27話 新設・特戦隊
最初のヘリが到着した後、時間をおかず次々と後続のヘリが到着した。到着したチームに上位ランクは見当たらなかった。、殆どが事後処理を担当するCクラスチーム、自衛隊や消防の面々ばかりだった。どうやら、本部は本気で俺たちにランクオーバーの対処をさせるつもりのようだ。
俺たちは早々に要救助者を預けると、ヘリは都内の病院へ搬送していった。父親と母親が何度も何度も感謝の言葉をくれた。あの女の子の名前は美鈴ちゃんだったか。その弟君かな、自分の大事にしていたおもちゃのぬいぐるみを玲に渡していた。かなり汚れていたけど、玲は『宝物にするね』と約束していた。
そして、事後処理と状況説明などなど、解放されたのはもう明け方近くだった。俺がやらかした放火については消防が必死に消火活動をしてくれたお陰で、山火事に至る事はなかった。
しかし、俺が使用したのは焼夷弾と言っても非常に小型のもので、発煙筒に毛が生えた程度のもの、あんなに燃え広がるとは思わなかった。何か燃え広がる原因でもあったんだろうか。
ま、その辺は科学班が調べてくれるだろう。今はとにかくゆっくり休みたい。美甘の、あのバカげたブーストのお陰で今にも体がバラバラになりそうだ。
帰りに寄る予定だった温泉に先ほど柚子が連絡したら、早朝にも関わらず対応してくれた。事情を説明したら特別に朝食も用意してくれるそうで非常に楽しみだ。
温泉に浸かって、美味い朝食を食べれば、心も体も癒されるだろう。
なので、弥生さんには安全重視で向かってもらういたい。弥生さん曰く、そんなに飛ばせないそうだ。車両にかなり無理をさせたらしく、足回りのダメージが結構ヤバイらしい。魍魎鬼たちにかなりご立腹だった。
それは、あなたの運転が原因じゃなかろうか。
でも、あえて口に出すほどバカじゃない。
俺たちは後の事を任せて。現場を後にした。
道中、車両の中は皆疲れがピークな様で殆ど無口だった。弥生さんもお疲れの様で安全運転、おとなしいだけかな?
で、約30分ほどで無事何事もなく温泉に到着した。
到着すると、なんと女将さんが入り口で出迎えてくれた。
この、温泉は山あいに佇む静かな一軒宿で登山者やハイキング等の休養地としても利用者も多いらしい。俺たちは早朝から対応してくれた事へのお礼を言うと早々に湯殿へ向かった。泉質も良く、檜の香りと窓からの景色も最高。さらに、川のせせらぎを聞きながらまったりしていると、徹夜で体がバラバラになるまで働いた心と体に疲労回復をもたらしてくれる。
やっぱり温泉はいいな・・・
俺はじっくり浸かった後、用意してくれた部屋に案内される。案の定、部屋に到着は一番だった。
部屋には既に朝食の準備がされていた。もう感謝のきもちでいっぱいになる。
俺が腰を落ち着けると女将さんが暖かいお茶を入ながら逆にお礼を言われてしまった。
ここに連絡をした時、俺たちの素性と事情を話していたんだけど、もし対処が遅れていたらここにも被害があったかもしれない、とのことだった。そして、昨晩は山頂付近で轟音と赤い光が滲んで見え、山頂に上がった家族とも連絡がとれず、ヘリの音は激しく聞こえると、何が起こっているのか解らず不安な一夜を過ごしたらしい。
なんか、俺はもっと申し訳ない気持ちになる。
もう少し詳しい情報を、話せる範囲で女将さんに話し、もう安心してほしいと、改めて伝えた。後日、調査員が聞き取りにくことも重ねて伝えた。
来るのが俺達かと尋ねられたが違うと答えておいた。ま、多分その辺りの仕事はきっと回ってこないだろう。
その後、この山の名前の由来や宿の歴史について色々とおしえてもらった。そうしていると、女性陣が部屋に案内されてきた。
皆、大喜びで席に飛びついた。飛んだのは柚子一人だったけど。女将さんが再び皆に礼をいい退室した。
みな、なんで逆にお礼を言われるのかと不思議な顔をしていたけど。まずは目の前のご馳走を早速頂くことにした。
「「 いただきます! 」」
そして俺は食べながら箸を休めることなく、皆に先ほど女将さんと話したことを説明した。
食べ終わると、みんなそのまま寝てしまった。さすがに俺もウトウトとして一瞬だけ寝てしまった。
目覚めると、弥生が部屋のベランダで禁煙パイプを口に咥えながら、景色を眺めていた。
「ひょっとして、その口に咥えてるの、禁煙してるのか?」
「ああ、これね。情けないかな・・自分の不甲斐なさへの、ちょっとした禊みたいなもんさ」
「そうか・・。弥生さんも結構真面目なんだな」
「やめとくれ。そんなんじゃないさ。私もただ悔しかったんだよ」
「そうか・・・」
「そういや、あんたかなり実力隠してるね。ぼんやりしか覚えてないけど。雪椿の力を解放したのも一真、あんただろ?」
「んー・・。正直自分もまだ解ってないんだ。ただ、色々と話さないといけない事はあるのは確かだから、本部にもどってから、改めてみんなの前で話をするつもりだ」
「そうしとくれ、でないと背中を預けられないからね」
「ああ」
弥生が真剣な顔で俺を見る。それに俺も真剣なまなざしで返す。すると、突然全員の携帯端末から通知音が鳴る。
俺と弥生がその音で顔を見合わせて、そのまま部屋を見ると、三人が寝ぼけた顔で飛び起きる。
そして、弥生が自分の端末を見る。
「はは。とっとと本部に返って来いだってさ。あんたらとっとと顔洗っておいで」
俺たちは、女将さんに礼を言い。きちっと支払いは受け取ってもらい、車両に乗り込み本部への帰路に就く。
本部に到着すると、格納庫で鬼の形相の小日向さんが待っていた。
もう嫌な予感しかないが、全員黙ってついていくと副局長室の前に着く。
やっぱりね。
俺達五人は副局長の前に連行された。
「昔聞きませんでしたか?クエストは報告完了するまでがクエストです」
両手を机の上で組んで俺達を順に見回しながら言う。
全員直立不動でだれも答えない。
「草薙リーダー!よく覚えておいてくださいね」
俺は頭を何度も縦に振る。しかし、ここはやっぱり言わなければと、勇気を振り絞って言う
「いやぁ、本当に大変だったからね。徹夜だったし、ご褒美は必要かと・・・」
他の4人が『よくいった!!』と、期待のまなざしで俺を見る
「で、温泉に入って、美味しい朝食まで頂いて、朝寝までしてきたと・・」
少し沈黙と緊張感が続く。
「はぁ・・。わかりました、それについては問いません」
5人は安堵の笑みを浮かべる
「皆さんお疲れさまでした。そして、ありがとう。今回、完全なランクオーバーのクエストでした。にも拘わらず任務を達成して無事帰還してくれました」
先ほどまでの形相が今度は優しい表情に変わる。
「貴方たち5人、特に4人は2度のランクオーバーを経験し、見事生還しました。あなた達の今後を熟慮しました。結果・・」
小日向が咲宮耶の前にファイルを出す。
「本日この時をもって、第17調査隊を解体します!」
弥生は咲宮耶を睨み、柚子は口が完全に開き、玲は涙を流し、美甘は先ほどまで立って寝ていたのか何が起きたのか理解できずに驚いている。俺は何となく分かっていたんで、目だけ天井を見る。
「そして、新たに副局長直属の部隊を創設します。あなた達をそのまま特戦隊のメンバーとし、リーダーは引き続き草薙一真。サブリーダーは霧島玲。副局長権限にてチームランクはBランク扱いとし、それに伴い全員をBクラスに昇級。灰羽織を纏うことを許可します。これが辞令です」
そう言うと、咲宮耶はファイルから辞令と新たな身分証を全員に渡す。
一真以外の4人は先ほどの表情から一変して、狐につままれた顔をしながら受け取っていたが。一真だけあからさまに嫌そうな顔でなかなか受け取ろうとしなかった。そんな一真に小日向は無理やり胸に叩きつける。咲宮耶は苦笑いしながらも一真に頷いた。
ここに新たな部隊【第1特戦隊】が誕生した。
・・・次回『自己開示』




