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第五話

当たらない。

とにかく、真ん中にあたらない。

「気持ちがぶれているからです」

脇からそんな抽象的な言葉が来る。

また、一発。

チュン。

「段々と、的から外れていっていますよ」

「わかってる、少し静かにしてて」

「はいはい」

イライラする。どうしてこんなに。

どうしてこんなに、的を外してばかりなのか。

スコープ越しに見ている的が、ぼやける。

「くそっ」

それでも引いた引き金は、的の遥か左を通るものしか送れなかった。

今ので、30発目。

「……少し、休憩しましょう」

手元に届いた的にあいた穴は、てんでばらばらの表れだった。


「コーヒーですか、紅茶ですか」

休憩コーナーの自販機前。

「……コーヒー」

仏頂面しかできない。

受け取ったコーヒーを、喉に流し込む。

あぁ、つまらない。

「そんな顔してます」

反対の椅子に座った声が、飽きれた言葉をかけてくる。

「いつも、そうなんじゃないですか。仕事も。つまらなさそうだって聞いてますよ」

「誰から」

「カスミから」

あのお喋り。

「息詰まったように見えたから、ここを紹介したんじゃないですか」

コーヒーか紅茶かと聞いておいて、自分はコーラを飲んでいる分際で。

「なにがわかるのさ」

「なにもわかりませんよ。ここでは初対面です」

う、冷たい。

「ただ」

「ただ?」

「殴り合いで思いが伝わるなんて、よく聞きますけど。それよりも、スコープを覗いて自分と対話して、その弾を受けて、相手と対話をする。その方が、顔が見えなくても伝わるものがあるんじゃないかって、そう言ってましたよ、カスミが」

「自分を見ろってこと?」

「周りもです」

「だから、このゲームに?」

「だから、このゲームに」

ハァ。

ため息。

「わかった。もう少し、教えて」

「そうこなくては」


時間は、そんなに経っていないはず。

ただ、確実に弾は減っていく。

弾倉はもう六個目。

「段々、中心に当たるようになってきましたよ」

「お世辞?」

「評価です」

練習の成果なのか。

確かに、真ん中にあたるようになってきた。

呼吸も、落ち着いてきた。

トリガーにかかる指も。

「それが空になったら、次はバーストで」

「バーストって何?」

「一回のトリガーで、3発前後の発射です。フルオートよりも扱いやすいですし」

そんなやり取りを経て。

伏射の次は、立射、動く的、沢山の的。

みっちりの練習。

「こんなに緊張したのは、何年ぶりだろう」

「きっと、明日は筋肉痛ですよ」

最終的に、及第点をもらって、時間も時間になったので、今日は終了となった。


「今日は、ありがとう」

建物を出たところで、お礼を言う。

「いえいえ、なかなかに楽しかったので」

そう言うと、手を差しだされた。

「え?」

「あれ?この流れだと、握手して、連絡先の交換だと思ったんですが」

「あ、え、ごめん、何も考えてなかった」

「そうですか。僕はミドリ。今度は、お手合わせいたしましょう」

そう言って握手をし、連絡先を交換すると、ミドリは帰っていった。



「そこまでのやり取りは、聞いてましたよミドリから」

脇に伏せているカスミと、飛び交う銃弾を避けながらの会話。

「その銃も、カスミのお古ですか、なら、わかりやすい」

そう言うと遮蔽物にしていた低い茂みの脇からSG550を斉射する。

放たれた弾は、真っ直ぐに目標に向かっていき。

チュッ。

当たったか当たらないか、ほとんど聞き取れない音を立てて、一人がその場に倒れこんだ。

「もう少し進みたいんだけど、弾幕が厚いなぁ」

今の斉射で場所がわかったのだろう、そこへと集中的に飛んでくる弾。

仕方ない。

スコープ越しに覗くと、こちらに向けてサブマシンガンで弾幕を張る一人。

そこへめがけて。

ズダダダッ。

息を整えて引いたトリガーは、素直に弾を、送り出す。

スコープの向こうで、プレゼントはちゃんと届いたようだ。

「射撃の腕あげたね、結構結構」

脇からはにぎやかな声。

『弾幕が薄くなった。各個前進』

インカムからの指示で、そこここの茂みがごそごそと動くさまは、中身が何か知っていなければ非常に気持ちが悪い。

でも。

「じっとしてれば、遠目にはわからないってのは、良く分かった」

フィールドにあった迷彩柄は、確かに役に立つ。覚えておかなきゃ。

「その分、向こうのフィールドに入ったら不利。市街地は一気呵成に、だね」

頭上の時計を見やり、残り時間を確認してから、二人も前進をする。

基本的には、匍匐前進。筋トレ状態。

もう少し茂みが高いか、木が生えていれば歩けるのに。

「こちらとあちらの戦力差は五分五分。火力も五分五分。ま、フィールドも狭いし」

「それ、長距離射撃が無いってこと?」

「そうは言わない。開始早々、一人やられたでしょう。長距離射撃で。あれには気を付けなきゃ」

そうか、忘れていた。

ゲーム開始早々、敵弾に倒れた人が居た。

真っ直ぐに、フラッグ付近から飛んできたように見えた銃弾は、迷うことなく、その人の胸を貫いた。

「あれ、痛いよね、あの距離であの威力。気が付いたかな」

「どっちかって言うと、その後の倒れた時にぶつけた顔の方が痛いんじゃない」

「どっちにしても、相手にはしたくないな、誰か、はやく進んでくれないかな、アタッカーが」

カスミは、少し移動して木の後ろに隠れ、立ち上がった。

「550、アタッカーじゃないの?」

「そうだよ、だって、アタッカーって、痛いじゃないか、当たった時」

うん、この人、何か間違ってる。

「そんなこと言ったって、33だって、スナイパーって訳じゃないでしょ」

そりゃ、そうだ。

「だって、弾がなくなったら、格好悪いじゃない」

「負けたらもっと格好悪いよ」

ごもっとも。

「じゃ、いきますか」

残弾は後二十発。

セミオートなら、まだいける。

「フルオートで撃つなよ」

うるさいやい。

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