22話 怠惰なひと時はノックから
◇◆◇◆◇◆
《 本部別館・第17分室前 》
俺は部屋の前に立ち、ノックを三回した。
コン コン コン
・・・
少し待つ
返事がない。
その後、数回同じ回数でノックをした。
返事はない・・・
某スパイものの様に、決まった回数とかあるんだろうか。
コン ココ コン ココ コン
今度は、少し叩くタイミングわ変えてみた。
やはり、返事はない・・・
そんな姿を物珍しそうに、俺の後ろを人が行きかう。俺は困った顔を全面に出して、一人を人を捕まえて尋ねる。
「第17調査隊の部屋は他にもあるんでしょうか?」
答えは『ないです。ここで合っている』だそうだ。
さらに、先ほど第17調査隊の彼女達が戻ってきたのを見かけたので誰かは部屋に居るはずだと・・。
俺は気を取り直し、改めてノックをした。
ノックを鳴らす回数とタイミングをさらに変えてみた。
コン
コンコン
コンコンコン
・・・
やはり返事がない
すれ違う人達の嘲笑する小声と視線が突き刺さる。まるで針のむしろだな。
もう一度勇気を振り絞って俺はさらに力ずよくノックする
コンコンコンコン ココココココココ コンコココン!
少し待つ・・・
・・・
やはり、返事がない。
もう無理だ!諦めて帰ろう。よしっ!そうしよう!
そうそう、咲宮耶と三条さんには不在だったと言えばいいさ。
それに、証人は山ほいるしな!決まりだ!
最悪、これで首になっても何処かのタイミングで逃げ出して、また気ままな放浪生活に戻るだけだ。
はぁ・・・。しかし、俺はデリバリーか何かか・・・。ちょっと笑える。帰れるしな・・ふふ。
『よしっ!』と帰ろうとした時、やっと扉の向こうから、かなり慌てた感じの声が聞こえた。
そして、やっと扉が開く。
チッ、ざんねん・・・
なんだ。これはあれか?新人が必ず受けると言う洗礼ってやつなんだろうか。
とんでもないとこに来てしまった。俺はどうなってしまうのか…。咲宮耶に『引き受ける』と言ったものの、一抹の不安しかない。
鞄を両手で抱きかかえながら、恐る恐る室内に入る。
それにしても中が暗い、室内の雰囲気もどんよりしている。
俺は思う。これは、あれだ。完全にお通夜状態だな。て、言うかそんなに俺が来るのが嫌とかだったのか?? まいったな・・
いや!ここまで来たんだ、とりあえずなんとかしなくては。俺は必死にテンプレを言う。
「え・・と。皆さん、草薙一真です。改めてよろしくお願いしします」
すると、少し驚いた顔で、弥生が一番に口を開くと他の三人に挨拶を促す。
「ああ、すまなかった。こちらこそよろしくお願いする。私は立花弥生。さ、みんなも」
「私は神原柚子。よろしく!知ってると思うけど、クラスメイトの優弥は私の弟です。弟がお世話になりました。実は、色々と話しは聞いていて。あの子、草薙さんの話しになると凄く夢中になって話をするんです。本当にありがとうございます」
「え・・と・・。私は霧島玲・・です。よ、よろしく・・お願いします」
一人だけ、我関せずとパソコンに向かっていた、美甘がやっぱり弥生に『ヨイショッ』と抱えられて、俺の前に突き出される。
「ほら!美甘も。ちゃんと挨拶する」
「ブツブツブツブツ・・・」
美甘は小声でぶつぶつ言っていると、『バン!』と弥生に肩を叩かれる。
よろめいた後、俯きながら、なんとか聞こえる程度で言う。
「いちのせ、みかん」
そう言うと、とっとと元居た場所へ戻る。
その姿を見て弥生が手を頭の後ろにまわしながら俺に振り向き言う。俺はみんなから普通に挨拶を返してもらった事で、不安な気持ちが少し楽になる。あ、いや、一人以外かな。
「草薙さん、すまない。美甘は極度の人見知りなんだ。怒らないでほしい」
「いえ、大丈夫です。皆さん、改めてよろしくお願いします。それと、俺のことは気楽に一真と呼んでください」
「いや、しかし。あなたはリーダーで私たちより年長で・・」
弥生が皆の代表の様に言う。柚子と玲も『うんうん』と頷いている。
「俺は新人で。これからは仲間になるんだから、そういう堅苦しいのは無しにしてほしい。その方がやりやすいんで。頼むよ」
「わかりました。では私たちの事も・・下の名前で呼んでください」
弥生が他の三人の顔を見回してながら答える。
「一真さんは、その奥の机を使ってください」
神原が奥の机を指さす。
「あれって。ひょっとして榊さんのでは?」
「はい。そうです。でも榊さんはもう戻られる事はないので・・・」
「そうか・・。改めて使わせてもらいます。今度みんなで改めて挨拶にいこうか?確か近々退院だったと思うし」
「「 はい!! 」」
柚子と玲が元気よく答え。弥生はニマニマと笑っている。
「・・あの・・。不束者ですが、サブリーダーを、が、がんばって、努めますので・・よ!よろしくお願いします!」
玲が突然90度にお辞儀をし、この変なタイミングで大声で初心表明をしてくれる。柚子と弥生がその姿に大声で笑う。
「あ、ああ。リーダーって言っても名ばかりなんで、こちらこそよろしくお願いします」
「あああああああああああ!!!!!」
柚子が突然大きな声を上げる。
「「 なんだ! どうした? 」」
「忘れてました。新しい車両と装備一式。それと今回の報酬と新しい活動資金!受領しないと!」
「そいつはまずい。車両部のおやっさん。早くいかないと怒るぞ!あたしは車両部に行く。柚子は装備一式」
「はいっ!」
弥生と柚子が返事をしあう。少し遅れて玲もそれに反応する。
「私は活動資金の受領に行きます!!」
バタバタと三人は外へ駆け出して行った。部屋には・・俺と美甘が残された。
俺はどうして突然のことでどうしていいか解らず動けなかった。
そんな俺を美甘がチラッと見る。が、すぐに手に持っていたゲームのコントローラーを操作する。
・・・まいったな。
俺は数十秒固まった。我に返ると近くにあったソファに、まだカバンを前に抱えながら浅く座って他の三人の誰かが戻ってくるまで待った。
玲が初めに戻ってきたが、ソファに座っていた俺をみるとアタフタしながら自分の机で資金を仕分けし始めた。
更に少しして、弥生が戻ると俺がソファに座っているのを見て大笑いしした。
弥生は俺の肩を叩いた。
「すまない!すまない!ここは、いつもこんな調子だから気軽にゆっくりして下さい」
そう言いながら。俺を榊さんが使っていた机にでも荷物を整理してくれと促す
さらに少しして、柚子が興奮しながら戻ってきた。
「みんな!新装備やばい!最新式の感応型疑似神器だよ!」
それを見て弥生が首を横に傾け笑いながら俺に向かって言う
「な!こんな感じだから。気軽に付き合ってやって」
それを見て、俺は笑った。なんだろう、久しぶりに心から笑った気がする。
少し心がほぐれた感じがした。
これなら、なんとかやっていけそうかな・・はは。
柚子が少しキョトンとした顔をした。が、その後、怒涛の装備解説が始まった。
俺はその光景を何故か微笑ましく見た。
その話を聞いていた弥生が柚子を静止して言う。
「なぁ、これだけの装備や資金って、どう考えても上位ランクに支給される内容だと思うけど。これが私たちに回ってくるって、なんかおかしくないか?最後の晩餐みたいなことないよな?」
「たしかに、私が装備科に行った時『頑張れよ!』ってやけに親切でした」
「私が資金を受け取りに行った時も、やけに親切でした」
「なんか、嫌な予感しかしかしないねぇ」
「一真さん。これらの装備の事、副室長とか何か言ってませんでしたか?」
「いや、何も言ってなかったなー」
柚子が俺に質問をしてくるが、嘘は言っていない。装備のことは何も言っていなかった。
「そうか・・。美甘は何かきいてないか?」
美甘はこちらに見向きもせず、首を横に振った。
「ま、難しく考えても仕方無いですよ!成るようになります(フフフフフフ)、これをあーしてこうして、そうするとこーして」
柚子の顔が怖い。
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そんなこんなで俺がここに配属となってから一週間が経った。その後、本部からは何も言ってこなかった。
玲が何度か聞きに行っていたが、現況待機とだけ言われたらしい。
その間、俺は住居を紹介してもらったり、口座を開設したり、施設を案内してもらったり、各装備の簡単な使用方法などを学んで過ごした。
他のチームの面々も数人は知り合うようになり、みな総じてご愁傷さまと言いたげに心配してくれる。
もし、第17がダメな時はリーダーに掛け合って俺をなんとかチームに迎えても良いと言ってくれる人もいる。気持ちはありがたいが、ここの居心地は結構いい。
みんなも、いつクエストが来てもいいように、それぞれ自分たちの分野の準備等をしていた。
そして、さらに一週間が経った。皆、かなり緩んでいるのか、つまらないのか、だらけている。俺も含めてだけど。ま、生活資金は結構豊富に頂いているんで、その辺りが彼女達を怠惰にさせているんだろう。俺にとっては丁度良い感じだ。そして俺自身、最近はコンピューターゲームとやらにハマっていた。美甘の遊ばなくなったソフトとゲーム機を借りて遊んでいる。これがなかなかどうして、かなり面白い、椅子に半分ねそべりながらやっている。今では美甘よりも上手いかもしれない。フフフ
こんな状態が三週目に突入しようとしていた時。この怠惰で素晴らしい時間は唐突に終わりを告げる。
先ほど副局長室に呼ばれた俺の代わりに行ってもらっていた玲が慌てて戻ってくる。
「皆さん。聞いてください!クエストです!!」
その声で俺は椅子から転げ落ちた。
・・・次回『初クエスト』




