↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八咫の鴉  作者: 蓬莱さん
31/35

31話 義侠の女傑


 ーー弥生視点ーー


私の名前は立花弥生。私には尊敬する人物が一人だけ居る。それは『鈴木秀』。別名、雑賀衆頭領・雑賀孫市。雑賀孫市は雑賀衆頭領の呼称で紀州雑賀の荘を拠点とす鈴木一族が代々頭領を務めた。この鈴木家はヤタガラスの家系で、常に闇と戦ってきたヤタガラスの中でも有数の一族。系譜は神武天皇に付き従った八咫烏の子孫でもある。ヤタガラスはこれまで、時代が大きく揺れ動く際に起きた、闇と常に戦ってきた。中には、あの源義経の元で最後まで付き従った歴戦の剛の者まで居る。その鎌倉時代からは闇との闘いも一旦落ち着き、ヤタガラスとしての活動より傭兵活動が活発になる。ま、食っていく為に仕方なかったって事だね。

戦国時代、その雑賀衆の頭領だったのが『鈴木秀』。荒くれ者の集まる傭兵集団を率いた女傑だ。

子供の頃、彼女の伝記を読んだ時、魂が震えたよ。元々は兄貴が頭領を継ぐはずだったけど、病弱で戦に出れるほどの体力は無かった。弟もいたけどまだ幼く、仕方なく一時的にと頭領になった。あの信長の居た激流の時代だからね、生き残るために仕方なかった。彼女の生き様は壮絶で、ヤタガラスとして傭兵集団頭領としても、男共を従えて戦場を渡り歩くいた。もちろん、私の祖先は立花宗茂と立花闇千代で闇千代も女傑と言われてたし、過去の日本で『巴御前』や『甲斐姫』が女傑のパイオニアって言われてるけど。彼女の率いた傭兵部隊には女性も沢山居た。傭兵稼業の中に女の集団も加えた、そしてそれを可能にしたのが鉄砲。その最新武器を引っ提げて、女性でも戦場で戦えるのを可能にした。私は彼女こそ女傑の先駆者だと思ってる。

まぁ、当時その辺りの詳しい物語は、きっとまた誰かが語ってくれるだろう。


と。私が尊敬する女傑の話を宙にぶら下げられた車両の中で、一真や後ろの三人に語ってたとこだ。

そんな与太話を一真は食い入るよう聞いてくれた。


でも。なんで、こんな話をこのタイミングにしたかと言うと実は理由がある。

自分の感情を誤魔化す為と勇気をもってみんなに話をしておかないといけない事があったから。けっこう、いま不安な気持ちが沸き起こってる。それがどんな話かというと・・・


「みんなすまないね。ちょっと語っちまったんだけど。好きな話しでもして、自分の気持ちをちょっと誤魔化してたんだよ。実は現地に到着する前にみんなに聞いてほしい話があるんだよ・・・。私が前に不祥事おこして、Bランクチームを抜けてCクラスに落ちたのは知ってると思うけど、その元所属してたチームってのがこれから合流するチームなんだよ。多分、副局長は知っててブッキングしたね、きっと・・・」


「「 えっ! 」」


玲が真っ先に気遣う言葉をかける。

柚子は右手の拳を握りわなわなしている。

美甘は一瞬驚いた顔を見せたが相変わらずゲームをしている。

一真も口を開かず、先ほどから前方の一点を見つめて何やら思案している様に見える。


「何があったのかを、先にみんなに話しておくよ。で、その不祥事ってのは、リーダーの斎藤って奴を思いっきりぶん殴ったからなんだよ」


「「 ええぇぇぇぇっ!! 」」

「でも、何か理由があるんですよね?」


玲が真っ先に聞く


「まあね。元々そのチームのリーダーは別の人だったんだよ、とっても仲間思いの優しい奴で地道に頑張ってたのさ。私はそいつとは学園の同級生で親友だったんだよ、その頃の私は血気盛んで奴とは水と油なのにお互い信頼してたしリーダーとしても認めてた。そんなリーダーと共に必死で頑張って私達はBランクになり、チームも晴れてBクラスになった。丁度その時、奥の院の推挙も後ろ盾もあり、斎藤は鳴り物入りでチームに入ってきた。噂に違わず、確かに実力はずば抜けていた。さらに戦力増強した私たちは結構期待されていて、このまま順風満帆で行くと思われてた矢先、あるクエスト中にリーダーが仲間をかばって怪我をした、その怪我が原因でリーダーは引退することになった。そして、新しくリーダーになったのが斎藤。しかし、そいつは大の女好きでね、沢山の女の子が泣かされた。私はそういうのが大っ嫌いで斎藤とはよく衝突して斎藤には煙たがられるようなった。で、チームに新しく新人が入ってきた。入ってきたのは引退した元リーダーの妹で、兄貴に似てとても真面目で兄貴思いの可愛らしい娘だったんだ。もちろん兄貴から面倒を見る様に頼まれたよ。で、当然の如く斎藤はその娘に目をつけたわけだ。毎回すきを見つけては、しつこく言い寄られたのさ、私も目を見張っていて庇ったのさ。あまりに酷いんで上には奏上してたんだけどね。無のつぶてさ。そんなある日、靡かない彼女に業を煮やした斎藤は私の目を盗んで強引に言い寄った。兄貴の名前をダシに使って無抵抗な状況を作って。私は間一髪見つけた時、その状況を見て頭がぶっ飛び気が付いたら馬乗りになって右に左にと拳を顔面に叩きつけいた。さすがの奴もズボン半分では反撃もできずサンドバック状態だった。で、あとはご想像どおりさ。奴の合意の上でってのが認められて、彼女と私は責任を取って除隊。そして、斎藤はチームリーダーの監督不行き届きで半年の減俸。他のメンバーはお咎めなし。でも、付いていけない面々は抜けていった。今は、斎藤と奥の院の息のかかった連中の集まりってわけだ。私はその後、榊さんに拾ってもらえて、みんなと出会えて幸運だったんだけどね」


後ろで珍しく玲と柚子が怒り心頭で一緒に叫んでいる。


「だから、斎藤はあんたらにも声をかけてくるかもしれないから、先に話しておかないとってね」


「でも・・・。その妹さんはその後どうなったんですか?」


「ああ、あの娘ならその後、副局長のチームに入ったよ。誰にも文句を言わせずね。あの人は凄いよ。で、今じゃあ既にBランクであそこの副局長室で頑張ってる。次の機会に紹介するよ」


「副局長も、やる時はヤルんですね!」


「それ。小日向あたりに聞かれたら、何されるか分かんないからね。口が滑ってもここだけにしときなよ」


後ろでは珍しく、かなり熱い舌戦を玲と柚子がしていた。時折インカムを外したくなる雄たけびが聞こえてきたんで、イヤホンは半分ずらした。そんな間にはいって美甘は終始嫌そうな顔をしてた。それにしても、一真は終始何も話さず、やはり一点を見つめていた。一真はこういう話には全く興味がないのかと思った。


そんなこんなで、私達は現地の仮設ヘリポートに着陸する。到着すると既に他のチームは到着していて、出迎えてくれる。その先頭にはやっぱり、あいつが斎藤が居た。

私たちは車両から降りると横並びに立つ。あれ?一真が居ない?


「本部の皆様方!遅い到着で。はじめまして、私が今回のクエストの指揮を取らせていただきます『斎藤』と申します。以後、よろしく。しかし女性中心でよくBランクに大変でしたでしょう。今回はわたしが指揮をとりますので皆さん大船に乗ったつもりで安心してください」


そう言うと斎藤は私を見て態度を変える


「おっと!これはこれはこれは。立花さんではないですか?相変わらず不機嫌そうな顔で粗暴な容姿ですね・・。しかし、もう」お忘れかもしれませんが、私はあの時、君にかなり迷惑をかけられ散々で、そはそれは色々色と大変でした。それなのに、よくもまあ引退もせずのうのうと続けられるのか不思議なくらいです。が、まあ、私はとても寛大な人間なので、このお嬢さん達の・・・」


美甘を見た後、目をそらして。玲と柚子を見る。

玲と柚子は拳を握りしめていて、美甘はヌボーっと斎藤の顔を目を細くして見ている。

そんなことお構いなしに続ける


「このお二人のお嬢さんを紹介していただけたら。以前のことは別に謝らなくてもいいで・・・」


ガンッ!!!


斎藤が最後まで言い終わる前に、後ろで何か大きな物が落ちる音がした。

そこには、大きな機材を落とした一真が立っていた。


「いやぁ、すみません!自分新人なんで何分扱い方がまだよくわかってなくて。あっ!私は草薙一真と言います。今回はよろしくお願いします。大・先・輩!」


一真が私たちの前に進み出て、ニコニコと取り繕った笑顔で斎藤に握手を求めた。





・・・次回『合同捜索』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。