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第七話

「終わりましたよ」

そういって、頬をペチペチと叩かれる。

「うん……」

まだ、目の焦点が合わない。

「まったく。あれのどこに作戦があるんだか。仕損じも良い所です」

ため息をつきつつも、カスミの表情はにこやかだ。

「勝てたんでしょ?」

「勝てましたよ」

そう言うと、手を差しだすカスミ。

「ただ、今度はもうないですからね」



遮蔽物の後ろから、思いきり走り出す。

身軽になるために、HK33は置いていく。替わりに太腿から抜いたP228ハンドガンを手に持って。

思わぬ行動、なのだろう、サブマシンガン、MP5を構えた方はびっくりしている。

そこに向けて、228を撃つ。

目的は、相手を驚かせること。

そして、注意をこちらに向けること。

走りながら、しかも、シングルアクションでは弾なんか当たるわけがない。

距離は走って20m強。

銃口が、こちらを向き。

一発。

牽制に、スナイパーのいる方へ。

少しでも、スナイパーの動き求められれば。

そうすれば、置いてきたHK33とSG550があれば、きっとカスミが仕留めてくれる。

続けて、撃ち続ける、とにかく。

何か、叫んだかもしれない。

そのうち。

スライドがガチャリと止まり。

全弾撃ち尽くした僕のところへ。

MP5の銃口が。



「え~、今回、このような、大変奇抜な社内レクリエーションを実施することができ、また、参加していただいたみなさんは、楽しんでいただけたことと思います……」

一日が経つのはとても早かった。

ゲームは終了。

午後の部も終わり。

閉会式。

「カスミさん、とてもめんどくさいです。この部分こそ、カットはできないですか」

「この部分をカットしたら、今日の保険が下りなくなります。我慢してください」

などと、訳の分からないやり取りをして時間をつぶす。

「今回のレクリエーションの活躍を、ぜひ、職場に戻ってからも期待したいものです……」

嫌なセリフ。


そして、式の終了後。

貸出していた中の回収、服の回収とクリーニングの手続きなどをして。

建物を出たのは、結局8時過ぎになっていた。

バスの時間は終わっていたため、駅までゆっくり歩く。

「うん、今日は、まぁまぁ楽しかった」

「まぁまぁ?いつもよりも張り切り過ぎ。あんな事するなんて思わなかったって、みんな言っていたのに」

そうかな。

「大きなケガもなかったし、次回の開催もありそうだし」

「趣味と実益を兼ねたレクリエーションを、会社のお金で再度やろうなんて、ね」

「レクリエーションなんて、そんなものだと思うけど」

そうかも。

「じゃ、今日はこの辺で」

駅に着き、互いに別方向なので改札で別れる。

いつものように、帰りの電車に揺られる。

今日の一日は、短かったかな……長かったかな……

明日は、また仕事か。

少しだけ。

ほんの少しだけ、憂鬱になった。

楽しみを見つけた、気がする。

その楽しみのために、頑張ろうと思う。

でも。

頑張った結果が、出るのか、不安がある。

ぐるぐると考えているうちに、うとうとと。

今日は、疲れたな。瞼が重く。

『なかなかの活躍だったじゃないか』

そう声をかけられて、ハッとする。

座っている席の反対側に。

誰かが、居て。

こちらに、銃を構えて。

その銃口が、僕を狙って。

指が動いて。

ゆっくりと、銃口から何かが出てきて。

スライドが、徐々に下がっていって。

僕の方に、どんどんと向かってきて。

あぁ、この弾は、頭にあたるな、なんて、冷静に、その弾を見つめて。

ニヤッと笑ったその顔を、見ながら。

頭に、強い衝撃が……


ゴン。

「いった……」

うとうとしていたらしい。

後ろの窓ガラスに、盛大に頭をぶつけて。

あぁ、周りの人がくすくす笑っている。

恥ずかしい……



タタン、タタン、タタン……

部屋の中に、音が響く。

断続的に。

しばらくすると、レバーがストップし、何も出なくなる。

そして、目の前に動いてくるターゲット。

「大分、的に当たる様になりました」

そう評してくれるのは、今日も付き合ってくれているミドリ。

「それはどうも」

言いながら、的を確認する。

弾痕は、概ね真ん中に集まるようになってきていた。

「そう言えば、この間のゲームのビデオ、見ましたよ」

新しい的を手配しながら言うミドリの言葉に、顔が赤くなる。

「あれ、もう消去してよ」

「そうはいかないでしょう、あれはあれで、まぁ間違ってはいないですからね」

うるさいなぁ。

あれはただ単に……

「あれはただ単に、負けたくなかったから……」

「負けず嫌いね。随分熱くなりやすい様で」

「なにそれ、馬鹿にしてんの?」

「ほめてるんですよ。勝とうという気持ちは重要です」

気持ち、ね。

「気持ちなんて」

「はい?」

ずっと奥に移動していく的に対して、腹ばいになって狙いを定める。

「気持ちなんて、意味はない。結果が続かないことに、意味はない」

そう言って、スコープ越しに的を見る。

「気持ちは参加賞程度、ですか」

トリガーを引く。

ダダダンと。

肩に響く衝撃に続き、スコープの向こうで、的が揺れる。

「今、こうしているのは、参加賞以上のものがほしいから」

そう言って、更に引く。

断続的に発射される弾。

それに対して、ミドリは何も言わなかった。

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