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八咫の鴉  作者: 蓬莱さん
18/35

18話 柳生彩華


◇◆◇◆◇◆


----時は少しさかのぼる----


私の名前は柳生彩華。尾張柳生、現当主の長女。初代宗主・柳生兵庫助利厳が阿茶の局さまから薫陶を受け、ヤタガラスの一員となる。その後は尾張藩剣術指南役を務めながら、ヤタガラス後進育成尽力をに尽力した名門だ。

私も柳生の名に恥じぬよう強くならないといけない。

そして、私には兄がいる。兄は兵庫助の再来と呼ばれる程の神童で、今ではヤタガラス有数の使い手としてAランクチームを率いて活躍している。そんな兄さまをわたしは尊敬している。

少々、スキンシップが強いのが困りものだけど。

私は常に思う。柳生は誰にも負けない最強の剣。私も兄さまに引けを取らない強さを身に着け、ともに柳生を引っ張っていかなければならない。その為には神器が絶対に必要。強さの証は神器で決まるといってもいいと思ってる。

その神器を兄さまは持っている。我が家に代々伝わる神器【飛桜】の継承者。そして柳生家に二人目の神器使いが出れば。さらに柳生は盤石になる。強さも名誉も全ては神器しだい。そう思っていた。


そして、今この緊急事態がおこった、この学園の研究棟には所持者の居ない、眠れる神器があるという。これはきっと、めぐり合わせ。神器に私を認めて貰うための絶好の機会。私が一人で神器の所へ向かおうとすると、昔からの親友二人がどうしてもと付いてきた、柳生の分家の子で私のお目付けなのだけど、とても仲良くしている。私たちは簡易羽織を纏い駆け足で研究棟まで行く。途中ひび割れた所から瘴気が滲み出ていたけど大丈夫だと判断してさらに進み研究棟まで無事にたどり着いた。

飛桜(ひおう)研究棟の入り口は半開きになっていて、職員は皆すでに避難しているようで誰も居なかった。私たちは慎重に進み最奥にある神器の保管室まで行く。以前兄さまから話を聞いていたので、ここで間違いないと思う。私は扉の前で大きく自分の名前を宣言した。そして、明滅する解除パネルに手を触れる。


バシッ!!


「痛っ!!」

電流が私を襲う。激しい痛みとともに両手が弾き飛ばされる。


バシッ!!


バシッ!!


私は痛みに耐えて何度も挑戦する。

でも、何度も何度も弾かれる。友人二人は私を止めようとする、それを振り切りまた手をかざす。

それでも弾かれる。目から思わず涙が溢れてくる。手の痛みより、完全に拒否されたことへの悔しい涙。解ってはいたけど、ひょっとしたらの思いがあった。


私の心は焦燥感でいっぱいになる・・。と、その時、大きな余震が起こった。私たちは体制を崩して後ろに倒れ頭を強くうつ。そして、私の綯い交ぜになった頭の意識が薄れていく。


どうして・・・どうして・・・


どのくらい意識がなかったのか・・・

次に私が目を覚ました時、三条様が学園に連れてきた、不審人物。あの草薙一真が目の前に居た。



◇◆◇◆◇◆


----時はもどり----


扉が開くのを見て彩華は驚愕の顔になる。


「私が何度も挑戦してダメだったのに・・・」

(一真・・あなたまさか)

彩華が信じられないという顔で俺を見てる。そんな怒り交じりの形相で見るのは止めてほしい。

本当に怖いから。

目のやり場がなく、頭を掻きながら下を向くと、薄く黒い靄が足元に流れてくる。

しまった!

俺は、ふと振り返ると瘴気がすぐそこまで来ていた。


「瘴気がせまってる!早く中に!」


俺は彩華に後ろから瘴気が迫っている事を、少し語気を強めて言う。


俺と彩華は二人を肩に抱え引きずりながら開いた扉の中に入る。俺たちが入り終わると同時に扉が自動で閉まる。

この部屋は俺が以前、なんだったかな?何かの測定の為に入った部屋に似ている。部屋は外の音が一切入らずとても静かで、全体が真っ白で眩しい位にとても明るい部屋だ。中は、一番奥に大きな筒状のものが床から縦に突き出ているだけで、とても殺風景だ。神器ってのは、あの筒の中なんだろうか。

幸いこの部屋は、今のところ瘴気は完全に遮断されてるようで、まずは一安心なんだが、いつまで持つかの保証はない。


二人はまだ目が覚める様子はない。彩華はとても難しい顔をしていて空気がとても思い。

「一つ聞いていいか?」

俺はこの雰囲気を壊す為、彩華に質問をする。


「な・・何・・かしら?」

彩華は無理に平静を装いながら答える。


「なんでいつもがんばるんだ?今日でもそうだ。かなり無茶だと解ってたろうに」

この際なんで、俺は疑問に思っていたことを率直に聞いてみる。


「バカじゃないの!?こんな時に・・」


「いや、すまない。以前からきになってたんで、つい」


「私は、尾張柳生の人間。尾張柳生は強くなくてはいけないの!それだけよ!」


呆れてものが言えないと言う顔をされるが、彩華は真面目なのか答えてくれる。

良かった。怒らせたわけではないようだ


「なんか、無理してないか?」


「してないわっ!!」


しまった!怒らせたか? でも、これ、かなり無理してるな? もう少し色々聞いてみるか。


「彩華は次期党首だから。頑張ってるのか?親父さんが病気がちとか?」


「全然違うわ。父は健在で立派に現当主を務めているわ。次期党首も兄さまが継ぐことになってる。兄さまは私なんかより遥かに強い。ヤタガラスのAランクで白羽織に最も近いと言われてる・・・」


彩華が言いよどむ。あれか?劣等感ってやつか。


「私は強くなりたいの!少しでも兄さまに追いつきたいの!」


ブラコンってやつか・・・。しまった!これは、あれだ。これ以上触れると面倒臭くなるやつだな。


「そうか・・・なら頑張れ」


「えっ?」

彩華が不思議そうな顔をする。否定でもされると思ったんだろうか。


「応援や協力とかはできないけど。なんとなく、その気持ちは解る。俺も小さい時に似たような感情を抱いた記憶がるからな」

ん?そんな記憶あったか?なにか思い出せそうな感じがするな。

・・・・・・・ま、いいかー。


そうこうしていると、気を失っていた二人が意識を取り戻す。俺は事情説明を彩華に任せた。


俺は彩華が説明しているあいだ、壁を右手でなぞりながら、何かないか調べる。

壁をグルリと一周したが、他に出口らしき物や操作パネルなんかは一切みあたらなかった。完全に閉じ込められたな。そして、扉まで戻ってくると、真っ白な扉の周囲が少し黒く滲んでいる事に気が付く。


「これはまずいな。見てみろ」


俺は指さす。三人は指さす方を見る。


『『えっ!?』』

『『いやぁぁぁ!』』


彩華は顔を青くし、二人はガクガクと震えだす。このままではまずい。救援に駆け付けたチームが来るまでなんとか時間稼ぎをしないと。

突然部屋の明るさが強くる。少々眩し過ぎると目を覆う。慣れてきた目で浸食されかけた扉の黒く滲んだ部分が少し薄れていた。


「三人とも落ち着いて!この部屋の防衛機構が機能している。完全に浸食するまで、まだまだ時間はある」


俺は三人に簡易羽織をマナで薄く覆う方法を教える。


「この技術はまだ私たちは学んでないわ。たしか兄さまから少し聞いた覚えがあるけど高等科だったと思う」


彩華に返事はせず、二人に教える。

「え、と。こうやって・・・手にマナを・・」


「 (なんなのこいつ?) 」


彩華がつぶやいている。悪いが小声で言うのはやめてほしい。聞こえてますかから。

彩華はもちろんの事三人は筋が良く、すぐに簡易羽織を強化してみせた。さすが、基礎がしっかりできてる。

少し安堵したのも束の間。扉の周囲がさらに黒く滲み浸食が進んでいく。

扉の向こうは高濃度の瘴気で充満しているのは間違いない。

彩華もそれに気づいたのか俺を見る。

俺たちは扉の反対側で一番奥の筒状の横まで移動する。すると、扉からうっすらと瘴気が漏れ出ている。


「私がなんとかするわ!」


彩華が扉の近くまで寄り、両の手からマナを放出して浄化を試みる。が、マナが瘴気に触れると、マナも黒く浸食される。


「媒体が無ければ浄化はできない!」


俺は彼女の両肩をつかみ。やめさせる。


「解ってるわよっ!!でも・・でも・・このままじゃあ、私あの子たちも巻き込んでしまって・・・」


彩華は二人に何度も『ごめんなさい』を言いながら涙を流す。

マナを吸収した瘴気がさらに勢いを増し。扉がどんどんとドス黒く浸食されていく。



チリリリーン!

鈴の音?


「え?鈴の音?!」


彩華たち3人にも聞こえているようだ。



チリリリーン

チリリリリリーン


さらに鈴の音が強くなる


そして筒状の物から機械音が聞こえ。筒は下へ降りていく、いや、外表がだけが下へスライドして行く。

中からガラス状の筒が見えてくる。




・・・次回『甦生』

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