23話 初クエスト
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その日の10時頃、玲はクエスト管理課からではなく、副局長室で直接クエストを受けてきた。
テーブルの周りにみんなが集まり、美甘だけは弥生の後ろからちょこっとだけ顔を出している。可愛いんだがなあ。この前、ゲーム本体とソフトを貸してくれたんで、だいぶ慣れてくれたのかと思っていたけど、まだ慣れてはくれないらしい。今度、ゲームを誘ってみよう。
玲がクエストの内容を説明してくれる。
「調査内容は。場所は相模原市陣馬山の南側中腹。
前回、黒羽学園付近での地震の影響なのか、この周辺でここ数日瘴気濃度が上昇しているそうです。私たちは早急にその原因を調査しろ。との事です」
そう言うと、玲が地図を広げて、その場所を指差す
弥生は現在地から指でなぞってどのルートがいいか思案している。俺はまだ土地勘が薄いので、知ったかぶりで『ふむふむ』と腕をくんでみんなの顔を見ていると、柚子だけ顔色がちがった。
「ああ!!!ここ。温泉があります!」
皆、その一言に思わず笑みがこぼれる。これも相変わらずのことなんだろうな。柚子は指を差しながら、俺を見る。その柚子の動きを見て、他のみんなも一斉に俺の方を向く。
俺は間髪入れず、自分の右の親指を上に建てる。
そのジェスチャーでみんな大喜びだ。正解だったよで、ちょっとホッとした気持ちになる。しかい、みんな温泉好きなんだなぁ。ま、俺も大好きです。
温泉には調査が終わった帰りに寄ることに決まり。その勢いのまま格納庫へ向かう。
格納庫には俺達用の新型車両が待機していた。新型の車両と言っても、見た目は中クラスのキャンピングカーで所謂キャブコンってやつかな。
しかし、中身は全くの別物で、寝台部分は上部に小さく二人仮眠する程度しかなく、他は装備の保管スペースや各種電子機器とそれを管理するオペレーションルームになっていて、もちろんエンジンや足回りもそれ相応の仕様になっている。これは、いたずらに住民を怖がらせたりしない為の簡易的なフェイクとなっている。全員が格納庫に到着すると、何故か俺と弥生以外の三人は恐る恐る後ろの扉からキャビンへ入る。俺は助手席に座り、弥生は当然のごとく運転席に座る。この車両のシートベルトは何故か航空機のシートに使われているハーネスタイプのシートベルトだった。
さらに、3つモニターが設置されていて、一つはフロントガラスの中央上部にヘッドアップディスプレイが有り、今は車両後方を映している。これは様々な情報・映像を映すことができる。二つ目は助手席と運転席の間のナビモニター。その下に三つ目のキャビンを映すモニターがある。キャビンを映すモニターには当然の様にハーネスを装着している様子が見える。美甘以外・・・
「おおおおおおおお!」
並べられたハイエンドPCを見て、珍しく両手を天に突き上げて美甘が吠えている。
実は彼女、この車両を見るのは初めてでだった。彼女自身そういった物には全く興味がなく一度も見に来なかった。でも、中身の装備までグレードアップしていて歓喜のあまり叫んでしまったようだ。
柚子と玲は、美甘の雄たけびに全く反応せず、なぜか二人は早々にシートの横に付いている手すりにしがみついていた。なんだ?まるで、絶叫マシーンに乗る前の雰囲気だな。と、思いながらふと運転席を見ると、弥生がハンドルを握らず、掌をワキワキと動かしている。彼女の顔はニヤニヤとしている。
そして、弥生が期待感前回で『まだ??』と、熱いまなざしで俺を見る。
「?・・あ!は、発進・・」
俺はその眼差しに導かれるまま、そう言っていた。
その言葉を聞いた弥生はギアをドライブに入れ、ハンドルを握りブレーキを踏みながらアクセルを吹かす
ブウン!ブウン!ブウン!
つぎの瞬間
「ひゃっほーーーー!」
弥生の雄たけびとと共に、車両は急発進する!
こ、こういう、ことか!
俺はシートに後頭部を打ち付け、後ろからもインカムと生の声が二重奏で三人の叫び声が聞こえる。
そして、不覚にも俺は一瞬意識を失ってしまった。
意識を取り戻すのに少し時間がかかった。乗り物で意識を失ったのはこれが初めての経験だった。
高速道路に入ると、荒ぶる車両が少し落ち着く。少し安心した柚子が先ほどの温泉の話の続きを始めた。
会話は先ほど装着したインカムでやり取りをする。
「ここの温泉はですねぇ・・。泉質はアルカリ性単純温泉。疲労回復、筋肉疲労、冷え性、神経痛、関節痛等に良く。腎機能回復にも良いとされています。しかも、食事の評価がとても高いです!」
「へぇー。いいねぇ。私みたいな酒飲みの腎臓にも優しいのかい」
弥生の口の端が上がる
「はい!だからって、飲酒運転はダメですからね!ここは、山間の一軒家の温泉旅館らしく食事もおいしいそうです。また、評価は比較的高水準で安定しているようなので間違いないと思います。今から、ワクワクしますねぇ♪」
「し、し、仕事が優先です!」
玲が隣で柚子に真剣に訴えている。
「柚子。玲の言う通りだよ。新リーダーもそう言ってるよー!」
えっ?言ってないけど!ないけど・・おれはついつい言ってしまう。
「癒しも必要!必要!ついでに食事もしていこー!」
「「 おーーー! 」」
高速を降りると山道が約30分ほど続き、その日の昼過ぎには現地付近に到着した。
俺達は手分けして作業に入る。皆手慣れたもので、俺も色々と指示を受けながら作業に加わる。
まずは周囲に簡易結界を張り。各種センサーを配置し、ドローンを飛ばす。ドローンの役目は小型センサーを周囲に投下していくことで。その小型センサーから送られた情報を元に解析されていく。昼間の段階では大きな以上は出なかった。しかし、昼間と夜では数値が大きく変わる事もあり、設置した後は夜に備える事になる。
俺の仕事は早々に終わり、少し遅い昼食を全員の分、簡単なサンドウィッチを作る。意外とみんなには好評で変な物でも見る顔で驚かれた。
作業は夕方には落ち着き、このまま待機となる。
俺は、車両のすぐ側に簡易的な竈を作り簡単な鍋料理をする。これまた、みんなに驚かれたので竈を囲みながら以前、自分が海外でジプシー的な生活をしている時によくやっていた事を話すと、何となく納得された。
俺はみんなの簡単な身の上話を聞きながら、みんなとひと時を過ごした。こういった。自然の中で焚火を見ながら過ごすと、何故か心が穏やかになり優しい気持ちになれる。そんな話をしていると、みな共感してくれた。外で食べる食事もいいよね。
外で食べながら、柚子が俺に話をふる。
「そうそう。一真さんは学園に居た時に柳生彩華さんとお話や手合わせとかはされたんですか?」
「手合わせはしてないよ。話は少ししたことあったけど、言っても、学園に居たのは短かったからね」
「そうなんですね。学園では神器の甦生を柳生さんがしたって、盛り上がってるみたいじゃないですかー。学園以外でも噂になってて。時の人ですからねぇ。いま、あちこちでその話でもりあがってますもん」
「へ、へぇ・・」
俺は生返事をするしかなかった。なんか、色々すんません・・はは。
そうして、なんだかんだと話しているうちに21時を回っていた。22時からは、それぞれ2時間ずつ交代で夜番をする事になり俺が一番目になった。0時になり二番目の柚子交代しようと彼女を起こした時、センサーが異常を感知した。
柚子が全員を起こす。異常を検知したセンサーは一番北側の山頂に近い付近で、ここから約3キロほどの地点になる。
昼間は殆ど検知しなかった瘴気濃度が、今では危険域にまで上昇している。
このままでは、数分でこの前の学園の時の濃度まで到達する勢いだ。
皆の顔に緊張が走る。
だが、上昇していた数値が今度は急速に低くなっていく。
あまりにも、おかしい反応をするので、それを調べる為に弥生はその地点に向けてドローンを飛ばす。
と、同時に美甘が衛星を使って上空からの撮影作業に入る。
ドローンは数分で到着する。到着するまでの間も数値に異常はなかった。
ライトを照らしながらドローンを低空で木々の生い茂る中を自在に操りながら飛ばす。この辺りも弥生が腕のいいドライバーの証なんだろう。
「ん?」
弥生がドローンを少し今来た方に戻り上下しながら辺りを照らす。すると、ドローンに搭載されていたセンサーが反応する。瞬間、弥生は静止させる。
「あっ!」
玲が口を開く。カメラの写った先に洞窟の入り口を見つける。センサーの反応もその先が瘴気の発生元だと語っていた。
「瘴気濃度はそんなに高くはないねぇ。この濃度なら簡易羽織での調査可能範囲だけど、場所が場所。さらにさっきの異常濃度がある。さぁ、どうする?」
弥生が俺を見ながら聞いてくる。一瞬緊張が走り、みんなも俺を見る。まぁ、俺がリーダーなんだけど、決めてくれないかなぁ・・・。
と、弥生を」見返すけど。返事はない。
仕方ない・・・
「撤収で!!」
俺は臆病だからね。無理はしない。とっとと帰って、あとは上位ランクに任せよう。
その言葉にみんな安堵の笑みを浮かべた。早速撤収作業に入る。皆の撤収作業の早いこと早いこと。
弥生も『良いリーダーで安心したよ!』と褒めてくれる。
しかし・・・
珍しく美甘が口を開く。
「みんな、これ、見て」
珍しい美甘の言葉にみんなが集まる。美甘は目の前のモニターを見せる。それは先ほど取った衛星の暗視画像だった。
美甘が指を差す。
指を差した場所は先ほどドローンが見つけた洞窟から少し上部で山の頂だった。
明らかに人工的な光だろう。白く見える。
もう一度衛星画像を利用して、赤外線と熱探知画像の両方で確認する。
「熱源は4つ。これ、人だ。間違いなく野営してるな・・。もしそうなら、かなりまずい。小型の魍魎鬼と遭遇する確率はかなり高いぞ」
弥生がそう言うと、美甘が別の端末を使って登山計画の有無を調べる。
「一組居る」
全員の顔にまた緊張が走る。
「どうする?」
弥生とみんなが、また俺を見る。
「・・・。はぁ、行こう・・」
それを聞くとみんな微笑む。そして、弥生が一真の肩を叩き言う
「やっぱりあんた。いいやつだね」
俺は複雑な気持ちになるが、仕方ない。そうと決まれば行動だ。
・・・次回『ランクオーバー』




