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第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.9
秋。十一月の半ば。
品川にある非上場の中堅物流会社の最終面接に奇跡的に辿り着いた。
すっかりくたびれた就活スーツに寮の共用のアイロンをかけ、両親からの誕生日プレゼントのネクタイをキュッと締め、背水の陣に向かった。
もしこの企業がダメだったら、実家に戻ろう。そう悠人は決めていた。
東京には全く未練はなく、いや寧ろ東京の慌ただしさが心身に異常をきたし始めており、四国の山中でおおらかに生真面目に生きていこう、半ばそう決心してのことである。
そう言えば、この就活においても俺は全く真剣に打ち込むことができなかったな。この半年を思い返しながら口元を歪ませる。電車の窓に映った己の歪んだ笑顔の向こうに、大手不動産会社の広告看板が無機質に通り過ぎていく。




