表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第一話

誰にだって、日常はある。

僕には、仕事をして、家に帰って、TVを見て。

適当に、親と電話をして。

友達と、たまに会って話をして。

近くのコンビニで、お酒を買ってきて、飲むくらい。

大体、その繰り返しが、大方の日常。

つまらなくない、といえば、嘘になる。

でも、積極的に、例えば、仕事をやめて、世界に出たいとか。

今流行りの、フルダイブ型のゲームに身を投じるとか。

そこまで、変えてやろう、なんて、そんな気はなかった。

あくまでも、自分の身の回りは変えないで、そこそこに刺激のある生活が送れれば。

大体、誰だって同じでしょう、そんな思いは。

外に出ようって、積極的な人の方がおかしいんだ。

そんな、考えを持っていた。



「お疲れ様でした」

今日も、いつもと同じように、仕事が終わった。

机の上を片付けて、着替えて、いつものように帰る。

本屋にでも寄ろうか、なんて、ぼーっと思っていた時。

「どこ行くんですか、これからレクリエーションの打ち合わせですよ」

衝立の向こうから、声をかけられた。

「は?聞いてないけど」

「この間のミーティングで、社内レクの下調べに週末行くって話、しました」

そう言って顔を覗かせたのは、社内随一地味メガネのカスミだった。

「そんなこと、言ってたっけ?言ってたか?言ってたような……」

ミーティングの無い様なんて、大体自分に関係ないことがほとんどだ、聞いている人の方が少ないだろうに。

「久しぶりのレクだから、楽しいものにしようって、提案しました」

自分の顔を指さしながら、自信満々に言うカスミ。

あぁ、こんなやる気のあるやつだなんて、知らなかったよ。

「楽しいものって何だ、ボーリングか?」

運動系全般が、得意ではない僕が、社内レクなんて楽しいはずがないじゃないか。

そんな、うんざりした声が顔にも出ていたんだろう。

「そんな、大した運動じゃないですよ、すぐに終わるし、白熱するし。好きな人は好きだと思いますよ」

そう言って、一枚のパンフを出してきた。

「何だこれ……ガン…シューター?」

パンフレットの表紙は二丁の銃が描かれた、コミックの表紙みたいなもの。

中身は、新規にオープンした施設の説明と、利用料金など。

「ベタな名前。新手のゲーセン?これのどこがレクなのさ」

「撃ち合いって、楽しいですよ。それに、これなら怪我もそんなにしないですし、熱中すること間違いなし、です」

「いやいや、撃ち合いって時点で、ケガするよね」

「だから、安全な打ち合いですって。行ってみましょうよ」

そう言って、カスミが手を引っ張る。

残念なことに、その施設の住所はわりとここの近く。

これは、用事がある、とかで、逃げられる場所じゃない。

「わかったよ、わかりました。付き合えばいいんでしょ」

そう言うと、にんまりとした顔で、うんうんと大きくうなずくカスミ。

「もう、予約は取ってあります!」

……まじか……



「こんな所、あったんだ。気が付かなかった」

バスを降りた先にあったのは、大きい体育館のような建物。

意外にも、人は多かった。

「早く早く、始まってますよ、もう」

そう言ってさっさと先に進むカスミの背中は、いつになく楽しそうだ。

明日が休み、ってだけじゃなさそうだな、このウキウキ感は。

「何してるんですか?」

「わかったよ、今行くよ」

ドアをくぐると、なんというか、独特の香りがした。

汚い、というイメージはない。

むしろ、非常にきれいな、場所。

汗臭さすらない。

なのに、独特の、熱気。

真っ直ぐ進むと、中を見渡せる観客席についた。

「なに?これ」

窓の向こう側には、一段低くなって、広いスペースがつくられていた。

大きさは、サッカー場くらいあるだろうか。かなり、広い。

そこに、大小さまざまな、壁。オブジェ。木。

そして、ゴーグルとベストを着た、人。

手に構えているのは、銃。

構えて、撃つ。

チュン。

窓ガラスが、音を立てる。

「え?」

「あぁ、気にしないでください、流れ弾ですよ」

カスミはそう言いながら、中を食い入るように見ている。

「や、待って。流れ弾って何さ。実弾?」

「違いますよ。エネルギー弾のコアが弾けた音です。証拠に、ガラスにキズ、無いでしょう?」

あまり、怖くて見たくないんだけど。

なんて、言えないな。恐る恐る窓に近付くと、確かに、当たったであろう場所にキズは、無い。

「何だよ、エネルギー弾って。大体、どういうルールなんだよ、これ」

「来るときに説明したじゃないですか。撃ち合いですよ、撃ち合い。実弾じゃなくて、実弾っぽく見える、加工エネルギー弾です。簡単に言うと、当たれば負け。当たったら、そりゃ痛いですけど、死ぬわけじゃないですし」

その説明を再度聞くだけで、もう目の前が真っ暗なんですけど。

「もう少ししたら、次の競技が始まります。受付に行って、着替えて、参加ですよ!」

えっと……無茶、言わないでください。

僕を、日常に返してください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ