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第六話

今日も、仕事終わりに待ち合わせをした。

待ち合わせ場所はいつもの通り。

フィールドが見渡せる二階、展望と休憩スペースを兼ねた自販機前。

気分は、いつも以上にうずうずしている。

だって、今日は二人。

初めての。



『今日は、マンツーマン。場所は無理を言って貸し切りにしてもらいました』

インカムから聞こえるのは、ミドリの声。

『相手との距離があるうちには、狙撃の可能性を考慮しながら前進。遮蔽物を利用しながら、相手がいるであろう想定ポイントを目指し、進んでください』

ゲートをくぐった先のフィールドは、前回の森の中、ではなく、今日は街の中だった。

欠けたブロック塀。穴の開いた家の壁。

路肩に止まっている自動車。

『見通しはかなり悪い。ただ、それはお互い同じ。無理せずに行きましょう』

そして、灯るシグナル。

赤から。

青へ。

サイレンの音。

『さぁ、スタートです』

深呼吸をした。

いつもの、ブザーを聞くたびに跳ね上がる心臓を、落ち着かせる。

一歩。

フィールドに足を踏み入れる。

ブーツの下から、砕けた砂利の感触が伝わる。

スタート地点の前はT字路になっていたので、壁際に身を寄せ、先を覗く。もちろん、誰もいない。

身を隠せる場所。電柱を見つけ、そこまで走る。

手に持っているのは、先日ミドリから借りたHK33。なし崩し的に、どうやら貰ってもいいらしい、という勝手な判断。

電柱の先は、数メートルで十字路、その先がT字路。

十字路まで続く壁が、上半分壊れている。

「とりあえずは……」

その壁が壊れているところまで進み、頭を出す。と。

シュッ。

目の前を、何かが、通り過ぎた。

『想定内の行動しすぎ。まぁ、初心者ならば仕方ないですが』

まてまてまて、既にここはミドリの射撃のレンジの中か。

それよりも。

「いきなり撃ってくるって、どういうつもり。今日はレッスンじゃないの」

『レッスンです。実戦形式の』

「ということは」

『見えれば当然撃ちます』

性格の悪い。

『撃たれないように、相手を撃つにはどうしたらいいか』

「見つからないように隠れて、相手を見つける」

理屈は、確かにそうかもしれない。けど。

「それができたら苦労はしないし、大体、どこから撃ってきたのかわからない」

『それは考えてください。とりあえず、今の頭の位置と、弾の飛んできた方向と、弾の創った跡を直線で結べばまぁまぁわかるかと』

それをじっと考えろという、無理難題。

言われて、弾の飛んで行った方向を向く。もちろん、頭は隠して。

反対の壁を見ると、確かに新しい穴が一つ、増えていた。

今の頭のある位置からは、やや下。

ということは、高い所から撃ってきた?

ポケットから、小さな鏡を出してその手を壁の穴へ。

少しずつ動かすと……いた、ずっと向こうの、壁の上に。

『見つけたみたいですね。では、その鏡も』

そういうと、手の中で鏡がパンッ、と、音を立てて砕ける。

「ちょ、これ私物なんだけど」

『あ、ごめんなさい、そうとは知らず』

頭きた。

壁の下半分、残っている場所に身を隠すように、這って進む。

穴を通り越し、十字路へ。

十字路は、背の高い4WD車が止まっていてミドリ側へは通れなかった。丁度、道を塞ぐ感じになっている。

背の高い車か……

下を覗くと、何とか通れそうなスペースがある。

屈んで、その下に入る。

「ホコリ臭い、オイル臭い……」

我慢しつつ、這って進むと、タイヤの陰に隠れて向こうを見る。

壁の上に、人影。

這って戻って、手に持った銃を前へ。

腕が不自然に伸ばされているのが、とても痛い。それでも、何とかストックを肩に当てて。

スコープを覗くと、その中にミドリが見えた。

あぁ、なるほど。

そう思いながら、セフティを解除、レバーをEへ。

深呼吸をして。

トリガーを、引いた。

ダンダンダン。

衝撃が肩に響く。

踊るスコープ。

『おっと』

着弾の音は聞こえない。

再度、トリガー。

続けて、肩に衝撃。

『そうそう、その感じ』

スコープ越しに見るミドリ。こっちを見て、凄い余裕。

『じゃ、場所移動で』

そういって、ひらりと、壁の上から姿を消した。

「……」

ごそごそと。

車の下から前進。

そしてまた、壁際へ。

地道に前進。

ふと、思い。

セレクトレバーをFへ。

手に持った銃の重さを感じながら少しずつ進み。

距離は相当に縮まったはずだと、自分に言い聞かせる。

そういえば、ミドリの銃は何という名前だっただろう。

あの距離から狙えるのだから、短い銃ではないはず。

そんなことを考え、また足を踏み出した。



「あと少しなのに」

カスミが言う。

目標のフラッグまではあと30mといったところ。

そして、その前には、サブマシンガンでこちらを伺う人と。

ズダッ。

目の前の地面を、掘り変えず様に、弾を送り込む人と。

「進めない」

この場所まで、何人か進んでいる。

玄に目の前には、遮蔽物である壁を抜けた先には。

何人かが、横になっていた。

「遮蔽物が少ない、ここから前に進んだら、狙い撃ちか」

えげつないステージ。

「後ろからの援護は」

「もうないよ、残っているのは二人だけ」

そう言うと、弾倉の残弾をチェック。

こちらはあと十二発。

「カスミは」

「後五発。弾幕張るには、少ないね」

なら。

「当ててよね」

そう言い残して。

レバーがFなのを確認して。

僕は、飛び出した。

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