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八咫の鴉  作者: 蓬莱さん
34/35

34話 罠



◇◆◇◆◇◆



《 茶臼岳瘴気観測地点 》



斎藤を含めた前衛の三人が観測地点に到着していた。仮説基地から約15分ほど北西に向かった場所、周囲に魍魎鬼やネストの気配はなかったがドローンの光に照らされて、それはあった。


「な、なんだこれは?!」


それは、太さが野球ボール位で長さは人の身長程のドス黒い筒状の物が無造作に地面に突き刺さっている。数は・・・三本。二つはただ刺さっているだけだが、一本だけ薄く瘴気を滲み出している。


「こ、これが瘴気濃度の正体?こんな奇妙な物初めて見たぞ。他に瘴気反応がある場所はないのか?」


「確認します!仮説基地。確認をお願いします」


ザー、ザー、ザー


「仮設基地!仮設基地!応答願います」

仮説基地からの返事はなくインカムからは雑音だけが聞こえる。


「リーダー!基地からの返事が有りません。無線が切れています」


「なんだって!?基地で何かあったのか?」


ガキンっ!!


突然ドローンが激しく火花を散らし螺旋を描きながら墜落する。

ドローンの光を失い一瞬暗闇になる。一人が神器を使って辺りを照らすと何かが動いた様に見える。


「なんだ!?」


ガサッ・・ガサガサ

すると周囲から物音が聞こえる。物音の方へ眼をやると黒づくめの集団が三人を取り囲んでいることに気付く。


「「 !? 」」


「だれだ!!」


斎藤がそう叫ぶと三人は身構え臨戦態勢をとる。その瞬間、光が一瞬見えて何かが飛んでくる。斎藤は身を翻し、それが何か分からないが咄嗟に交わす。それを前衛の一人が交わしきれずに体に受ける。


「うっ・・・」


そのまま倒れこむ。もう一人が倒れた仲間に駆け寄り、斎藤は疑似神器を抜刀して音のする方向へ走り出す。


「これは麻酔銃・・??」


駆け寄ったもう一人も背中に麻酔銃を受けて重なるように倒れ込む。その声と倒れる音を聞いた斎藤はさらに速度を上げてジグザグに動きながら一瞬で相手との距離を詰めて斬りかかる。

全く手ごたえがなかった。


「ちっ!!」


斎藤は神器を持っていない、もう片方の拳で相手の腹部を殴打する。『グフっ!』と言う呻き声と共に相手は前のめりに斎藤に寄りかかるように倒れ込む。斎藤はそれを払いのけようとすると、黒ずくめの残り数人が斎藤に駆け寄ってくる。斎藤はなんとか振りほどき迎撃態勢を取り無手で数合交え二人を倒す。が、次の瞬間、背中に痛みが走る。振り向くと斎藤に銃口を向けて黒ずくめの一人が立っていた。

その男に近づこうとするが意識は遠のいていき倒れ込む。



◇◆◇◆◇◆


《 茶臼岳・仮設基地 》


捜索の為、各チームの前衛が駆け出してから10分程が経ち柚子と美甘の二人が新型の調整をしていると他のCランクチームの一人がこちらに来る。


「何か起きたんでしょうか?」


と、斎藤チームの方を見る様に促してくる、すると斎藤チームの車両の方が慌ただしくなっているらしく、何やらバタバタしている。


「どうした?」


そのやり取りを聞いていた一真がインカムから聞いてくる。


「え、と。なんか斎藤チームの方で何かあったみたいなんですが・・。ちょっと待ってください」


言い終えようとすると、その斎藤チームの車両から二人がこちらの車両に駆けてくる。

柚子と他のCランクチームの面々が斎藤チーム二人の話を聞くが、とても慌てていて的を得ない。

柚子が一真に直接話して貰うために、自分のインカムを一人に渡す。


「あ!草薙リーダー突然すみません!私、斎藤チームの朝倉といいます。先ほど斎藤リーダーが瘴気観測ポイントに到着しました。ところが、その直後、突然ドローンからの映像も切れ、反応しなくなりました。さらに、無線もトラッキングも信号も途絶えて」


おれは少し思案して・・・まずは原因の確認をしよう


「解った。まずは電波のどこに原因があるか無線の周波数をこちらと合わせて。それから柚子、他のCランクチームの前衛を一旦こっち戻ってもらって。俺達もそっちに一旦戻る。それから、状況を本部に連絡して判断を仰いで。あと、山岳救助隊と消防隊の隊長さんを至急呼んでください」


そう言うと玲に事情を説明して二人で足早に戻る。もしかしたら二次遭難の可能性がある。急いで一旦戻らないと。


俺達が仮設基地に戻ると既に他の前衛も戻っていて、山岳救助隊と消防隊の隊長も来ていてある程度の現況は聞いてもらってるみたいだ。

無線についてはこの周辺では問題なく使えているようだった。

そして、本部からの回答は『現段階では危険度の上昇と判断できないので現場の判断で行動するように』とのことだった。これは、斎藤チームが中部支局に連絡しての返答だった。朝倉さんの話では奥の院に一度確認をしてからの返答のようだった。

なんか、変な感じがするなー。とにもかくにも、俺は改めて全員に集まってもらった。


「本部からの回答は先ほどのとおりです。現在斎藤リーダーが不在の為、他の誰かにお願いできますか?」

と、斎藤チームの面々に答えを促す。すると、先ほどの朝倉さんが口を開いた。


「残った私たちの中に、前衛は居ません。それに、現場の指揮判断を経験した者も居らず…。できれば、そちらのどなたかにお願いしたいのですが・・」


何故か、みんなが同時に俺を見る。やっぱりそうなるかぁ・・・。

おれは一つため息をつくと、弥生さんと柚子がニヤニヤとしている。


「はぁ、わかりました。一時的に指揮をとります。一応本部に確認をお願いします。あっ!朝倉さん、中部方面ではなく副局長室に直接お願いします」


朝倉さんが早々に本部に連絡をいれてくれる。時間が惜しいので、返答がくるまでに状況を再確認する。


「では、返事がくるまでに状況を確認しましょう。まず、当初の捜索対象である6人も見つかっていない。さらに、斎藤リーダーを含めた3人が音信不通。瘴気反応は数値が徐々に下がっている。ドローンが一機反応無し。現状このメンバーで対応」


改めて言うと、非常に厳しい。これで応援出さないとか・・。全く何考えてるんだ。

それにしても・・何かひっかかるんだよな、なんだろう?人為的な何かを感じる。


「状況は、ひっじょーうに厳しいですね・・・。なので、いったん全車両を。山岳救助隊の詰め所付近まで移動させて固まりましょう。そして、救助隊や他の消防隊の方たちにはいつでも避難できるようにだけ準備もしてもらいましょう」


確認の終えた朝倉さんが副局長室からの返答を報告してくれる。


「副局長室からの返答です。草薙リーダーの指揮の本、クエストを続行。また、準備が出来次第こちらから増援を送るとの事です」


「了解です。では、皆さん改めてよろしく。状況から考えて、先の6名も今回の斎藤リーダーと同じ状況で行方不明になっている可能性が高いと思います。なので、まずはこれ以上被害を抑える為にも私と玲の二人だけでで観測地点に急行し調査します。他の前衛はこの仮説基地を守って下さい。サブリーダーとして朝倉さん、ここの指揮をお願いします。状況に応じて山岳救助隊と消防隊に避難指示を。それから各チームはドローンを出して私に随伴させて下さい。では、早速始めましょう。あっ!各リーダーと朝倉さんは残ってください」


この三人とうちのメンバーにだけは、自分の見解をもう少し話しておこうと思う。


「すみません、まだ、確定ではないんで小声で話します。このクエスト、なんか、人為的な何かを感じるんです」


それを聞いた朝倉が、何か思い当たるのか小さく手を上げる。


「実は、通信が途切れる前、雑音交じりだったんですが『なんだこれは?』と最後に聞こえた様に思います。普通の瘴気がらみの反応では無かったのかもしれません」


「なるほど。もし、人為的な何かだった場合は人の襲撃も想定にいれておいた方がいいかもですね。柚子はその辺りも含めて副局長室に直接報告しておいて。あと、ここの通信が傍受されてる可能性もあるので、念の為ドローンを経由させた傍受されにくい短距離通信も用意してください。で、その通信はここの面子だけで共有しましょう。そして、万が一私に何かあった場合は必ず即時撤退をお願いします。では、始めましょう!」


俺も準備を始める。出発する前、柚子に頼んでおいた装備を身に着けていると弥生さんが隣にきて耳元ではなす。


「なかなかの采配じゃないか。さすがだね」


「いやぁ、なんとなくですよ」


「ひょっとして、この中に裏切り者が居る可能性もあるんかね?」


「いや、それは無いと思います。皆の表情からも明らかに想定外の事で戸惑ってる感じでしたから」


「あのー・・、一真さんちょっといいですか?」


そこへ、柚子が何か言いたげな顔で小さく手をあげながらこちらに来る。俺と弥生さんが柚子の方を向く。


「実はですね。先ほど、斎藤リーダーと連絡が途切れた時間帯と同じだったと思うんだけど、北西の方角で一瞬何かが弾けたような光が見えたんです」


俺はその情報に言い知れぬものを感じた。


「防弾チョッキってたしかあったよね?」


「はい。一応積んでます」


「そいつを2着用意しておいて」


「はい!」


柚子が足早で車両に戻る。弥生が俺を見る。


「対人戦もあるってこったね」


「ですね。多分、確定だと思います」


「しかし、一真は傭兵で対人経験もあるんだろうけど。他は対人戦は未経験だと思う」


「そこは、『対人経験』が豊富な弥生さんの出番ってことで」


俺は弥生に皮肉っぽく言う。多分彼女は喧嘩なれはしてるとは思う。


「はん!殴り合いと撃ち合いじゃ全然違うと思うけどね」


「銃撃戦はないと思います。もし、本気で殺すつもりなら、もうやられてます。狙いがもう一つ分からないですけどね。でも、現地に行けば何かつかめるとは思います。なので、警戒はしっかりとお願いします」


「わかったよ」

(ほんと、いざって時は心強いね・・・)


「えっ?何か?」


「なんでもないよ。さて、ドローンの支度しないと!」


「弥生さん!あと、対人用に煙幕と催涙弾・・はさすがに無いか・・」


「あるよ!」


「えっ?!」


「斎藤となんかあった時の為に用意しといたのがあるのさ」


「あはははは」


「ははははは」


俺は弥生さんと一緒に空笑いを交わした。


「これも良かったら持っていって」


弥生が笑いながら俺にナイフを4本渡す。投げるタイプで短い刃先のナイフだった。


「弥生さん・・・まさかこれも斎藤に??」


「ははは!まさか。さすがに普通の護身用だよ。一真なら使えるだろ?」


「あ・・ああ・・多分」


弥生さんの認識を少し修正した方が良さそうだ。そう思いながら俺は再出撃の準備をする。



・・・次回『襲撃』

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