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第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.29
悠人は右手を伸ばし、
「僕、名前……」
「ああ、そーだった。で、名前何だっけぇ?」
「綿、積、です」
カオちゃんと京ちゃんは再度ギョッとした顔になる。
「あー、ああ。ワタツミ。海神?」
「んーー、普通の男の子にしか見えないわね」
「だべ? 三ヶ日のお告げ、コイツじゃねーよぉ。あービックリした。ああそうそう、あれもいいわぁ、弁護士が出てくるやつ!」
「へえ、それ面白そう。どんなストーリー?」
何だこの二人。悠長にも程がある。仮にも頭部を負傷した人間に名前を何度も呼ばせ、名前に驚いたかと思うとコケにして。挙げ句の果てに全然関係ない韓流話で盛り上がりやがって。
開けた目をそっと閉じ、ズキズキ痛む後頭部を横に向けて、ついでに身体も横向けにする。
あれ。
俺、スーツ着てたよな?
あれ?
何これ、作務衣?




