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磯に香る君のそばに海神  作者: 悠鬼由宇
第1章
29/434

第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.29


 悠人は右手を伸ばし、


「僕、名前……」


「ああ、そーだった。で、名前何だっけぇ?」


「綿、積、です」



 カオちゃんと京ちゃんは再度ギョッとした顔になる。



「あー、ああ。ワタツミ。海神?」


「んーー、普通の男の子にしか見えないわね」


「だべ? 三ヶ日のお告げ、コイツじゃねーよぉ。あービックリした。ああそうそう、あれもいいわぁ、弁護士が出てくるやつ!」


「へえ、それ面白そう。どんなストーリー?」



 何だこの二人。悠長にも程がある。仮にも頭部を負傷した人間に名前を何度も呼ばせ、名前に驚いたかと思うとコケにして。挙げ句の果てに全然関係ない韓流話で盛り上がりやがって。



 開けた目をそっと閉じ、ズキズキ痛む後頭部を横に向けて、ついでに身体も横向けにする。



 あれ。


 俺、スーツ着てたよな?


 あれ?


 何これ、作務衣?



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