29話 ひと時の休息は・・
・・・いつものように終わりを告げる。
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《 第1特戦隊執務室 》
俺達はここ数日静かに暮らせていたと思う。今朝も某有名ファーストフードのモーニングを食べて少しまったりした後、行動に移る。
で、みんなそれぞれのここ数日はと言うと・・・
弥生さんは、車両外装に対瘴気コーティングと足回りの強化を整備士の人達と一緒に作業したり。拝領した二機の新型ドローンで格納庫内を飛び回らせて奇声を上げてたらしい。いつかマジで怒られると思う。
玲は各所への挨拶回りと各種書類の作成等の仕事をしてくれている。最近の口癖は『忙しい!忙しい!』だ。たまに、電池が切れた様に天井を見て小声で何かブツブツと言っているが、俺には理解不能だ。
柚子は新型疑似神器のマニュアルに目を通したり新型ガジェットを考案中。『特戦隊』と言う名称が彼女の琴線に触れたらしく、よく『変形』や『変身』と言いながら作業している。俺達は戦隊物ではないよ。
美甘は新型のハイスペックPCを使ってゲームをしている。FPSは性能が物を言うらしい。以前は反応速度が遅くてご不満だったようだ。しかし、たまに弥生や柚子に無理やり引っ張り回され嫌な顔をしている。
そんなこんなで彼女達は彼女達らしくご満悦な日々を過ごしている。
のだが、これを静かに過ごすと表現してよいものなのか疑問に感じる。全く、こんなにノンビリと過ごしていいものなのかと思う。
ん??で、俺はと言うと。
自慢ではないが・・。ひたすら漫画を読み漁っている!!
こんな素晴らしい文化は他の国ではなかなか無い。これを読まずして何が文化か、そして日本の文化を語る事は出来ない。し・か・も・だ!中古書店に行けば超激安でこれまでの名作が山ほど手に入る。
そう、俺は焼肉店の帰り道に某有名中古書店に寄った、ここは天国なのかと勘違いをしてしまうほど大量の漫画が置いてあり、まずはい一つ面白そうなのをまとめ買いした。今では長編漫画を3っは読破している。もう、これは素晴らしいの一言に尽きる。これさえ・・これさえあれば、俺は生涯無為に生活を送ることができる。あー、この幸せな時間がいつまでも続きますように・・・。
コンコンコン
ノックする音が聞こえた?
柚子がバタバタと部屋の扉を開ける。小日向さんが立っていた。
はい・・終わりました・・。
「呼び出しをしても誰も端末を見ていないようなので直接来ました!姫様がお呼びです!!至急副局長室へ出頭して下さい!!」
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《 副局長室 》
全員直立不動で咲宮耶の前に立っている。しかし、何故か俺だけは正座で座らされているのには納得がいかない。
そう思っていると、小日向さから鋭い視線が飛んでくる。彼女が入ってきた時に、ソファに寝そべって、ポテト片手に漫画を読んでいただけじゃないですか?まぁ、机の上には少々乱雑に本が置かれていたのは認めますが。視線がさらに鋭くなっているのは気のせいでしょうか?あれか?彼女は人の心を読めるエスパーなんだろうか?
咲宮耶はそんな俺を机から身を乗り出してから、俺を見下ろして微笑んでいる。
そして彼女は一旦咳払いをしてから席に戻る。
「おほん。この数日、とても充実した日々を送ってくれたようで、とても嬉しく思います。皆さんの先日のクエストでの疲れもしっかりと癒えたように思います。そ・こ・で!そんな意気軒高なあなた達にクエストを発行します」
小日向がクエストの説明をする。
「先日の陣馬山でのクエスト完了の翌日、茶臼岳で微弱な地震がありました。それほど大きな地震ではないのですが、直後。微量な瘴気が観測されました。そこで、中部方面から調査班が派遣されたのですが、今朝の提示報告がなく、昨晩の通信を最後に消息を絶ったと判断。現地に調査班捜索の為複数のBランク部隊を緊急派遣しました。瘴気濃度の上昇は微弱ですが上がっていますが、まだ危険域には達していません。そこで、本部からも応援を派遣することにしました。最後の連絡から既に14時間ほどしか経っていませんが、私の判断では事態はかなり切迫していると思われます。ですので迅速な行動が必要です。今回現地にはヘリを使って急行してもらいます。既に車両はオスプレイにスリング輸送の準備を始めてもらっています。他、詳細はこちらのレポートに目を通しておいてください。最後に今回は合同捜索になるので、現地部隊の指示を優先してもらいます。」
玲が小日向さんからレポートを受け取る。そして、今度は咲宮耶が口を開く。
「瘴気濃度は微増、また音信普通となってまだ時間経過も短く、危険度はBランクと判定されました。ですので、現時点でのAランクの出動はありません。なので、思い切った動員はできません。私は今回の件、ランクオーバーの危険度が高いと判断しました。ですから、あなた達にお願いします。最後に今回は合同捜索になるのですが、Bランク以下になるので指揮系統的には現地部隊の指示を優先してもらいます。以上です!」
「「 了解しました! 」」
足の痺れた俺を置き去りにしてみんなが部屋を出ていく。
『よっこらしょっ!』と立ち上がる俺に咲宮耶が言う。
「今回は他チームとの合同です。特に奥の院の息のかかった人たちも多くいます。あまり派手にやらないでほしい、というのが本音です。ですが、人命優先。必要と判断した時は独自行動も許可します。あなたにまかせます」
「わかった・・」
俺は咲宮耶に背中を向け足を引きずりながら右手を挙げて退室する
俺は少し遅れて部屋に戻り、みんなとレポートを読んで確認する。調査班の調査個所は茶臼岳中腹。現地に到着したチームは早速、入山規制と下山指示を出し山岳救助隊と連携して避難サポートをしていた。
下山者と山小屋駐在員全員の避難確認が終わり本格的な調査を開始。それが最後の定時連絡だった。調査班はBランク間近の優秀なチームで率いるリーダは既にBクラスの鴉。それなりに戦闘力も高い。
今朝の定期連絡がなかったので衛星で確認したところ、車両はそのまま沼平ヘリポートに停車してあり、車両にも周辺にも調査班の反応がなかった。
現地の山岳救助隊の隊員にも確認してもらったが、神隠しにでもあったような状態だったという。その連絡の直後捜索班が編成される。捜索に派遣されたのはBランクが一つとCランクが二つ。俺達はこのヘリポートで現地の捜索班と合流し、Bランクの指揮の元捜索に参加する。捜索はドローンを中心に足を使っての捜索が中心となるのが予想されるので、二機ののドローンを用意していく。
俺は柚子に新型の疑似神器を一つ持っていくように頼む。さらにメモ書きを渡す。柚子が不思議な顔をするが、ただの保険だと伝える。柚子はメモを握りしめて、そこに書かれている物と神器を慌てて取りに行く。そのメモには『電磁警棒2本』『ゴム弾銃』『防護盾』が書かれていた。
俺達は諸々の装備を確認してヘリポートへ急ぎ向かう。
ヘリポートでは既にスリングが車両につなげられていて、いつでも発進できる準備が整っていた。
俺達が車両に搭乗すると、後ろの三人が叫ぶ。
「おぉぉぉぉぉぉ!!」
あの美甘でさえ、小声で叫んでいた。何事かと後ろのモニターに繋ぐ。玲は保管庫を指さし、柚子は変な踊りを踊っていて、美甘は両手を天に突き上げていた。どうしたのかと尋ねると、玲が声を震わせながら言う。
「ほ、保管庫の中に五人分の灰色の羽織が、は、はいっていますっ!」
かなり興奮していた。
「そりゃそうだろう。何をいまさら」
弥生がインカムをつけて言う。が、『あっ!』とした顔をする。
「そうか。あんた達、正式な羽織は初めてだったね」
どうやら、自分たちの灰羽織を目にして、興奮していたようだ。
『こちらオスプレイ・K01。離陸します』
無線から離陸合図の声がして車両が『ガクン』と持ち上げられる。
と、同時に後ろから悲鳴が聞こえる。
歓喜の舞をする前に、ちゃんとシートベルトはしないと。
少しの間、後ろの悲鳴は続いた。
俺と弥生さんは笑いをこらえるのに精いっぱいだった
・・・『神楽耶』




