナダへ、ラプトルは真っすぐ飛び掛かった。

 ナダの振り上げたロングソードと、ラプトルのかぎ爪がぶつかり合おうとする時、ガスパロは援護するかのように何度か銃の引き金を引いていた。


「ちっ、玉切れかよ――」


 だが、ガスパロの銃から『魔弾バラ・マジカ』が放たれることはなかった。ガスパロは苛つくように舌打ちをするが、その顔は青かった。

 アビリティの限界が近づいていたのだ。


 ナダに――支援はない。

 だが、関係はなかった。

 ナダは、ラプトル程度のモンスターは歯牙にもかけなかった。

 ナダはラプトルのかぎ爪との距離を正確に測り、寸で横へと強く踏み込んだ。ラプトルの胴体を浅く斬りつける。


「軽いな――」


 武器に不満そうながらも、ナダは嗤っていた。


「『閃光クレラオ』」


 そんな時、ナダへの支援として、マルチーザが祝詞を唱え終わっていた。辺りは敵味方関係なく、大きな光に包まれた。

 アスも、ナザレも、ガスパロも、コルヴォも、光が放たれる前に目を瞑って耐えようとする。

 祝詞を聞いていなかったラプトルは強い光に目がやられて、視力を失ったかのようにその場で大きく頭を振っていた。自らの周りを尻尾で払うかのように何度もくるくると回る。目が見えなくても、隙を無くそうとしていたのだ。


 そんな中、ナダは目を瞑ったまま、平気でラプトルへと斬りかかっていた。

 まるで目を瞑っていても、周りが見えているかのようだった。


「……オレの風みたいだ――」


 アスはその様子を見て、ナダに感知をするようなアビリティがあるのだと思ってしまった。


「しっ――」


 ナダはその状態のまま、ラプトルの尾をかいくぐって何度もロングソードで斬りかかる。どの攻撃も鱗を斬り裂くことは出来るが、ラプトルの骨までは斬れない。ラプトルの命までは届かなかった。

 ラプトルの身体に赤い線が一つ、二つと刻まれていく。ナダには傷一つつかないままだ。ナダとラプトルはまるでその場で踊っているかのような戦闘を続けていく。


 そんな中、ラプトルの目が、ぎょろっとナダへと向いた。

 目が、生き返ったのだ。

 ナダはその事実に気づいたかのように目を見開いて、距離を少し取ろうとした時、ナダの横を“風”が通り抜けた。


「ナダ! 勝手な行動をするな! ラプトルは危険なモンスターなんだぞ!」


 アスは短時間の間に、体力を少しだけ回復していた。

 目が治りかけのラプトルを強襲する。ナダがつけた傷を寸分違わない剣の軌跡で、より深く斬りつけた。


「……いいところだったのに」


 一方のナダは不満げだった。ラプトルの攻撃を勉強するいい機会だと思ったのに、途中で奪われたからだ。

 ラプトルの目は未だにナダから、より厄介なアスへと目を向けた。

 自身を敵と見なくなったラプトルに、ナダは大きなため息を吐いた。


「やっぱりラプトルは一筋縄じゃいかないね!」


 アスは左右に体を何度か揺らして、ラプトルの目から逃れようとするが、どうもうまくいかない。そんなアスは強い風による速さを求めた。だが、力が尽きかけているアスにそんな速さは出ない。

 アスをサポートするかのように、ガスパロは弱い光弾を幾つか放ち、ナザレはアスのサポートとして、短い光の刃を杖につける。アスはそんな仲間を感じて、「本当にここはいいパーティーだ!」と朗らかに笑った。


「アスさん、任せてくださいっ!」


 するとアスの風に、マルチーザの光が乗る。アスの足りない速さは、マルチーザが補ってくれた。より強い一撃を、輝く光が補強してくれる。

 その事実に、アスは口元に笑みを浮かべた。これでラプトルを殺すことができる、と。


「もういいか――」


 だが、アスに注意が向いたラプトルを、ナダは横から一撃で首を狩り取った。より強く、より早く踏み込み、アスのついでに光で強化されたロングソードは、ナダの手にラプトルの首と言う手応えすら感じさせなかった。


「なっ――」


 ナダがラプトルを倒したと言う事実に、アスは驚きを隠せなかった。


「ナダ、随分と見事な一撃だね――」


 コルヴォはそんなナダの一撃を褒め称えるように言った。


(やはり、強いね)


 コルヴォは心の中で呟いた。

 アスも似たようなことが出来るが、他に同じことのできる冒険者はアーザにはいなかった。

 現在、アーザでラプトルに対して、有効な手段を持つのはこの二人だけという事になる。

 やはり、二人が第一部隊の今後の両翼になると、コルヴォは強く確信した。


「……忌々しいやつだ」


 確かな実力を見せつけたナダに、ナザレはより一層の不快感を覚える。



 ◆◆◆



 コルヴォを入れた第一部隊の中層の冒険は、ラプトルをあれからも何頭か倒して終わった。

 冒険の成果としては、コルヴォがいない時よりも多かった。コルヴォが殆ど戦っていないのにも関わらず、だ。


「ナダ! 勝手な攻撃は止めろ! 迷惑だ!」


 冒険者組合に帰ってくると、ナザレはすぐにナダへと詰め寄った。

 他の冒険者の前にも関わらずに――冒険者組合内の多くの目がナダ達へと向く。「アーザの内輪もめか?」などと、冒険が終わったばかりで、声を荒らげる冒険者は少ないため怪訝そうに見つめていた。


「何か問題でもあったのか?」


 ナダは無表情だった。

 あまりナザレに興味がないらしい。


「最初のラプトルとの戦闘だ! お前が勝手に動いたおかげで、アビリティの尽きかけていた私たちはラプトルと戦う事になったんだぞ! 逃げるか隠れるという選択肢もあったかもしれないのに!」


「それはつまらないな――」


「なんだと! ふざけているのか!」


 ナザレはナダの首襟を掴み上げるように持った。ナダの方が身長が遥かに高く、首元を占められる心配もないナダは、特に抵抗をしなかった。


「ナザレ、よせっ!」


「止めるな! アス! こいつには言っておいた方がいいだろう! そうは思わないのか!」


「それならオレが言うよ。ナダ、パーティーは協力するものだ。君が何を考えているのかは知らないが、優秀なのはこの間の冒険でよく分かった。でも、パーティーでやっていくのなら、周りともっと足並みを揃えるべきだ」


 アスはナダを諭すように言った。

 ナダは悪意のないアスを眺めて、小さく舌打ちをしながら頷いた。


「分かった――」


「ナザレ、これでこの話は終わりだよ。オレ達は見世物じゃないからね」


 アスが周りを見渡すと、ナザレとナダの諍いを面白そうに眺めていた野次馬たちが集まっていた。彼らはコルヴォが作ったアーザの冒険者ではなく、他のクランに属している冒険者達だった。これ以上の痴態を晒すのは、アーザにとってもよくないということでコルヴォもこの場は解散させる。


 一人残ったナダは、消えた仲間達の背中を眺めながら「この先どうなるんだろうな?」と、自分の未来について思いを馳せる。

いつも感想やいいねなどありがとうございます!

余談ですが、迷宮内での索敵について、一般冒険者<<<<ナダ<<アス<<<<<レアオンぐらいの差があります。


また3月30日発売の第二巻についての続報ですが、新たに虫と2巻のカラーイラストもXにて公開されました。どれも素敵なのでぜひ見て下さい!

その他の情報についても随時「@otogrostone」という私のXのアカウントで告知してますので、フォロー待ってます!


もう少し余裕ができれば暫くの間更新頻度を上げようかとも思っていますので、今しばらくお待ちください。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます! エデルとかいう人が抜けたから、双色のアスに期待しすぎて宗教信仰みたいになっている感。特にナザレ、ガスパロはヘイト買いますね笑 そのアスは天才と言われ、仲間の助けを借りても…
更新お疲れ様です ナザレはアスに盲信的すぎますかね 本来は力がある冒険者は大歓迎なはずなのにそれを憎しみで向かえるのはリーダとしてアウトな気がします 目的のためにナダ自身でパーティーを組んだ方が平和に…
つか普通に有利に戦ってたところに後ろから手を出した上で勝ちきれなくてとどめ取られた状態で言うことがそれかよ、って感じがする 普通にタイマンやってる間に休憩して危なくなりそうなら援護するでよかったやん、…
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