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卒業試合 その3~並大抵の人間ではない~

「勝負あり!第2回戦目勝者、武蔵ノ刀術専門学校、白飛しらとび 太郎たろう!!」





 観客席でラナ達と共に試合を眺めようと会場から、ホリーに見つからないよう遠回りして移動する。

 席に到着した頃には、既に2回戦目が終わっていた。





「早いですね」


「あぁ。終始勝った選手が優勢だった。といっても相性の問題だったがな」


「相性ですか?」





 ラナと会話をしながら、席取りされていたラナと倉敷姉の間に座る。





「魔法使いの多くは呪文を唱えてから魔法を発動させるだろ?その唱えている隙を狙われたんだ」


「スピードは侍の基本でござるからな!」


「そうか。心さんも刀がメイン武器なんですもんね」


「もちろんでござる!あ、藤丸に敬語はいらないでござるよ。同い年なんだし」


「タメなのか…まぁ。そのうち」


「そういえば、次は誰と誰が戦うの?」


「ん?ちょっと待ってね~」





 倉敷姉がポケットからスマートフォンを取り出すと、写真を確認する。





「え、それスマートフォンってやつですか?」


「そうそう。見たことない?」


「いえ、1回だけ見たことはありますけど、こんな近くではないですね」


「まぁーそっか。ここの世界って、そこまで近代科学取り入れずに、自分たちでやってるからこういうのも輸入されないんだね。あ、次はラーク・ケンジって子と、エリアン・シャルトレイって子だよ」


「ラーク…たしか。七聖だったか」


「そうですね。七聖魔剣士のロム・ケンジの子孫ですね」





 倉敷姉からスマートフォンを借り、見たり触ったりしながらラークについて答える。といっても、世間が知っている情報を話すだけだが。





「スタイルは魔剣士。剣に魔法を纏わせつつ、周囲にトラップを仕掛けながら戦うハンター式です。扱える属性も結構多く、基本属性から光属性、副属性や環境属性も少々扱えます。その中でも基本属性の土と雷を最も得意としています」


「武器に魔法を纏わせながら戦う。それでいて得意な魔法属性が雷と土って、カルイみたいだな」


「狩りを生業にしてる人はみんなそういうもんだよ。遠距離攻撃が出来て、速度も速い、それでいて基本魔法だから扱いやすい。武器に纏わせれば相手を簡単に感電させる近距離武器にもなる。むしろ雷魔法だけで狩りをする奴もいるぐらいだ」


「へー。例えば、どんな風にして捕るんですか?」


「うーんとね。こうやって――」


「それでは第3回戦目。ケンジ国立魔剣高等学校、ケンジ・ラークとアグレッス国立銃剣専門学校、エリアン・シャルトレイとの試合を行う!!レディー……ファイト!!!」





 フィールドに2人の男子が立ち、1人は剣に雷魔法を纏わせ、もう1人は左手に剣、右手に銃を持ち、ゆっくりと構える。その間、ラインとカルイは話していた。





「簡単に話すとこんな感じですね」


「今まで意識したことないですけど、確かに発動速度が速い雷魔法にしか出来ない芸当ですね」


「使用者側の感覚も問題になってきますけど、慣れれば簡単ですよ」


「いつか機会があれば試してみますね」


「ぜひ」





 エリアンはゆっくりとラークに近づく。狙いはカウンター。攻撃を受けながら、剣か銃で攻撃する。





「カウンター狙いか」


「なに?」


「体力・スピードでは負けるが、耐久力では俺の方が上だ。だから、攻撃をあえて受けてカウンターで一発決める。そう考えてんだろ?」





 ラークは、右手に握りしめてる剣を手首を返しながら離す、掴むを繰り返し、クルクルさせながらエリアンを挑発するような口調で話す。





「確かにお前の考えは間違っちゃいけないが…」





 エリアンの足元に魔法陣が現れる。





「っ!?」





 エリアンはすぐさま後ろにかわすと、鋭い岩の先端が地面から30cmほど上へ素早く伸びる。もしエリアンが躱していなければ、左足を貫かれていたところだ。





「あくまで近づけて、なおかつ俺の攻撃に反応出来てからの話だが、大丈夫そうか?」


「ちっ!七聖だろ!もっと正々堂々と闘え!」


「正々堂々?何言ってんだよ」





 ラークの握っている剣先に紫色に光る。そして、エリアンがいる方向に一振りすると、雷属性の斬撃が放たれる。





「くっ!」





 エリアンは再び躱すと、再びラークの斬撃が襲い、エリアンは回避一方となっている。





「ラークのやつ。闘い方を変えたのか?」


「攻撃が斬撃のみとは、随分とシンプルだな」


「そうですね……現状では」





―緩急をつけて攻撃をしてやがる。俺の体力切れを狙っているのか?そうはいくかよ!―





 攻撃パターンを読み、剣で斬撃をガードし、ラークに向かって銃口を向けながらトリガーに指をかけた瞬間、銃本体が前へ勝手に動き、トリガーを引く。

 弾丸がラークに向かって放たれるが、体を屈め回避する。





「終わりだ」





 ラークの剣が再び紫色に光ると、凄まじい速度で直線状にエリアンを横切る。





「うっ!ぐあぁぁあぁ!!」





 エリアンの全身に電気が流れ、体の内部から焼け焦げる痛みが伝わっていく。





「うぅ!!ぐあぁあがあ!」





 歯を食いしばり耐えようとするも、全身を駆け巡る電気は今まで味わってきたどの雷魔法よりも強力で、歯茎から血を流し、立ったまま体を痙攣させ、やがては意識が途切れる。





「しょ、勝負あり!勝者、ケンジ国立魔剣高等学校、ケンジ・ラーク!」





 勝利したのに拍手が起きない。こんなのは大会史上、反則負けによる勝利を除いて無いだろう。

 それもそうだ。何が起きてたのか分からないが、エリアンがラークの雷魔法を受け、電撃ショックにより叫び声をあげながら気絶したのは理解できているが、拷問に近いような攻撃を七聖子孫が行ったこの状況を観客達は飲み込めていないのだろう。





「小細工なんてしてねぇ。純粋な技術で戦った。これ以上の正々堂々なんて存在しねえよ。さて……」





 ラークは気絶しているエリアンにそう言い放つと、大きく息を吸い、選手控室の方を向き大声を出した。





「百龍!!!3年前の屈辱。俺は一日も忘れたことはねぇ!!!いいか百龍!!!この技はお前のために用意したんだ。勝手に負けんじゃねえぞ!!いいな!!!!!!」





 ラークはそう言うと、息を荒くしながらフィールドを後にする。





「な、何がなんだかさっぱりでござるな」


「……3年前。俺らが中等学校を卒業してそれぞれの高等学校に入学する前に七聖で集まったんです。そして、なんやかんやあって模擬戦をやることになったんですが、ラークはかなり百龍にやられたんですよ」


「え?七聖の中でそんなに実力差があったの?」


「そうですね。といっても、百龍とホリーが異常に強かったんですけどね。ただ、あいつを悪く思わないでください」


「え?」


「あいつ、3年前と比べて見違えるほど強くなったんです。魔力量、精密性、そして武器の扱いも段違いに向上しています。この3年間で文字通り必死に努力したんでしょう」


「ライン。さっきの戦いについて、お前も理解できたのか?」


「はい。あの無駄に見えた斬撃ですが、いづれもエリアンはギリギリのところで回避していました。エリアンの横を斬撃が通過する際、雷魔法を構成する負の電荷、または正の電荷のいづれかを分離させ、金属に帯電させた。その金属が銃だった」


「え?自分が放った魔法を放った後に分解させて、必要な時まで残しておくなんて、そんな事可能なの?」


「可能です。粒子を凝縮させ、形を成してから魔法を放ちますが、その密度をゆるゆるにして、外部を何かでコーティングすれば可能です。例えば、風魔法で空気を固めたり、土魔法で砂や岩でコーティングなどですね。そして、分解させたい場所でコーティングしている魔法を解除させれば、自然と分離してくれます」


「だが、かなりの集中力を使ってまで多用する理由なんてあるのか?」


「最後の高速移動のためです。磁石のS極とN極が引き合うのと同じで、金属に帯電させた電荷とは逆の電荷を自身の体に纏わせる。後は、自分のスピードと磁石が引き合う力を利用して高速で移動し、相手を斬る。その傷口に雷魔法を流した結果が、あの電撃ショックだ」


「ちょ、、何言ってるのか藤丸にさっぱり……」


「理解するのは困難でしょう。俺も完璧に説明できていないですし。ラナさん補足できますか?」


「……大方ラインの言った通りだが、補足するなら、高速移動する際、相手がこっちに来ないように固定する必要がある。恐らく今回は風魔法だろうが、60m程離れた距離からそんな技を使うなど、並大抵の人間では出来ないな」


「……そうですね」





―今回の卒業試合。思っていた以上に面白くなってきたかもしれないな―

次回投稿予定

2025年8月10日20時00頃

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