20話 真実の片棒
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《 第17調査隊分室 》
榊の居なくなった第17調査隊の面々は、現在Cランク扱いではなくDランク扱いとなり、重要人物捜索緊急クエストの後、クエストが下りてくる事は一度も無かった。ランクの落ちたチームは既に存在する同じランクのチームより受けられるクエストは少ない。クエストを自由に選べるのはBランク以上で、Cランク以下は本部や支部から発行されるクエストしか受ける事が出来ない。そして、前回のクエスト報酬も殆ど底を尽きかけていた。所謂、干されている状態で完全な肩たたきで、「もうつづけても仕方ないから、そろそろ転職考えたら?」というやつである。本人たちもそれは十分解っていたが、ひょっとしたら?と、一抹の期待が残っていた。しかし、先日。榊現場の現場復帰が完全に無くなり、榊自身も学園の講師としての道を進むことがハッキリしてからは一気に状況は変わった。
柚子はいつ実家に戻るか悩んでいて、いつみんなに言いだすかを悩んでいる。
玲は実家が名門霧島家で自分が名前を汚すと父に迷惑をかけるのではと悩み。
弥生は初め楽天的でいたが、さすがにどうやってタバコ代を稼ぐか悩んでいる。
美甘だけは、相変わらずマイペースでパソコンに向かってゲームをしている。
この4人すぐ近くにシェアルームでマンションの一室を共同で利用していて、この分室とマンションの往復をしているだけの毎日を過ごしている。マンションといってもヤタガラス御用達の建物で、さすがにすぐは追い出されることはなくても、あまり家賃の滞納が続けばその限りではない。
そんな日々を過ごしていたある日、巨大な地震が都心を襲った。分室に詰めていた彼女たちもさすがに異常事態だとわかった。
不安な日々を過ごしていた彼女たちにも、クエストが発行された。弥生と柚子が発行部に出頭していた。そこには、所属する殆どのCランクチームと一部のDランクチームが集められており纏めてクエストの説明を受けた。久しぶりのクエストは黒羽学園周辺の調査。かなり大規模な動員数でクエストの重要性が空気を重くしていた。
早々に出発準備をし停車場へ向かう。甘以外の三人は張り切っていたが、弥生に部屋から引きずられる様に連れ出され車両に放り込まれ現地へ急行する。
道中、柚子から他の二人に説明があった。
ーーー しばらく柚子視点 ーーー
「状況は今説明したとおり、瘴気対策は既に先行している、上位ランクによって浄化は完了しているけど、原因はまだ究明されていなくて、私たちはその調査に派遣される。あと、私の弟からの情報だけど、あそこに保管されていた神器が甦生したみたい」
『『 えっ!? 』』
それを聞き、弥生も含め3人の顔色が変わり、柚子に視線が集まる。
柚子はその様子を見て少し嬉しそうな顔をしながら続きを話す。
「その甦生したって人物なんだけど、あの、柳生のやんちゃ娘らしいよ。それで今学園は大変なことになってるらしいよ」
「マジかよ!すげーな。やっぱ血なんかな」
弥生が驚きと同時に皮肉も込めて言う
「『柳生に二人目の神器持ちがあらわれた!」って、あちらこちらでも大騒ぎみたい』」
「ま、そりゃあそうだろう。これで柳生の発言力がさらに強くなるな」
更に皮肉を込めて言う。弥生自身はあまり良く思わない雰囲気が滲みでている。
玲は『うらやましい』といった顔で柚子をみる。
美甘は我関せずで、ひたすら携帯ゲームで遊んでいる。
この四人の会話は、もっぱら弥生と柚子が会話の中心で、玲はそれに無言だけど目と表情で反応し、美甘はまったく興味無しで会話に参加しないのがお決まりである。
ただ、たまに、美甘がボソッと適格な事を言うところが、みんなを時々驚かせている。
そうこう、話しをしていると、一行は現地にたどり着く。
現地では 仮説指揮所でBクラスチームを中心に既に各チームが指示を受けている。その中に副局長達やトップの面々の姿はなかった。既に調査を始めているチームも多々あり、第17調査隊のメンツも早々に所定の調査区域に向かう。
調査自体は二日もかからず終わり、各チーム合わせた調査の分析結果、学園のかなり近い地点の比較的浅い地中に空洞が見つかり、そこにネストが確認された。幸いネストはまだ若く、核も小さいことが判明したので、Bクラスチームが総出で浄化に向かった。そして、私たちの久しぶりの仕事はあっけなく終わる。
解散の時、他のCランクチームで知り合いが数人『大丈夫?』と声をかけてくれたりした。
けど、みんなは「うん!大丈夫。大丈夫。ありがとう」としか返事することが出来ず、みんなの心の中で『これが、第17調査隊最後のクエストになるかもしれない』感じていた。
そんな焦燥とした雰囲気で帰ろうとした時、副局長の秘書官の一人が車両の前で私たちを待っていた。
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《 黒羽学園理事長室 》
俺は小日向さんに案内されて理事長室にいた。
俺が入った瞬間中にいた人が全員立って出迎えてくれた。そして会ったことがない、とても紳士的な初老の男性が挨拶をしてくれる。
「初めまして。この国の総理をしている藤原 隆宗と申します。よろしく」
彼は、とてもフランクな雰囲気で右手を差し出し握手を求めてくる。握手の手を放すとそのまま俺の左肩を軽く叩き、座るように促すしてくれる。なんて素敵な扱いをしてくれるのだろうか、誰かさん達とは大違いだ。さすが、一国のトップともなると、こうやって人の心にすんなりと入っていく術を身に着けているもんなんだな、と感心する。しかし、何故かこの空間に緊張した重さを感じる。
俺は三条さんの横に並び、皆ソファに座り終わると総理が真っ先に話し始めた。
「さて、草薙さん。まずは、今回の騒動は大変だったね。そして、学園の危機を回避し、さらに将来有望な三人も救ってくれた事に感謝を。君があの場に居たことが幸いだった」
「い、いえ。たまたまです。と、言うか英雄は柳生さんと聞いてますけど・・・。あのー、どこまでご存じなんでしょうか?」
俺は咲宮耶や三条の顔を続けて見た後、恐る恐る尋ねる。
「全てです。ここにいる全員は状況を正確に把握しています」
咲宮耶が初めて口を開く。
「柳生彩華さんには申し訳ないですが。あえて正しい状況を発表せず。今後も細かく調査する方針としています」
「咲宮耶くん。それについては私から話をしよう」
総理が、咲宮耶に変わって話を進める。
「現在、この国では大きな変革が起こりつつあります。それは世界も巻き込む可能性のある、未曽有の大災害です。そして、その予兆はすでに起きており、今回の事件もその一環と考えています。さらに、ここ数年発生している、クエストのランクオーバーも関連している可能性が高いです。そこで、この大災害に国が一丸となって対処をしていかないと行けないのですが、これがあまりにも大きな話で、国民がすんなりと受け入れられる次元を超えてしまっています。なので、ある程度情報を小出しにしつつ水面下で行動を起こさないといけないと、政府は判断しました。ですが、八咫鴉・奥の院の考えでは国民にどれだけ犠牲が出ても、挙国一致でこれに対応すべし。との考えで、被害を最小限で抑えたい私たち政府とは考え方に違いがあります」
「ちょっ!ちょっと待ってください!その大災害とはなんなんですか?」
俺はあまりに大きな話をされて困惑してしまった。その前に、その大災害がなんなのかが分からなければ何も考えられない。
「それは・・・。日本各地で瘴気の大噴出です。今回の学園で起きた事例は比較的まだ、小規模なもだと考えられます」
「それは、かなりヤバイんですか?」
「はい。調査のや資料等の裏付けもあります。さらに先日起きた重力振も大きく関係しており、重力振が起きた後を境に各地でネストの報告が相次いでいます。そして、今後さらに大きい重力振が起きる可能性が高く、その影響で瘴気の大災害が発生すると各研究機関や調査機関でも見解が一致している状況です」
「それで、どうして俺に関係が?」
「先ほどの話の続きになりますが。奥の院と政府では考え方が違うと話しましたが、我々は奥の院の方針に従うフリをしながら、水面下では被害を最小限に抑えるための行動を起こすと決めました。それに賛同してくれる同志がここの面々なのです。しかし、我々の表立っての行動は全て奥の院に筒抜けになっています。そこで、私たちには手足となって活動をしてもらえる同志が必要なのです。そこで、草薙さん。あなたに白羽の矢が立ったという訳です」
「お、おれですか??」
「そうです。同志になってもらう為には私自らが直接お会いして助力を請うのが礼儀だと思い。こうしてお時間を作ってもらい、お会いした次第です」
「大体理解はできたんですが・・・。なんで俺なんですか?もっと優秀な人は沢山いるはずですし・・」
『まず。奥の院に素性がバレていないこと。能力も申し分ないこと。咲宮耶くんと親しい間柄であること。この三点と、さらに、ここにいる私以外の面々が、皆あなたを推挙している』
「いや、しかし・・・」
おれは非常に乗る気でない。まったくもって面倒なことはちょっと、と難しい顔をしていると咲宮耶が口を開く。
「一真!あなたしかしないの・・・。力になって・・」
ううううううう
これは、完全に断れないやつだ、それにここまでは無しを聞いた人間を、はいそうですか、と解放することはないだろう。
「・・わかりました」
俺は観念する
「良かった。感謝します」
総理が安堵の笑みを浮かべ答えたとたん、なぜか周囲の緊張感がほどけたような気がした。
「本当に良かった。草薙さん、これから私たちは同志だ、なにか困ったことが有ればいつでも相談してください。それでは私は官邸に戻ります」
総理が立ち上がると、後ろに控えていた二人は総理の前後を共に歩き、総理を見送るため追うように理事長が出ていく。あの二人はSPだったか、それだけじゃない、かなりの手練れだ。
四人が退室した後、咲宮耶と三条が俺の前に座り直した。
「これであなたも一蓮托生ですね。そして、今の会話は全て極秘です」
咲宮耶が不気味な笑みを浮かべながら俺を見る。
そして三条が説明を始める。
「今後の事だが、まず君にはこの学園を休学してもらう。理由は年齢超過が原因の能力低下。そして、改めて副局長一時預かりのCランクチームのお試しリーダーとして配属。そこで活動してもらうことになる。以降の行動はそのメンバーと共に説明するが。先ほどまでの話は極秘扱いであり、メンバーにも話す事を今は許さない。その事をまずは肝に銘じてほしい」
コンコン
扉を叩く音がする。
「ちょうど良いタイミングだったな。入れ」
三条が言うと、小日向が扉を開ける。
そこには、以前俺が助け、俺を捕まえた四人が入ってきた。
・・・次回『配属先は第17調査隊』




