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完璧な悪女が、ひとりだけ騙せない  作者: 宵待 桜


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25/39

幕間 ルシアンとテオ


中庭から戻ったルシアンをテオが廊下で待っていた。


「どうでした」


「……断ってくれた」


「そうですか」


テオは少し、ルシアンの顔を見た。


「またそんな顔をして」


「何が?」


「自分でわかってないんですか、本当に」


ルシアンは答えず歩き続けた。


そんなルシアンの隣にテオ並んだ。


「信じてもらえてよかった、って顔ですよ。でも同時に信じさせてしまった、とも思ってる顔だ」


「……黙れ」


「嫌ですよ」


テオはあっさり言った。


「ルシアン。あなたは今何をしているんですか」


「星詠みの会を」


「そうじゃなくて」


廊下の窓から、中庭が見えた。


さっきまでアリスが座っていたベンチが遠くに見えた。


「アリス・シャルム嬢に対して、何をしているんですか」


ルシアンは前を向いたまま、答えなかった。


「幼い頃から知っていた。ずっと見ていた。盾になって。オズワルド先生に頭を下げて。夜会でずっと傍にいて。中庭で約束して」


「……それは必要なことだ」


「全部ですか」


「……」


「全部、必要なことですか」


テオの声は穏やかだった。

責めていない。


ただ正面から、見ていた。


ルシアンは立ち止まり視線を向ける


窓の外の中庭のベンチに、もう誰もいなかった。


「……終わったら、全部話すと言った」


「言いましたね」


「だから今は」


「今は、何ですか」


テオは隣に立って、同じ方向を見た。


「終わったら話す。でも終わらなかったら? 終わらせられなかったら?」


「……終わらせる」


「そうじゃなくて」


テオが、静かに言った。


「終わる前にあなたが先に、どうにかなったら」


ルシアンは何も言わなかった。


「あの人はもう、少しずつ感じ始めてますよ。あなたが積み重ねてきたものを。俺には見える」


「……」


「だから聞いてるんです。あなたは今、何をしているんですか、と」


長い沈黙だった。


ルシアンはまだ、窓の外を見ていた。


「……守る」


「それだけですか」


また、間があった。


「……それだけじゃ、ない」


テオは何も言わなかった。


それで十分だった。


「行くぞ」


ルシアンが歩き出した。テオが隣に並んだ。


「ルシアン」


「何だ」


「終わったら、ちゃんと話してください。全部」


「……わかっている」


「話したいんでしょう」


「……ああ」


テオは笑った。


「そうですか」


それだけ言って、並んで歩いた。


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