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八咫の鴉  作者: 蓬莱さん
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21話 配属先は第17調査隊



◇◆◇◆◇◆



《 黒羽学園理事長室 》



俺は久しぶりに4人と顔合わせをする。しかし、当の4人は狐に摘ままれた顔をしていた。

その証拠に入り口でボケっと突っ立ったまま、なかなか入ってこようとはしなかった。


「いいから入れ!そんなとこで突っ立っていては話にならん」

三条が4人を中へ入るように促す。そうすると四人は慌てて部屋に入る。が、相変わらず美甘は弥生に担がれて中に入る。

4人に対して、咲宮耶が口を開く。


「まずは、ここでの調査ご苦労さまです。今回の報酬とは別であなた達には朗報があります。ご存じの様に榊さんは現役の引退を決めました。退院した後は少しの休養のあと。来期からこの学園で後人育成の為、その経験を活かし教鞭を振るってもらうことになります。そうすると前衛とリーダーの居ない、あなた達チームのランクは落ちる事になります。それは解っていますね?」


4人はうなだれている。


「ですが、榊さんが育てたあなた達チームをこのまま腐らせるのは忍びなく、再起の機会を与える事にし、一人前衛を配属することにしました。先ごろまで、この学園に在籍していましたが、年齢の問題で一時休校扱いになった人が幸いにも一名あらわれました。日本での実践経験は殆どありませんが、本人のたっての希望で前衛として一度実戦経験がしたいとの事です。この殊勝な考えの報いる為、まずは試験的にあなた達のチームに編成することにしました」


『本人のたっての』のところで、俺は咲『えっ?!』と、咲宮耶の顔を見る。咲宮耶はチラッと見るが知らん顔をして話を続ける。


「紹介します!草薙一真さんです」


「あーーーーーーーっ!」


柚子が大きな声を上げる。


「こらっ!」

三条が柚子を叱る。俺の顔を見た瞬間、大声を上げた柚子以外の面々も驚いた顔をした。


「貴方たちは落ちこぼれとレッテルを貼られたこともありますが。私はあなた達に可能性を感じています。是非期待に応えてください。では、今後の詳しい事は別室で小日向から聞いてもらい、一旦本部の分室で待機していてください。以上」


三人は鳩はが豆鉄砲を食らった顔をしながら、言われるがまま小日向に連れられて別室に向かった。


4人が部屋を出ていくのを確認して咲宮耶が話す。


「後程本部に連れていくので、改めての挨拶はこのくらいでいいでしょう。一真、あの子たちをお願いします」


咲宮耶が珍しく殊勝だ、何故か後が怖いけど、これは素直にしておくのが一番賢い選択だろう。怒ると本気で怖いからな・・ん?なんでそう思ったんだ?子供のころの記憶か・・・。


三条がタブレットを俺に差し出し、彼女たちの個人能力データを見せる。


「彼女たちは個々の能力が非常に高く、初めはとても期待されていた。しかし、どうしてなのか他の者たちと噛み合わず、結果を出すどころか逆に失敗することも多かった。期待されていたのが良くなかったのかと、改めて彼女たちを一か所に集めて、引退間近の榊さんに無理を言ってまとめ役をお願いした。榊さんは、確かに上手くやってくれていた。そして纏まりはしたが、個々ののポテンシャルは埋もれてしまった。榊さんもしっかり理解してくれていて、俺では無理だと何度も言われていた。前回の事件も切迫した状況が彼女たちを引き上げるトリガーになるのでは、との判断での行動だったと思う」


そこに咲宮耶が口をはさむ


「榊さんにはかなり無理をさせてしまったわ。あんな事になったのも私たちの完全なミス」


三条が咲宮耶の言葉に同意しうなずき、話を続ける。


「総理の話にあったように現在非常事態にあるの。その一つの要因としてランクオーバーの件数の増加が懸念となってて、八咫鴉全体で大きな問題となっている。これは奥の院でも問題になっているんだが、奥の院のご老体たちは、多少の損害はしかたないとの見解で、ここがもっとも我々との大きな違いなんだ」


三条と交代で咲宮耶がさらに真剣な表情で俺に続きを話す。


「一真、あなたにお願いしたいのは、そのランクオーバーの対処を彼女たちと共にしてほしいの!」


「待ってくれ!!おれはこの国に来て日も浅い。それに、榊さんみたいに人を導くなんてなおさら無理だ。そんな俺に、彼女たちと一緒に危険なとこへなんていけないって!」


咲宮耶は言葉に詰まってしまうが、三条が代わりに言う


「一真。あんたの実力は十分に認めている。正直未知数な部分も多いが、奥の院を少しでも騙しながら関与できるのはお前らしか居ないと私は思う。力を貸して欲しい。それに、総理とも約束しただろう?もちろん支援もする。資金等もある程度用意する」


俺は渋った。物凄く渋った。それも咲宮耶に次の言葉を言われるまでは・・


「一真。あなたしかいないの。あなたでなければダメなの。あなたでなければ進まないの。神楽耶の・・姉さんが・・信じたあなたでないと・・ダメなの」


その言葉に俺は『はっ!』とする。三条も驚きの顔を隠せないでいる。

何故か俺はその言葉に弱かった。【神楽耶】俺にとって、その言葉は絶対で裏切っちゃいけない呪文のように心に響く。


「わ、わかった・・。でも、俺が危険だと思うことはしない。俺が無理だと判断した時は彼女たちの命を優先する。それに、俺ってこう見えて、臆病で怠け者だからね」

滅茶苦茶嫌だけど、俺は渋々承知する。


「知ってるわ・・」

咲宮耶の目は少し潤みながら俺を見ていた。涙はさすがにさすがに反則だと思う。


その後、俺は三条から少し補足の話しをした。ヤタガラス全体での俺の立ち位置。俺自身の存在自体、奥の院にも、あまり認識されていないらしい。人材不足だから仕方ないかくらいな程度みたいだ。あと、自分が今後住むことになる場所や第17での自分と皆の立位置や榊さんがどう彼女たちに接していたか。第17の本部内での立場や状況。

とても少しじゃあなく、結構色々と大量に詰め込まれたので、正直どこまで覚えていられるか自信がない。


そして、俺は荷物をまとめる為に部屋に戻った。優弥には簡単に俺が年齢を理由に休学になる事を話した。優弥は何が何だか分からないといった顔をしながら、理事長に猛抗議すると息巻いていた。そんな風に言ってくれる人が居て嬉しくなった。


俺は、短い生活ではあったけど、今まで生きてきて経験した事のない、それなりに楽しく過ごさせてもらった学園を後にした。



◇◆◇◆◇◆




第17の面々は別室で小日向から説明を受けていた。まず、これは榊さんたっての願いであり。彼の貢献に対する恩赦も含めての事であり、今回の措置はあくまでも最後の救済措置で今後の結果しだいでは早々にそのまま解散もありうる事。

そして、新人が配属されることで特別に支度金が用意される事。さらに新型の車両と新装備も手配される事。新人がリーダーではあるが玲がサブリーダーとしてサポートする事。


目まぐるしい変化についていくことが出来ず戻る車両の中でも、いつもはよく話をする柚子でさえ一言も発することがなかった。

本部に到着すると。第17の面々が最後の崖っぷちである事を意図的にながされていた。それを聞きつけた同僚達から同情の視線や言葉を送られるが、その言葉や視線に気づくことも無く無口のまま分室へ戻った。分室に戻ってからも、何をするわけでもなく、それぞれは静かにしていた。


そして、皆が分室に戻ってから一時間程して、扉を叩く音がしていた。何度も何度も叩く音がするのだが、誰もそれに気づくことがなく、止んでは再び叩くが幾度も続いた。

その音に、やっと玲が気づき、『はい!ごめんなさい!!』と、慌てて返事をして扉を開ける。



そこには、バツの悪そうな顔をした。俺、草薙一真が肩を落としながら立っていた。






・・・次回『怠惰なひと時はノックから』

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