28話 自己開示
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《 第1特戦隊執務室 》
俺達は副局長室からこの部屋に戻ってくると。扉の表札が「第17調査隊分室」から「第1特戦隊執務室」に変わっていた。
中に入ると外の表札以外何も変わっていなかった。そりゃそうだろうな。逆にかわってたら、それこそドッキリを疑うくらい怖いな。
各々、突然の辞令と昇格に戸惑いながらも興奮している。俺はそれを冷静になだめて、まず自分達の椅子に腰を落ち着かせてもらう。腰掛けると、みんなはマジマジと俺の言葉を待つ。
「いやぁ、大変な事になったねー。ハハ・・。実はこうなるんじゃないかと思ってたんだよね」
弥生さん以外は驚いた顔をする。そして、俺は昇格と特戦隊新設のいきさつ、理事長室で彼女達と顔合わせした後の内容は包み隠さず話した。奥の院の事、ランクオーバーの事、何故俺たちなのかを。そして、それがどれだけ危険な事なのかも。AランクやSクラスで対処しなければ危険なことを、あえて俺たちにさせる。常に死線を乗り越えなければいけないことを。
さすがに、みんな、神妙に聞いている。感づいていた弥生さんも驚きの顔をしていた。
俺は、話を続ける。
その内容は俺自身のこと、学園記録以外の話を。みんな、固唾を飲む。ゴクリと聞こえそうなくらいで、少し笑える。
俺が、神楽耶事件の唯一の生き残りである事、元ヤタガラス草薙龍蔵の孫でヤタガラスを見限った祖父に連れられ海外で育った事、日本で過ごしていた子供の頃の記憶が少ない事、咲宮耶とは子供の頃に知り合っている事、祖父から力の使い方は学んでいた事。
結構長話をした。
「細かい事はおいおい話はするけど、この位にしておくよ。みんな、すまない。本当は黙っておくように言われていたんだけど、ちゃんと話しておかないとって思って。黙っていてすまない」
みんな、首を横に振る。そして、やっぱり弥生が口を開く
「なかなかヘビーな話だね。でも、話してくれてありがとう。知らないと知ってるでは全然違うから。問題はこの話を聞いて、これから私たちがそれぞれどうするか?どうしたいか?だね。既に辞令と昇級までされちまってる以上否応なくって感じだけど。これは命にかかわることだかね」
他の3人が弥生の顔を見て俯いたり空を見上げたり、飴をなめだしたりしてる、紙包みを剥がす指はぎこちないが。
弥生が話を続ける。
「私はさぁ・・。ヤタガラスになった時から死は覚悟していた。つもりだった・・。榊さんがあーなるまでは。あの時、初めて死の恐怖を味わった。正直怖くなったんだよ。辞める事も考えた。でも・・・。それ以上に悔しかった。みんなおんなじだろう?だからここにまだ居てる。それに、ランクが上がってクエストもある程度選べるようになったし。装備も一新されて最新装備までまわってきた。副局長肝入りってことである程度融通もきく。願ったりかなったりさ」
皆が頷く
「そして、決定的に違うのは、一真が居る」
皆が一真を見る
「あのポテンシャルは異常だよ。しかも、武神・草薙龍蔵の孫で薫陶まで受けてる」
玲が口を開く
「はい。私も側に居たからよくわかります」
柚子も口を開く
「これから疑似神器のチューンのしがいがあります。にひひ・・」
珍しく美甘が口を開く
「アリスであの世に行かなかった・・」
ぷくっとほっぺを膨らませる。
「ははは。美甘が怒ってるのを初めて見たよ。あれが一番驚いたかもだね。一真の実力は間違いないさ。それに、私らだって負けちゃいないよ」
みんなが弥生を見て改めて頷く。
「私らは変われる。変わらなきゃいけない。これで決まりだね。あたしらはあんたと一緒にこれからもやらしてもらうよ。いいねみんな。で、あんたはどうなんだい?」
俺は・・・
「俺は正直わからん。皆ほど高尚な気持ちがあるわけじゃあない、なんなら一生サボッてのんびり過ごしたい。たぶんそれは今後も変わらない。でも・・・、何か心に引っかかるものがあるのは確かだし、それが何かわからない、知りたいとは思うけど無理に知りたいとも思わない。でも、身近な人が死ぬのを見るのだけは絶対に嫌だってのは今も昔も変わらない。それだけはハッキリ言える。と、今言えるのはこんくらい。それでも良ければ、このままここで、みんなと一緒にやりたいと思う」
「じゃあ!決まりだね」
「あの・・。俺かなり怠け者だよ?かなりカミングアウトしたつもりなんだけど」
「何言ってるんだい今更だろ?な!リーダー!
「その、リーダーっての変わってくんない?」
「ははは!そりゃ無理ってもんさね。じゃあ、改めてリーダー一言」
弥生が俺の横まで来ると肩をやっぱりバンバンと叩く。
「いてっ!えっと、、じゃあ・・・。片付けおわったら、焼肉でも食いにいきますか!?」
「「 おーーーーー!! 」」
柚子が先頭切って、もうダッシュで片付け始めたのは言うまでもない。
対外的にも内向きにも、俺達がBランクに上がったのはランクオーバーから奇跡の生還をはたした、お情けのご褒美で、扱いはCランクの時とは変わらず、逆に副局長から誰も受けない厄介事なクエストを回されるだけと周知された。本部でもさらに同情の目で見られることになる。
奥の院にはあえて報告もしなかったようだ。奥の院ではAランクは戦力としての対象だけど、Bランク以下は雑兵程度にしか思っていないそうなので何も問題ないそうだ。
この部屋の入り口に人の気配がしていた。盗み聞きなんて趣味の悪い。ま、隠す必要もないけどね。で、皆が片付け始めた途端気配が消えた。様子を見に来ていた誰かだろう。
これも、あまり気にしないことにした。
そして、片付けを慌てて終わらせた俺達はひと時の休息を満喫した。
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《 副局長室 》
咲宮耶に小日向が報告書を渡し話しをしていた。
「特戦隊の扱いについて本部内で名ばかりの部隊だと周知するように情報を流しました。いくつかの、Aチームは訝し気な反応をしましたが、概ねこちらの思惑通りに進んでいます」
「そう。それであの後彼らは?」
「片付けを終えて、焼肉を食べに行くそうです。全く暢気なものです」
「まぁ、そう言わず。それが彼らの良いところですし。私たちも助かっているのですから」
「ですね。それより、あの草薙一真の戦闘データをご覧ください」
さらに、小日向が別の報告書を咲宮耶に渡す。
「これは異常です。撃破スコアも姫様の出されたスコアに近い数値です。さらに、領域殲滅速度も近接クラスのそれを遥かに凌駕しています」
「私のは領域浄化です。それに神器を使用していますので撃破スコアが出せて当然です。それを近接のみで叩き出すのですから。しかも、美甘のアリスシステムを完全に超えている。あの子もかなりショックだったでしょうね」
咲宮耶が微笑む。
「アリスシステムはあの子の完全オリジナルの神器OS、通常の疑似神器の為のものではなく、オリジナル神器を想定したプログラムなので。すぐにオーバーロードするはず。なのに、あえてあの子は使った。大事なあの局面で。例え頭にきていたとしても、あんな無茶な選択はすはずないのだけど。心のどこかで信頼の芽がでてきたのかもしれないわね」
「はい。他の3人も過去の実力以上の結果を出せています。実力だけなら間違いなくAランクチームと言われても遜色ないかと」
「貴方がそこまで言うのも珍しいわね」
咲宮耶が少し驚いた顔で小日向を見る。
「あんな不真面目な男、私は嫌いです。ですが、実力は認めます。他の4人の力も引き出せていると思われます」
「そうね、私の人選に間違いは無かった」
(そうよね。神楽耶ねえさん・・・)
「ところで、彼女はまだ目覚めないのかしら?」
「まだのようです。三条様が張り付いておられます」
「そう・・。」
咲宮耶が少し俯き答える。すると、突然他の秘書官が慌てて二人の側へ来る。
「報告です!南アルプス茶臼岳の中腹で微弱な地震が発生しました。現在、衛星から瘴気濃度を計測しています」
室内に居る全員に緊張が走る。そして続けざまに報告が入る。
「姫様!茶臼岳の震源域に微量な濃度の瘴気を検知しました!」
「ここからでは少し遠いわね。東海分室の調査隊にクエストを発行して」
今度は南アルプス、何か作為的な意図を感じるわね。咲宮耶は小日向の顔を見ながら思案する。
また、彼ら特戦隊にすぐ出動してもらうことになるわね・・・
・・・次回『ひと時の休息はいつものように・・』仮題




