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第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.47
全く夢を見ずに目覚めたのはいつぶりだろう。それ程悠人は深い眠りに落ちていた。
そして目を開けた瞬間、自分がどこで寝ているのかが全くわからなかった。
ここは何処だ、こんな古い家でどうして俺は寝ていたのか?
障子から明るい外の様子が窺え、時計を見ると七時丁度である。後頭部の鈍痛に気付き、ようやく今自分が寝ていた場所と経緯を思い出した。
障子を開けると潮の匂いが悠人に押し寄せてくる。悪くない、いや寧ろとても良い。山間で育った悠人は海を眺めたり潮の匂いを胸いっぱいに吸い込むのが大好きだ。
「おっはよー。よく寝てたなあ、イビキうるさかったわー」
早朝の庭先に映えるとびきりの笑顔。秋深まる漁村に咲く一輪の若花。昨夜電灯の下で見るよりも、遥かに彼女は若く、そして美しかった。
尊い。神々しい。そんな思いによって悠人は即座にテンパる。




