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八咫の鴉  作者: 蓬莱さん
19/35

19話 甦生


◇◆◇◆◇◆



《 黒羽学園・神器ルーム 》



彩華のマナを吸収し勢いをました瘴気は扉の溝が完全に浸食し隙間からあふれ出てくる。

この部屋の光触媒でも抑えられない。このままでは数分と持たずこの部屋は瘴気で充満する事になる。

絶望が彩華を含む三人を覆いつくしていた。そこに突然姿を現れたのはガラス張りの筒。

全員が息を飲む。中には一本の・・棒?いや戟。短い戟?先端の部分は・・何やら岩らしき物に突き刺さっている。その見た目は煤でまみれどす黒く汚れていて全体がわからない。・・柄と思われる部分から紐のようなものが垂れ下がっているがこれもかなり古いものなのか薄汚れている。なのになぜか、心が惹かれる。その柄の部分には金色の鈴らしき物がはめ込まれていて・・・とても美しい。




チリリリリリリリリーン



鈴は激しく鳴り響く。



俺は何も考えず、導かれるまま筒に近づき両の手をガラスに当てる。目の前の神器が俺のマナをガラス越しから吸収していく。余りの勢いに意識が一瞬飛ぶ。


俺は真っ白い空間を浮いている。足元には今朝夢で見た光景をまた見ていた。そして、さらに下へと落ちていく。激しい剣戟を交わし戦う二人の武人?が見える。片方が圧倒的な力量でもう片方を追い詰められていく。二人が手にしておるのは?これは神器同士の戦いなのか。ん?追い詰められている、あれは...女性?彼女が手にしているのは・・さっきの神器!

まさか、俺に見せてるのか?圧倒的な方が突然戦いを中断すると、目の前の空間に消えていく。

彼女はそれを見て力なく崩れ落ちる。


諦めるな・・

諦めるな・・

まだ・・あきらめるな・・


『飛び込めっ!!!』


おれは思わず口に出して叫んだ!

その瞬間、映像が急に巻き戻されて意識を取り戻す。



「えっ?!神器が一真に反応しているの?」

先ほどまで恐怖と後悔にさいなまれていた彩華の胸が締め付けられる

(自分は選ばれなかった・・・けど一真を選んだの)

彩華の表情が恐怖から驚愕へ変わる


俺はガラス手を放そうとするが離れない。頭の中に声らしき音が聞こえる【白火】


「おおおおおおおおお!白火《びゃっか》!!」


俺はそうしないといけない勘定に支配され、雄たけびを上げ叫んでいた。

すると今度は、マナの吸収は止まり両の手が弾かれる様にガラスから離れる。


静寂が辺りを包み込み一瞬時が止まる。何が起きているのか全く理解できない。三人も口を開けたままでいる。

神器の柄から白く輝く小さな球体が浮かび上がり。ガラスから出てくる。

出てきた球体は扉の方へフワフワと近づき、目の前までくると静止する。瘴気がその球体を襲い覆うとする次の瞬間。

それは、激しい音を響かせると共に激しい光を放ちながら爆散する。眩し過ぎて直視できないはずなのに、弾け飛んだ光は、噴出してきていた瘴気一瞬で光の塵に変えていき光は扉の向こう側にも放たれていく。

一瞬なにが起きたのか理解できなかった。が、扉を浸食していたドス黒い瘴気は全て白くなっていて、空間には白い小さな光りの粒が舞っている。その光景はとても美しかった。


「きれい・・・」

彩華が声を漏らす。そして何故か俺も見ている。

他の二人も涙を拭きながら、この光景に酔いしれていた。


俺は神器の方を見る。神器は煤や光り輝いており、付着していた煤や汚れは取れ、先ほどのみすぼらさはなく、その柄は銀色に輝き、とても神々しい姿を見せていた。

これが、この神器の本来の姿。『お前が俺を呼んだのか?そしてあれを見せたのか?』


チリーン


鈴が誇らしげに鳴っているように思う。


チリリーン


・・・




ダンッ!!ガラララン


突然、扉の外で大きな音がする。


ドン!ドン!ドン!


今度は扉を叩く音が何度も何度も響く。


「彩華!彩華!!いろはぁぁぁぁ!!」


男の叫ぶ音が中まで聞こえる。彩華?ひょっとして・・


『兄さま!!』


彩華も叫ぶ。それが聞こえたのか。外の声の主のにテンションが上がる


ガリ・・ガ、ガギララララ


電気が回復したのか、扉がガラガラと音を立てる。開くが、浸食されて腐敗した部分がガリガリと言い。半開きで止まる。隙間から瘴気が侵入する事は無はなかった。先程の光の爆発は外の瘴気も打ち消したらしい。すると・・


ウォォォォォォォォ!!

ガッガガガッガガガ


男は雄たけびを上げながら、半開きの扉を力ずくで無理やり押し開ける。男は黒羽織を着ていた。あれが彩華の兄か。なんか暑苦しそうな奴だな。


「いろはーーーっ!」

「お兄様!!」



・・・・・・。



さて、早々に退場しよう。俺は、二人に気付かれないように、さっと扉から外に出る。

外も光の粒子がチラチラと舞っていて、ヒビ割れた隔壁の隙間も全て真っ白になっていた。とんでもない力だな。感心している俺の耳には、扉の中からすでに言葉になっていない、悲鳴なのかんからない会話か聞こえてくる。

触らぬ神に祟りなし。


俺は外から駆け込んできた職員やヤタガラスに何度も体の様子を聞かれたが、全くの無事である事を伝えた。職員からは念の為に後日検査を受けるように言われた。生徒達はこの一旦シェルターからグラウンドに出て、実家から迎えに来たものは自宅へ帰宅となり、そうでないものは自分の宿舎に戻ることとなった。そして学園は一時的に休校になった。


俺は元々宿無しの生活をしていたので宿舎に帰る。その晩、優弥から聞いた話しでは、学園は神器がよみがえった事でさらに大騒ぎになっているらしい。しかも、それに関わったのが彩華らしく、柳生から神器持ちが二人現れたと、これまた大騒ぎになっているそうだ。彩華・・・がんばれ。


この数日は余震も少なく、地震は小康状態になったんだけど、学園は相変わらずちゃぶ台をひっくり返したような騒ぎが続いている。それもそうだろう。地割れのひびから瘴気が噴き出すなんて、この周囲の地中はとんでもない事になっている。俺を含めた一部の生徒は寮に残っているわけで。危険極まりないだろう、と思っていたけど。早々に調査班がきて学園の周囲を徹底的に調べたところ、浅い深さの地中に空洞が見つかり、中はネスト状態になっていたそうだ。こんな現象は過去に零ではないにしても、非常に稀なことらしい。で、完全に浄化されて今は安全だと確認がとれているそうだ。

お陰で、のんびりさせて貰っている。さすがに一日中ダラダラしていても体が鈍るだけなので、時折グラウンドを走る。学園の周囲は警備と称して自衛隊の面々が囲んでいるんだけど。どうも、中から人を出さないようにしているのが本音のようだ。それでも俺は抜け出して周囲の森の中を走り回った。何度かいくつかのヤタガラスチームに見つかりそうになったけど。


更に数日経つと、一部の生徒が少しづづ寮に戻ってきた。安全確認がとれたお陰だろう。戻ってきて早々みんな鍛錬に励んでいる。みんな、なんと真面目なことか。優弥もそれに漏れず早々に戻ってきて。俺は毎回鍛錬に付き合わされていた。そして、最近は何故か兄貴みたいに慕ってくれる。


同じころ、彩華と他二人も戻ってきており、研究棟でなにやら色々と検証実験をしているらしい。

・・・彩華がんうんばれ。

しかし、俺も当事者であるはずなんだが、何故か彩華達三人と一度も顔を合わすことがなく、咲宮夜や三条にからも呼ばれることはなかった。どうやら、俺は存在を忘れられているみたいだ。良きかな。良きかな。

このどさくさに紛れて逃走しようかと思ってたんだが、優弥がいるんで何故かいきなり消えることができなかった。優弥こそが俺の本当の監視者なのかもしれない。恐るべし。


そんなこんなで事件後一か月近くが経ち。学園は近々再開することになるようだ。既に大半の生徒は戻っているので、講義がないだけで今更なような気もするんだけどね。

俺はどうなるんだろうな・・・そんな事を色々と考えながら、相変わらず優弥とランチをしていると、久しぶりの登場の小日向さんがやってきて、突然理事長室に呼ばれる事となる。優弥の不安そうな顔を横目に理事長室に向かう。


コンコン


「失礼します。草薙氏を連れてきました」

小日向さんが扉をノックする。なんか、雰囲気が違うような気がする。


「入りなさい」


ガチャッ


小日向さんに促され理事長室に入ると。

すると、ソファには理事長、咲宮耶と三条、そしてもう一人男性が理事長の隣で座っていた。その男性の後ろには秘書らしき人が二人立っていた。とても偉い人なのが解る。

これは、何かある予感が肌でハッキリと感じた。


しかし、なんだこのシチュエーションは。とてもデジャブを感じる。





・・・次回『真実の片棒』

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