卒業試合 その5~才能~
次回投稿予定日
・2025年9月7日(日) 20時00頃
卒業試合は中盤に入った。七聖子孫7人と他9人が勝ち上がり、初戦を突破した者達の戦いが始まった。
17回戦目は百龍と、武蔵ノ刀術学校の白飛太郎。白飛は長刀と短刀の二刀流をベースとし、のらりくらりとした戦い方により、百龍に傷を付けた。しかし、本気を出した百龍に圧倒され、あえなく敗北した。
18回戦目はラークと、朱雀高等学校の王玲破。ラークは百龍と違い、最初から本気を出していた。地属性魔法によりフィールドをボコボコにして、王の行動範囲を限定し、炎魔法と風魔法の混合魔法、ファイアーロードを放ち、左右に逃げれない王はもろにその魔法を食らって倒れた。それにより、準々決勝では七聖対七聖ということになった。
そして、19回戦目。ラインとその対戦相手はフィールドに立っていた。
「それでは第19回戦目。ユベル都心騎士団アカデミー、ライン・ユベルとセグス国立科学高等学校サーシャ・フランニカ、との試合を行う!!レディー……ファイト!!!」
―セグス国立科学高等学校。この世界、通称「七聖界」の中で最も学力の高い学校。戦い方は自分が製作した装置・武器で戦う。どんな武器なのかは大会当日まで分からず、対策が取れない難点がある―
「よろしくお願いします」
―しかし、当日何の武器を使って戦うかよりも重要なこと。選手がどんな作戦を立てているかだ―
目の前の女性は、不敵な笑みを浮かべながら左手を差し出し、握手を求めてきた。
初戦の相手にも同じ事やり、お互い握手を交わしてから勝負を始めていた。
「こちらこそよろしくお願いします」
サーシャの手を握った瞬間、右手にビリッとした微かな痛みを感じた。
サーシャは少し驚いたような顔して、ゆっくりと手を離し、数歩下がった。その間、お互いに気まずさを感じていた。
「体大丈夫なの?」
「うん」
「あれ、弱くしすぎたかな」
サーシャは何かを考えながら、棒を取り出す。持ち手は黒く、それ以外は金属丸出しで何も塗装されていないただの棒。と思っていた。
「弱」
金属丸出しの部分でおそらく雷属性の粒子が帯電する。触れさせて感電させる作戦か。
だったら簡単に終わる。剣の方がリーチが長いからな。それに電気を流さない材料で作っているから雷魔法対策も万全だ。
「ん~だけど、君には通用しない気がするな」
サーシャは警棒の先端をラインの方へ向けると、突如先端が飛んでくる。
ラインは回避するために左へ動くと、警棒の先端からパーンという音とバチバチッという音がフィールドに響く。
「鞭?」
「正解」
伸びた先端と警棒は太い鉄線により繋がれていた。あんな太い鉄線が警棒の中に収まっていたとは予想ができていなかった。少しまずい状況になった。そう、まずい状況なのだが……。
―もっと凄い装置とか武器とか出てくるのかと楽しみにしていたのに。倉敷姉の方が全然凄いんだけど―
「えー何その顔。ちょっと嫌だな!」
鞭の先端が迫ってくる。剣に巻き付ける、弾く、避けるという選択肢が頭に浮かぶ。あの鉄線がこれ以上伸びないという確証もないし、雷魔法の量も正確に把握できていない。こういう時は避けるのがいい。
右に避けると、再び鞭は空気を叩き、放電する。
「風刃」
剣を一振りすると、緑色の光を発しながら刃状の空気が数発サーシャに放たれる。
しかし、サーシャが軽く手首を動かす。その小さい動きに反し、鞭は大きく反応し風刃を叩き破る。
「うん。今日は良く制御出来てるね。この調子だったらあれもいけるかも」
サーシャは左手をグーパーすると、どこからか拳銃が現れる。
ラインに銃口を向け、躊躇なく3発打つ。
―魔法弾か!あれは鉄2発と火1発…―
魔法弾。魔法の粒子を凝縮し、透明で頑丈なカプセルに入れて銃弾のように弾丸のように魔法攻撃をできる代物で、発砲されると速度自体はそこそこ速く、該当する魔法の色を発しながら迫ってくる。
弾丸の下をくぐりながら、半自動のためか、迫ってくる鞭を弾く。そして、このままサーシャを斬る。
「そうくるよね」
サーシャを斬ろうと正面に入った瞬間、突如炎がラインを襲う。
サーシャの服は腹部が焦げたため無くなり、残った部分は黒く焦げている。おそらくサーシャ本人がした攻撃なのだろう、サーシャ本人が勝利を確認した顔をしている。
炎の塊は地面に倒れ、今尚燃焼している。
「油断したね」
サーシャはそう呟くと審判の方を見る。審判は状況を見て決着の宣言を行おうと手を上げようとした。
しかし、炎の塊から氷柱が放たれ、サーシャの体に刺さる。刺さった氷柱は、次第にサーシャの体を侵食し凍らせていく。
「え…?嘘、何で……」
「お前の言う通り油断したよ。時間がかかりすぎた」
炎は勢いを無くし小さくなっていく。次第に中から無傷のラインが出てくる。
火が消えたのを確認し、ゆっくりと立ち上がる。
「あの攻撃、結構痛かったんだけど…」
「見れば分かる」
地面に落ちた剣を拾い、凍結により動けないサーシャの首に当てる。
これもまた勝利条件なのだ。
「勝負あり!勝者、ユベル都心騎士団アカデミー、ライン・ユベル」
魔法を解除し、通路に戻ろうとするとサーシャに止められる。
「待って!なんであの技を防げたの?」
「攻撃をしてくるのは分かってたし、攻撃してくる時に微かに粒子を感じたから。ただ、対応の仕方はミスったけどな。氷で防ぎつつ、真空状態にするのを早くやっておけば良かった。危うく負ける所だった」
「感じたって…貴方は剣士でしょ!?なんでそんな細かい魔法探知できるのよ!」
「なんで?」
通常、大多数の剣士は魔法探知が出来ない。魔法探知ができる者でも細かな粒子を探知できる者は数える程であり、全員が40代以上である。魔法使い、賢者レベルでも早くて20代。18歳という若さで尚且つ剣士であるラインが、正確に魔法探知が出来るのは有り得ないことなのだ。
「んなの簡単だ。練習して身に付けたんだよ」
「練習って、そんな……簡単な…」
「簡単か。どうとでも思っといてくれ」
サーシャに背を向けて歩く。歩きながら、サーシャが独り言のように呟いている言葉が聞こえる。
「七聖子孫。血筋がこれほどの影響があるなんて……才能としか――」
才能。確かに才能なのかもしれない。人が何十年かけて習得することを7年弱で習得できる。
俺が木村やサーシャや一般人の立場だったら、腹が立つのかもしれない。七聖という希少な血筋を継ぎ、血の滲むような努力をして身に付けた技を涼しい顔をして習得するだけではなく、それ以上の技を見せられる。
「…別に努力してないって訳じゃないんだよな」




