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磯に香る君のそばに海神  作者: 悠鬼由宇
第1章
73/434

第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.73


 悠人はハッとする。


 先ほど美妙さんは言った、「心の怪我は大丈夫かい」と。


 就活で深く傷いた俺の、心の傷。すると美妙さんは心に傷を負ったワタツミという人間が、この地に現れることを予知していたと言うのか!



 そして。


 その傷をこの地で癒やし、その後何らかのお返しをする事になると言うのか? 


 幸福を振りまく、とはそう言う事であろう、悠人は呆然と老婆を見つめるしか無かった。



「さっき血は止まったと言うたが。傷はまだまだ癒えておらんよ。ゆっくりこの地で治していきなされ。そしてー」


 老婆らしからぬ、恥じらいを含む笑顔を樹々に向けた。


 その隣で美妙さんの肩を揉みながら、京がうんうんと頷いていた。



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