17話 柳生厳克
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《 東京郊外上空 》
俺の名前は、柳生 厳克。柳生一門は江戸時代に入り、江戸と尾張の二つに別れた。活人剣を継承した江戸柳生と殺人剣を継承した尾張柳生。俺は尾張柳生の次期で当主で、Aクラスの鴉だ。しかも白羽織候補とも言われている。俺が率いるチームも全員が黒羽織。チームの殆どが尾張柳生一派の面々でチーム柳生とも言われるエリート集団ってわけだ。いずれは、副局長や土御門の兄貴にだって勝つつもりでいる。あの二人はバケモンだけどな。もう一人九州にいるけど、あれはノーカンってやつだ。そんな俺だけど一つだけ困ったことがある。俺には、可愛い妹がいるんだが、これがまた超が付くやんちゃときてる。さらに、親父が超がつくほど可愛がりようで、甘々でしょうがない。全く、俺の可愛い妹をあんまり甘やかさないでほしいもんだ。
その妹が、黒羽学園に在籍してるんだが、俺としてはこんな危険なことは辞めて、優しくお淑やかに育ってほしいと思っている。本人は「彩華はお兄様の様に強くなります!」なんて言うくらい可愛いんだけどな。
そして。さきほど大型の地震があった。俺が常駐してるこの駐屯地でおかなえい揺れた。その影響で瘴気災害が観測され緊急クエストが発行。俺達はヘリにぶら下げらながら現場に向かってる最中だ。場所は妹の居る黒羽学園のすぐ側で、かなり危険な状況らしい。震源は殆ど直下。揺れで付近の地面に亀裂が入り、そこから瘴気が噴出している。今しがたも余震らしき大きな揺れを観測して、亀裂が広がった可能性が高いみたいだ。瘴気数値もかなり高く、車両内のセンサーでも濃度の上昇を検知できた。時間が経てばドンドン危険度が増す。間違いなく、俺たちAクラス以上でしか対処できないクエストだろう。俺たちの他にサポートとしてBクラスが二つ、一緒に出動して同じくヘリにぶら下げられながら向かっている。しかし、正直、この揺れ苦手なんだよ。
俺は気分の悪くなるのを抑えながら、インカムで皆に状況と到着後の行動を指示する。こうゆう高度なクエストで複数チームが編成される時は、ほぼ決まって上位のチームが指揮を執る。今回のクエストはスピード勝負。いかに被害を出す前に収拾するか。うちのやんちゃな妹が出しゃばる前に終わらせないとな。
と、思っていたら。親父からこの緊急回線に妹が心配の連絡をわざわざいれてきた。全く、なんて不謹慎なんだ。
そうこうしていたら、学園に到着した。俺は着地する前にスカウトドローンを飛ばす指示を出し、着地と同時にドライバーに車両を走らせ現場に急行する。
学園から現場まではすぐなんだが、昼間なのに辺りは薄暗く瘴気が既に広がっているのが視認できる。
先行させたスカウトドローンからの映像が見ると、亀裂らしきものはそんなに大きくはないが既に周囲では獣や植物が腐敗しながら魍魎化している。
俺たちは現場に到着してすぐ降車し散開し各自いつもの手際で処理をしていく。一人は結界エリアの構築。ひとりは周囲の瘴気を浄化していく。ひとりはスカウトドローンの数を増やし周囲に飛ばす。俺は共を二人連れ、簡易神器を使って、無数の魍魎鬼を蹴散らしながら亀裂に駆けていく。
その処理数は異常で、小型の魍魎鬼が次から次へと処理されていく。この処理数はスコアと呼ばれ、このスコアの結果は本部にも送られて評価にもつながる。初期段階の魍魎鬼なんて俺たちの相手にはならない。早々に亀裂の前に到着し、二人は噴出してくる瘴気を浄化を始める。突然どこから湧いたのか中型の魍魎鬼が一体俺たちの背後から襲ってきた。
「邪魔だー!一の太刀・飛桜桜苛一閃!!」
俺は既に気づいていて、振り向き様に左の腰に差していた神器【飛桜】を、右手で抜くと同時に一刀両断する。
斬られた魍魎鬼はそのまま微動だにせず、少し遅れて斬撃の終わる方へ吸い寄せられる様にして霧散していく。
共の二人はその光景に振り向きもせず浄化をしている。安全確保が完了し車両を亀裂の側まで移動させ、車両の上部装備からシリコン樹脂を亀裂に向かって吹きつける。
「これで急場は凌げるだろう。早かったな」
俺達が一息ついていると、車内から俺を呼ぶ。
「リーダー!大変です!!」
「どうした?!」
「学園内のBクラスチームから連絡!地下施設の内壁に亀裂が生じており、そこから瘴気が滲み出ているとのことです!」
「なっ!!!」
「現在Bクラスチームが対応していますが、亀裂自体は小さいようですが数が多く、外周を調査していたもう一つのBクラスチームも救援に向かわせます」
「了解した!俺達も車両に乗り込んで向かうぞ!」
シリコン樹脂を散布している仲間が俺を静止する。
「待ってください!散布完了まで後5分ほどかかります。それまで車両は動けません!」
おれは苦虫を噛んだような表情になるが、仕方がない。グッと堪える。
ゴゴゴゴゴゴゴ
その直後、さらに追い打ちをかけるよう、立っていられない程の大きな余震が起きる。
余震が終わるのを待って、オペレーターが学園内のBクラスチームの状況を確認する為、相手からの応答を待つが、返事がない。さらに、外周調査をしていたチームにも通信するが同じく返事がない。学園に通信するもやはり返事が来ない。
「後は任す!!」
俺は単身、無我夢中で学園の方へ駆け出していく。
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《 黒羽学園地下構内 》
学園では二度目の大きな余震の後、あちらこちらから悲鳴や怒号が響き渡る。
俺は、柳生彩華と他二名を追って、研究棟に向かっていた。と、研究棟の手前の訓練棟の一角にある装備室に設置してある簡易装備一式が入ったカバンを取りに来たんだが、先客があった様で丁度三つカバンが持ち出されていた。多分、彼女たちが持って行ったんだろう。
無謀には間違いないんだが、無策ではないらしい。そういった知恵が回るところが厄介なんだけどな。本当の窮地を知らず、危地に飛び込むほど愚かな事はない。中途半端な知識や力を持ってる事が一番危険だ。
昔。よく、じいちゃんに怒られたのを、また思い出す。最近はじいちゃんと過ごした時の事を思い起こす事が多い。なんだろう、復習をさせられてる気分になる。が、お陰で今に生きているんだろう事は鈍感な俺でもわかる。そう思うと、じいちゃんって何者だったんだろうと。
そんな、ことを考えながら、通路を研究棟へ進んでいく。研究棟は緊急警報が鳴り響いており、普段はすぐに到着するはずなのに、明滅する非常灯の明るさと塵交じった視界、足元は瓦礫が散乱していて思ったように前に進まない。結構、地震による被害もかなりなもんだ。
さらに、進むと。非常口らしき扉から肩を貸しあいながら数人の人が出ていくのが見えた。羽織を着ていたから救援に来たヤタガラスみたいだ。余震の崩壊に巻き込まれたみたいだ。
うっ・・・
俺はとっさに手で口を覆い、少しうしろに下がる。
「瘴気が・・・」
瘴気が思った以上に濃い。俺は急いで簡易装備を装着する。
さて、さすがにこのままで、まだ危険なので俺はマナを手から放出して簡易羽織に手で撫でる様に膜を薄く張る。これもじいちゃんから教わった技術だ。
防塵マスクとゴーグルにも同じ処理を施して、ライトを手に持って進む。ここからは時間の勝負だな。幾つもの亀裂から瘴気が噴出しているので、こんな簡易装備ではいつまでも持たない。
俺は視界の悪い中を足早に進む。少し行くと瘴気は薄れてきて視界もマシになる。が、振り返ると先ほどの場所が一番瘴気濃度が濃くて危険な箇所だと解る。それは、返りの道が瘴気で満ちており今後も濃度は濃くなり戻れない事を意味する。本格的にヤバイな。救援もすぐにはあてにできないだろうし。どうするか?
考えながら、先を進み研究棟の入り口に到着する。すでに瘴気はここまで来ている。入り口は開いており、扉は電気が来ていないのか、閉めることができない。さらに進み一番奥まで行くと頑丈そうな扉がある。
うううううう
その扉の前から、か細い呻き声が聞こえる。
そこには、彼女たち三人が倒れていた。三人は簡易羽織を着ていたが、どうやら余震の衝撃でどこかをうって気を失っていたみたいだ。俺が駆け寄ると、柳生彩華が目を覚ました。
「ここは?!あ、あなたは・・・」
「草薙一真だ。大丈夫か?」
何故か俺は、助けにきたとは言わなかった。
「二人は?」
彩華が聞いてくる
「気を失っているだけのようだ」
「助けにきてくれたの?」
「いや、通りかかっただけなんだけどね・・・はは」
俺は後頭部をポリポリと書く簡易羽織の上からでも掻けるのかどうかは突っ込まないでほしい。
ゴゴゴゴゴ
また揺れたが、先ほどほど大きくはなかった。が、瘴気がドンドン濃くなっていくのがわかる。
彩華も瘴気が迫ってきているのを見て明らかに動揺している。
「このままではまずいな。柳生さんはこの扉を開けれる?」
「開けれるわけないわ!ここは神器に選ばれた人しか入れない!」
チリリリーン
(ん?鈴?)
扉の横のパネルが明滅する
(手をかざすのか?)
俺は手の平をパネルにかざす。
すると、ガチャンと音がして、扉がゆっくりと開いていく。
・・・次回『柳生彩華』




