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第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.56
「キミ、この恵比須の辺りに来るのは、初めてなんだっけ?」
いつの間に一緒に食事を済ませた香が、食後のお茶を啜りながら悠人に尋ねる。
「ええ。昨日、本当に偶然この辺りに来たんですよ」
「そっか。この辺ってさ、城ヶ島とか葉山とかと違って、ちょっと寂れてるでしょ?」
確かに。東京から電車で一時間ちょっと。車でも二時間はかからないだろう。それでいてこれだけ海の幸豊かで山の幸もふんだんにある。だが、所謂湘南や葉山の辺りとは全く雰囲気が異なっており、観光客など殆どいないのではないだろうか。
「観光の名所も無いし。だからこの恵比須にはホテルやレストランなんかも無いし。あるのは、昔からの生活を受け継いで、細々と生きている、私らのような住民だけ。わかる?」
悠人はなんとなく頷く。




