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八咫の鴉  作者: 蓬莱さん
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32話 合同捜索




一真に握手を求められた斎藤はキョトンとした顔をしていたが、すぐ我に戻り自分を取り繕って握手を返した。



「あ、ああ。え、と君は・・?」


「斎藤先輩!この度、新たに特戦隊のリーダーになりました新人の草薙です」


「あ、ああ。そうか・・、君が。よ、よろしく頼む」


「改めてよろしくお願いします!ご高名な先輩とクエストを共にできてとても嬉しいです!」


「そ、そうか。その殊勝な態度は、な、なかなかだな・・・」


「ありがとうございます!先輩から色々と勉強させていただきます!では、早々に準備を済ませますので、一旦これで失礼させていただきます!!」


「あ、ああ。そ、そうしたまえ。では・・のちほど」


斎藤は一真の勢いに気おされたまま自分のチームの元へ戻っていった。一真はみんなに『ささ、とっとと準備しようか』と、みんなに行動を促す。

その一真に弥生が耳もで『ありがとうな』と囁く。一真は左手を軽く上げて横に振り『はいはい』とジェスチャーをした。そんなやり取りを横目で見ていた他のチームの面々も、そそくさと準備を再開する。

そして、一通り準備ができた頃、全てのチームに召集がかかった。


斎藤とそのチームのメンバーは俺達の前に並びこちらを向いて立っている。俺達のチームはCランクチーム二つと共に斎藤らの向かいに並んで立つ。さらに、俺達の後ろには山岳救助隊に消防隊と警察隊が並んでいる。弥生はその斎藤のメンバーを見回すと小さな声で言う独り言を言う『知らない面子ばかりだね』耳にした俺はチラッと弥生の顔を見る。彼女は苦虫を噛むような顔で舌打ちをした。


斎藤が威勢よく声を張り上げる。


「これより、合同捜索のブリーフィングを始める!私が今回の捜索の指揮を取る、Aクラス目前であるBクラス鴉の斎藤だ。初めに、私がここにいる以上君たちの安全は保障されていると思ってくれていい。ただし、必ず私の指示に従ってもらうのが絶対条件だ。そこは間違えないように。しかし、今回の暫定危険度はCランク。まず大丈夫だと思われる。では、まずは状況説明から始める」


行方不明な隊員は6名。昨晩、調査を開始すると報告があった、少し経った時間近くにいた常駐の山岳救助隊のメンバーの数人が山頂に向かってはやしの中に入っいくのを見かけたのを最後に消息を絶っている。彼らの機材は一部が稼働中で簡易装備もそのまま残っていたそうだ。調査自体も始まったばかりで、瘴気の発生源も特定されておらず、忽然と姿を消したとしか言いようがない状況のようだ。



その後、役割分担があり、Cチームの一つは車両のデータ収集、もう一つのCチームは俺達と共に瘴気の発生源の調査をする事になった。発生源の特定ができたところで、全員での捜索に切り替えるようだ。で、斎藤のチームは我々の報告まで何もせず待機するようだ。

あれだ、下働きは俺達に任せて高みの見物みたいだな。どうせ、最終的に美味しいとこだけ持っていくつもりなんだろう。

他のみんなも、同じ考えらしく不満の顔を浮かべながらも迅速な行動をしている。

ま、別に成果を持っていってもらっても全然問題ないんだけどね。成果を重ねて目立つのは本意じゃない。いいとこはドンドン持っていってくれたらいい。今回のクエストで俺の考えは先ほど作業をしながらみんなには伝えてある。何事もなく無事穏便に終わってくれたら一番いい。


と、思いながら、発生源らしき個所に飛ばしたドローンの映像と数値をモニターで美甘と確認していると、厄介事が向こうからやってきた。

機材のチェックをしている玲の所に斎藤が近づいてくる。


「君、なかなか可愛いよね?どう?こんなチームはとっとと抜けて有望なうちに来ないかい?もううちは枠が少ないのだけど、君なら特別に迎えてあげてもいいんだよ」

と、言いながら玲の肩を斎藤が触る。すると、さきほどまでドローンの操縦をしていた弥生がいつの間にか柚子に操縦器を渡していて、斎藤の手を払いのける。


バシッ!!


「やめなっ!!また殴られたいのかい?」


「弥生くん。この前は君を一応女性だと思って手を上げないで我慢してあげたのを解ってないよだね。紳士な僕でも、狂暴化した君を男として扱って相手をしてあげてもいいんだよ。でもね、しょせんCランクの君がAランク目前の僕に勝てると思ってるのかい?傲慢にも程があるだろう。それに君のそんな態度では、もしランクオーバーが起きても僕は助けたりしないよ?わきまえたまえ」


斎藤が弥生を邪魔だとばかりにどかそうと手を出す。しかし、弥生はその手をまた払いのける。


「そうか・・。そんな君の態度ではもしランクオーバーが発生しても私の庇護は受けられないよ」


それでも弥生は玲の前からどこうとはしない。弥生と斎藤の睨み合いが続く。


「僕を怒らせたいようだね。いいだろう、君と僕との力の差を見せつけてあげるとしよ」


そう言うと、斎藤は数歩下がり身構える。弥生も身構えるが額に汗が伝ってるのがわかる、弥生さんはたしかにつ用意ほうだと思うけど、さすがに前衛相手でしかもあんな野郎だけど、戦闘力だけならかなりのものだろう。そんな一触即発な空気の中に向かおうとすると、美甘が俺の裾を引っ張りモニターを指さす。俺はそれを見ると緊急ブザーを指で押す。


ビーーッ!!


その音に皆何事かと驚きこちらに視線が集まる。弥生と斎藤も。


「す、すみません!ボタン間違えちゃいました!発生源の特定ができたので、皆さんと共有します。それぞれの車両で確認とデータの精査をお願いします!!」


俺は大きな声でみんなに叫ぶ。場の空気は上手く壊れてくれた。弥生が玲に『大丈夫か』と声をかけていて、玲が少し涙目になりながら弥生に『ありがとう』と話している。弥生はそんな玲を連れて、こちらに来る。みんなで発生源の確認をしていると、斎藤が大きな声を張り上げて新たな指示を出す。


「我々のチームは発生源を調査しに行く。他のチームの前衛は発生源付近ではなく、ここを中心に周辺をくまなく捜索し行方不明の6人を探せ。残りはこの場で待機!急げ!」


斎藤は少しご機嫌斜めなのか、語尾が先ほどより強い。それに、なんとなくこちらを睨んでいるように感じる。ま、気のせい、気のせい。


斎藤ら複数名は装備の上から灰羽織を纏い、ドローン2機と共に徒歩で発生源に向かう。


細かい指示もなく困ったCクラスの2チームがこちらに来た。まず、お互いどの辺りを捜索するかを決めた。さらに、インカムの周波数と時計を合わせて、斎藤チーム以外のお互いの車両を横づけして、密に連絡と連携をできるようにして緊急事態に備えれるようにした。

向こうの方で斎藤チームの後衛メンツがこちらの動きを横目でみていたけど、誰も何も言いにはこなかった。ま、こっちはこっちでやらしてもらわないとね。

そんなものは無視して、俺はCチームの全員に簡易装備の着用と簡易神器の準備をさせる。俺達も各自装備を着用し、疑似神器もスリープ状態で着装し灰羽織に初めて袖を通す。簡易神器は専用のケースに必要時以外は収納されていて、Bクラス以上が所持する疑似神器はスリープモードでの長時間着装が可能になっている。羽織に袖を通すみんなの顔がほんのりと赤い。弥生だけは感慨深く通した羽織の袖を見つめている。


「それでは、必ず6人を生きて見つけましょう。では、各自行動開始。お願いします!」


俺は玲に号令をかけさせた。その一言で各チーム各々のドローンと明るい光で周囲を照らしながら森に入っていく。


「玲。少し待って」


俺はそう言うと柚子の側に行く。他のチームに気取られないように柚子と美甘の近くに。玲と弥生が当然の様に何事かと俺の言動に耳をむける。


「なんか嫌な予感がするんだ。悪いけど合間に新型疑似神器の用意もしておいてほしい。弥生さんも玲もそのつもりでいてほしい」


「解ったよ。正直こないだから色々と異変がおきてるしね。それに、わたしらはそういうチ-ムなんだろ?副局長んところからクエストが下りてきてる時点で黒だね!みんな気合いれてくよ」


俺の側まできていた弥生がインカムを外して答えると、玲も側まで来ており頷いてくれる。

号令の後に集まったら不信に思われるでしょう。少し汗がでる。一応、柚子に他のチームにも厳重に警戒するよう改めて伝えてもらった。


おれは最後に、山岳救助隊と消防隊と警察隊に最悪いつでも避難できるように準備だけしてもらうように声をかけ、玲と共に暗い森の中へ駆けていく。





・・・次回『メカトロニクス』

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