24話 異変
一応リーダーは俺なんで、みんなに指示を出す。
「柚子は本部に状況を報告。山頂にヘリを飛ばしてもらってくれ。美甘は瘴気の発生源の特定と魍魎鬼の出現と監視。発生源が洞窟だけなのが知りたい。弥生さんはドローンを使って山頂の状況確認を。俺は山頂へ救助に向かう。玲は・・・」
「私も行きます!」
玲が俺の言葉を遮るように語気を強くして言う。
「いや。玲はサブリーダーだ。いざという時、俺の代わりに撤退の判断をしないと・・・」
「嫌です!私のクラスはガードです。前衛の後ろを守りながら共に進むのが仕事です。それに・・・もう、何もできないのは嫌なんです・・。一緒に行かせてください・・」
強い意思を持ったその瞳は潤んでいた。俺は、その瞳と勢いに負けた。
「・・・わ、わかった」
きっと、前回のランクオーバーの時の事を言ってるんだろう。ここで置いていったら、この子が立ち直る機会はなくなるだろうな。
「俺が『戻れ』と言ったら必ず指示に従う事。それと、頂上まで10分ほどで駆け上がるが、かなりきついぞ。いいか?」
「はい!!大丈夫です!」
「すまないが、柚子は本部への連絡が終わり次第、周辺機器を撤収。いつでも退避できる準備を。一人で大変だが急いで頼む」
玲が柚子に頭を下げる。
「お願いします!」
「大丈夫!大丈夫!これでも私、力持ちですから」
そのやり取りを見て、作業を始めながら弥生が言う
「前回のランクオーバーの時、正直私は死ぬと思ったんだよ。それはみんなも同じだと思う。そして、何もできない自分自身に悔しい思いもした。でも、こうやって生き残って、また同じことをやってる。もうあんな事にならない為に、なんだかんだいって努力したから、ここに居るんだよ」
そう言うと、弥生が改まって、俺の方を向いて姿勢を正す。
「そして、改めて言わしてもらうよ。一真さん、助けてくれてありがとう。私たちに、またこの機会を与えてくれてありがとう」
そう言うと頭を下げる。玲と柚子も頭を同じく下げる。美甘は」モニターを見ながら頭だけチョッコっと下げる。やばい、照れる。こうゆうシチュエーションは一番苦手だ。おれは、どう答えていいか解らず、ハニカム。きっと、めちゃくちゃ気持ち悪い顔になってるだろう。
「さっ!急ぐよ!」
弥生だみんなに発破をかける。おれの側までわざわざ来て、やっぱり肩をバンバン叩く。ちょっと痛いな。
「よ、よし。各自簡易羽織と疑似神器の装備の携行も」
「こ、この子達の出番が来るんですね。いひひひひひ」
柚子の顔が怖い。見なかったことにしよう。と、思ったがそういうわけにはいかなかった。
「この簡易神器はスペックが標準のものに比べてかなりマナ効率が上がっています。ですが、出力は少し抑え気味に扱いやすさを重視してちょうせいしています。一真さん。一真さんのは注文通り棍棒の打突に特化した仕様にして。耐久力は格段に上がっていて制圧力に優れています。玲さんの杖は、結界の強度を上げていますが展開速度が少し遅いです。いつものよりタイムラグがあるので注意してください。弥生さんの長銃は威力を重視していますが速射力がかなり低く次弾までチャージタイムが長いです。ですが、クマ型の魍魎鬼の核を一発で貫通できるはずです。あと、数点オーダー通りの簡易神器を持ち込んでいるので、必要な時は言ってください」
俺は柚子に感謝し、簡易羽織と装備を携行した。背中には緊急用の簡易ザックを背負って、山頂へ向かう。
そして、この場を飛び出していき。俺は駆けながら、インカムでさらに指示を出す。
「各自毎回状況の報告を忘れずに!弥生さんドローンは?」
「もう少しで飛ばせる。けど、バッテリーの予備が少ないから、あとに2時間ほどが限度だと思う」
「本部への報告とヘリ依頼はおわりました。撤収作業はこれからです!」
「・・・」
美甘からの返事が来ない。
「美甘ちゃん?」
柚子が撤収作業の合間で美甘の様子を見に行く。
「えっ?これやばく無い?」
柚子がそう答える。
「やばい。洞窟の上に二つ。瘴気出てる。そこから色々出てきてる」
「頂上にむかってるのか?」
「そうみたいです。二人の反対側なので途中で接敵することはないと思うけど。上の人たちはまずいです」
美甘が頷いているのを見て、言葉数が少ない彼女に変わって答える。
それを聞いて走る速度を上げる。
「玲!付いてこれるか?」
「大丈夫です!」
「すぐにドローン飛ばすよ!」
「頼む。俺たちはまだ5分ほどかかりそうだ」
ドローンは飛び立つと、物凄いスピードで上昇していく。
あっという間に現地に到着すると。今にも魍魎鬼に襲われようとしていて。彼らは、異変を早々に察知したのかテントから逃げ出していた。
「柚子!撤収は後だ、ドローンの操縦を変わって!車両を近くまで持っていく!」
弥生は昼間ドローンを飛ばしながら車両が通れそなところを、ある程度ピッアップしていた。
柚子が車両に飛び乗り操縦を変わると、弥生は運転席へ駆け込み、急発進させる。
美甘は慌ててシートベルトではなく、シートハーネスを付ける。ハーネスをつけていてもシートの上を体が跳ねる様に上下する。
「おうおおよお!まままま!あぶあうぶ」
美甘が何か言おうとしているが、まともな声にならない。
ドローンの映像は揺れながらも、4人を捉えていて、小型の魍魎鬼に崖まで追い詰められていた。
一匹の魍魎鬼が襲い掛かる。が、その一匹は襲うのではなく、一人の服を咥え引きずりながら連れ去っていく。その一匹に従うように数匹が連れだっていき。一瞬でドローンの視界から消える。
『いやぁぁぁっぁぁぁぁ!!!』
悲鳴が響き渡る。女性らしき人物が追いかけようとするが、動きを止められていた。
どうやら、子供が連れ去られたようだ。
その場に残った魍魎鬼数体が、三人を襲おうとする。
そこへ
「目を瞑って!」
玲が遠方からフラッシュグレネードを三人の後方崖側へ走りながら投げる。空中に閃光が放たれ、魍魎鬼が一瞬怯み後退する。そこへ、地を這うように、一真が走り込み魍魎鬼を次から次へと打ち付けていく。
少し遅れて、玲も到着する。
「皆さん大丈夫ですか?」
玲が声をかける。母親らしき人物が名前を叫びながら泣き崩れていて。父親らしき人物が母親ともう一人同じく泣いている男の子を抱きながら座り込んでいる。
「娘が・・娘が・・あああああ」
一真も3人の所へ近づき状況を分析する。子供だけが連れ去られたみたいだ?
その事を、弥生たちに報告する。その返事が来るのを待ちながら、玲に簡易結界を張るよう指示を出し、家族の状態を確認する。
車両を止めた弥生から返事が来る。車両は山頂からはまだ少し離れているが、多少開けた場所まできたみたいだ。
おれは、弥生達にもう一度状況を報告する。
「連れ去られるなんて、そんな話、私は聞いたことないね」
弥生が即答し、残り二人も聞いたことはないらしい。ともかく、早く救助に行かなければ。しかし、どこに連れ去られたのか。
と、思っていると結界を張ろうとしていた玲が声を上げる。
「敵襲です!!」
玲は結界を張るのをやめて、一真の近くに戻る。すると、インカムから美甘の大きな声が聞こえる。
「15!!」
俺は三人を玲に預け前に進み出て身構える。後ろで玲が照明弾を打ち上げる。
その、光に照らされて、小型魍魎鬼の群れが次から次へと襲い掛かってくる。俺はそれらを右に左に上にと一匹も後ろへ漏らさず、確実に打倒し黒い靄へと変えていく。
その無駄のない動きをドローンの映像から見ていた弥生が言う
「へぇ、なかなかやるね」
柚子と美甘も呆気にとられている。
「柚子さん!こいついいよ。すっごく手に馴染む」
全て殲滅した一真が棍の握りを確認しながら玲と三人の居る場所へもどる。
さて、これからどうするか。ここからなら、車両までそんなに遠くない。三人は車両まで避難させるとして。
女の子だが・・。泣き崩れている三人を改めてみる。
「場所わかった。洞窟の奥。魍魎もたくさんいる」
俺は迷うことなく、今後の事を言う
「これから俺は娘さんを助けに行く」
玲は私も行きますと言わんばかりに俺を見つめる。それに、さっきの魍魎鬼の手ごたえなら、俺でも十分なんとかなりそうだしな。
「玲が一緒でもさっきの手ごたえなら何とかなるだろう。それに、女の子を助けに行くには女性が居た方がいいと思う。だから、この三人は弥生さんがドローンで誘導してそっちに向かわせて。柚子さんは、そっちから迎えにいって三人と合流してください。美甘はモニターで瘴気濃度と魍魎鬼の数を逐一報告して
」
玲は三人にこの後の事を説明すると。『娘を!娘を!お願いします!お願いします!』と何度も懇願されていた。
ドローンの操作を柚子から変わりながら弥生が俺に言う。
「気を付けて。と、言いたい所だけど。なぁ、このクエストさぁ、もうすでにランクオーバーじゃない?」
「あっ!そうかもな。ははは」
「『ははは』じゃないよ!」
弥生も呆れた口調で一緒に笑っている。おれの隣で立つ玲は必死形相だってけど。このくらい緩いくらいの方が成功しやすいと思うね。
さて、さらに時間との勝負だな。俺は後を弥生たちに任せて。今度は駆け下りていく。
・・・次回『スコア』




