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第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.66
それからまた道が二股に分かれ、一方は頂上へ行く道、もう一方はちょっと降る道であり、京はその降る道を先導して行く。
それにしても、こんな大自然が東京から電車で小一時間のところにあるとは思いもしなかった、悠人はしみじみと思いながら歩を進めている。
山の中なのに潮の香りが鼻腔をくすぐる、この感覚が新鮮でたまらない。そして肺いっぱいに吸い込むと、血に溶け込み全身をゆっくりと巡っている気分に、かつてない癒しを感じるのであった。
二、三分歩くと、樹々の中に突如小さな寺が出現する。造りは古く苔むしており、とても一介の観光客が訪れるような社では無い。
やや新しい石の柱に、海音寺、と見難い文字で書いてある。
その寺の裏に小さな平屋建ての家があり、どうやらそこが目的地だった様だ。
「ミミョーばーちゃん! 京だよー」
そう言いながら、京はその家の扉を開けて家の中に入っていった。




