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八咫の鴉  作者: 蓬莱さん
33/35

33話 メカニック



   ーー 柚子視点・回帰 ーー



私の名前は神原柚子。神原家五人兄妹の長女。神原家は某流の分家筋で家格的には低い。鴉としての力はある程度実力主義なんだけど・・。それでも出自で評価されることも多い、黒羽学園でも派閥やグループは存在する。もちろん、実力があれば認められ出自で冷遇されることはない、逆に自派閥に取り込もうとする動きをする。逆に実力も家柄もない人間は冷遇されることはある。私の場合はそうだった。神原家は某流の中でも探知能力と分析力が高い人を多く輩出してきた。そのお陰で本家筋に重宝されていた。本家は奥の院のと繋がりも深く、家柄を重んじるところがあったけど、神原家の能力は認められていた。

しかし、祖父の代から総じて皆能力が低く疎んじられるようになった。私も漏れることなく探知能力は皆無でマナ適正もあまり高くなかった。でも、かろうじて学園に入る事は出来て両親は凄く喜んでくれた。

私は機械いじりがとても好きなのもあり、能力が低くてもチームでは重宝されると思いメカニックを選んだ。それしかなかったとも言うけど。でも、元々メカニック志望は非常に多く、マナ適正の低いメカニックは殆ど見向きもされない。三条さんの様な天才で突出した能力でもなければ卒業出来たところで入れるチームはほとんどない。彼女は天才メカニックだけど、天才エンジニアでもあり、最近ではメカトロニクサーとも言うらしい。私はそんな人に一度だけ研究課題を見てもらった事が有り、その時凄く褒めてもらった事が凄く嬉しかった。けど、私にそんな選択肢は初めからなく、本家筋からも声をかけられることなく劣等生のレッテルが貼られたまま居場所はどこにもなく学園生活を過ごしていた。

高等科2年になった時、弟の優弥が黒羽学園に入ってきた。弟はマナ適正も高く探知能力も優れていて本家筋からも喜ばれ早々に派閥に入るよう誘われていた。

なのに、彼は断った。私と同じがいいと・・・。何度説明してもガンとして弟は譲らなかった。

しかも、私と同じメカニック志望。

私は高等科3年に上がった時、残り一年を残して学園を去ることにした。

たいした荷物も持たず寮を夜逃げ同然で出てきてしまい、両親に合わせる顔もなかったから家に帰らず、一時バイトをしながらネットカフェ生活を始めた。

そんな生活を初めて2週間ほどが経った頃、バイト先に父が突然現れた。私は心臓が高鳴り何も言えずただ立ち尽くすしかなかった。そんな私に父は何も聴かず一言『さ、家に帰ろう』とだけ言って私を車に乗せる。父がバイト先のオーナーに何度も頭を下げているのを見て高鳴っていた心臓が張り裂けそうになる。帰り道車の中でも父は何も語らなかった。家に着くと、玄関の前で母が待っていた。母は『おかえり』とだけ言って私を抱きしめてくれた。その瞬間今まで綯い交ぜだった感情が爆発し大声をあげて泣き崩れた。

家に帰った次の日、榊さんがうちに来た。榊さんは両親の昔からの知り合いで私の話を聞いた榊さんが副局長と学園理事長の所に両親と一緒に談判しに行ってくれた。結果、学園には在籍したまま調査隊員として実地研修を受ける扱いにしてくれた。今考えると、よくそんな無茶が通ったものだ思う。それでも、私は両親と榊さんから救ってもらえた。両親は『そんな事あたりまえでしょ』とサラッと言われてしまったけど、すごく嬉しかった。

そして、晴れて第17調査隊のメカニックになり、大切に思える仲間とも出会い新しい居場所を見つけることができた。


ところが・・・。あの事件が起こる、ランクオーバー。榊さんは重症を負い、私たちは辛うじて軽傷だったけど一時入院をすることに。両親が弟の優弥を連れて見舞いに来てくれて、戒厳令が敷かれてる事も知らず、ついついその時の事を話してしまい後でかなり叱られた。でも、この事件で色々と思い知らされた。ふとした時にあの時の事を思い出し、言い知れぬ恐怖が込み上げてきて手が震え何もできなくなる。

みんなが無事に退院した後すぐに私たちは人探しのクエストを半強制的にさせらる。こんな状況でできるはずもないとか考える余裕もなく、無我夢中で探すことになった。

無事見つける事が出来たその帰り、ふと気づくとあの時の恐怖心が薄れている自分が居た。

少し冷静になれた私はあまり使っていなかった武器を調整し鍛錬を再開した。自分もイザという時戦えるようになりたい。もうあんな思いをするのは嫌だから、もう何かから逃げ出すのは嫌だから。他の3人も私と同じ思いなのか、それぞれ自分にできる事をやり始めた。

そんな気持ちも日が経つにつれて、この努力も無駄になるんじゃないかと空しくなる。私たちの置かれてる状況は変わらないから。玲は前衛でもトップ下の位置でガード。トップ上の前衛を欠いた、たった4人の私達では隊の維持は難しい。第17調査隊の解散は間近にまできて、私はまた居場所を無くしてしまうのかと恐ろしい日々を送っていると。

そんなある日、巨大な地震が関東を襲い震源地は学園の近くだった。その日、優弥は自宅に戻り、無事の連絡があった。人的被害は少ないけど学園はかなり深刻な状況だという事と、古き神器が目覚め新しい主が出現したと言う。その神器の力で危機は免れたとも。でも、優弥の話の大半は別の事だった。その最も興奮して話してくれたのが前回私たちが人探しした人物で、彼は学園に入学すると優弥と同じ学年に編入された。彼の話をする時の優弥口調やトーンは今まで感じた事がなく、そっちの方がビックリして、落ち込んでいた気持ちが少し楽になった。少し不謹慎だけど。


翌日、私たちに緊急の調査が舞い込む。本部調査隊総出で学園周辺の合同調査。猫の手も借りたいやつだけど、資金が底を尽いていた私達には少し寿命が延びるだけでも助かった。

そんな一時の安堵も束の間、調査中に『この調査を最後にいよいよ私達第17調査隊が解体されるだろう』と噂が耳に入ってきた。

調査も終わり帰還しようとしていた時、小日向さんに理事長室に連れて行かれ、新入隊の隊員を突然紹介された。

その人物こそ草薙一真さんだった。



そして、今私は新しいクエストで茶臼岳中腹の仮設基地に合同捜索で来ていて、弥生さんと共に二機あるドローンのもう一つを操作している。

操作を一旦AIに任せて、さっき一真さんが言っていた新型の疑似神器の用意をしている。彼の感はきっとあたると思う。それに、あの女クセの最悪な斎藤が指揮じゃあ、何かあった時間違いなく大変な事になると思う。だからできる事はしておかないと。で、この新型。実はかなりヤバイやつで、量産タイプの新型じゃなく、試作タイプの新型だった。そんな代物がここにある。本来ならAランク以上の有望なチームに回るはずなんだよ。

でも、私の奥に潜んでいた好奇心が心を震わせる。しかも、このシステムは私が昔三条さんに見てもらったのが形になってる。こいつを弄れるなんて最高に幸せ。こいつの調整を美甘ちゃんと一緒にする為にスペックを見せる。見せながら気になってた事を聞いてみた。


「ねぇ?美甘ちゃん。あのアリス使った時さぁ、一真さんに結構本気でやったでしょ?」


「・・・今度は!ぜったいに泣かす!」


「いや、そうじゃなくね。あれはちょっとどうかな?って思って」


「・・・」


「美甘ちゃん、目泳いでるよ??」


「だって・・・」


「もう一真さんは同じチームの仲間なんだから。今度ちゃんと一緒に謝ろ」


「うん・・・。・・・でも、アリス越えた」


「そうだよね、アリスも凄いと思ったけど。それをいきなりで制御しちゃうんだもんね」


「・・・」


「私さぁ、あの時ね、今度はダメかもってちょっと思ったんだよねぇ。でも、なんとかなって。無事みんな生きて帰ってこれて。思ったんだ。なんか一真さんやみんなと一緒なら、まだまだやれそうな気がして」


「・・・うん」


「だから、仲良くやろうね」


「がんばる・・」


そして、改めて二人で新型神器を見る。こいつの凄いところは、一瞬だけ神器解放が使えること。前回のクエストの時、一真さんのあの動き、あれは間違いなく神器解放の一種だと思う。普通の疑似神器をカスタマイズした程度じゃあすぐに壊れてしまう。でも、この新型なら美甘ちゃんのシステムと一真さんの動きにも、なんとか耐えられると思う。でも、システムと神器を正しくリンクさせて、ちゃんと段階を踏ませないと解放を成立させられない。


「さて、この新型の調整がんばってやってみようか?」


「うん!」


美甘ちゃんがいつもの飴玉を口に咥える。凄くやる気をだしてくれたみたい。


「ただ、ひとつ気になったのが、使用者がこれに耐えれるかどうか。前回はなんとかなったけど・・・。大丈夫かな一真さん。これ完全に被験者にされてるっぽいよね。あっ!!私達特戦隊が実験部隊なのかも?」

なんだろう、『いまさら?』って声が遥か向こうの方から聞こえてくるような・・。

でも、なんか笑える。こんな出来の悪かったメカニックの私が、こうやって新型を触れるなんて、きっと一真さんのお陰なんだろうな・・。いや、みんなのお陰だね。


私は美甘ちゃんと新型の調整を始める。





・・・次回『罠』

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