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第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.78
何故に、あの緑に囲まれた潮の香りの漂う集落が懐かしく感じるのだろう。何故に居心地の悪い東京にわざわざ帰らねばならないのだろう。
そんな郷愁を振り払い、更に足を街に向け進める。
街の匂い。解されていた心が固くなっていくのを感じる。
県道はやがて国道に合流し、昨日見た景色が逆向きに広がっている。もう駅までは十分程であろう、長かった一日が間もなく終わる。
昨日右手に見えたワークウエアショップが左手に見える。悠人は急に、昨日までの現実社会、即ち就活に敗れ去った惨めな自分の姿をショップに重ね合わせた。昨日までの自分、を。
牛丼のチェーン店が左手に見えてくる。昨日は何気なく見たのだが今日はその存在が重苦しく感じてしまう。
もう駅は、目と鼻の先である。




