87話
「どうやら、できたみたいだね」
その声と共に、目の前の人間もどきが先ほどまでの動きが嘘のように武器を構え隙を狙ってくる。連携がとれているのか、ハジメを中心に取り囲む。
「さあ、まずは制御だ。とりあえず、経験しよう」
すると、囲んでいた人間もどきが襲い掛かってくる。正面から一人が斬りかかってきたので、相手をするとすぐ後ろから間髪いれずに他の人間もどきが襲い掛かってくる。
しかし、全てが一撃で沈む。悪魔化する前の状態では胸を切り裂く程度だったが、悪魔の状態だと骨ごと真っ二つになった。後ろから斬りかかってきた人間もどきの攻撃を食らってしまったが、爪でひっかかれた程度でしか思えないほど肉体が変化していた。
しかし、頭に流れる音楽を聴きながら攻撃するのは難し…うう…少しでも思考を戦闘にするとすぐに視界が真っ暗になってしまう…
「くっそ!」
それから、何時間たったかわからないが足元をみれば数百はある人間もどきの死骸が転がっている。
「はぁはぁ…」
人間もどきから、拝借した剣の血を振ってはらい地面に刺して息を整える。人間もどきはもう出てこず、あたりは静かになっている。息を整えていると、目の前に白い粒が集まり人の形を成していく。だんだんと色がついていき、アルバスの姿が出てきた。
しかし、アルバスの姿を見た瞬間悪魔化が解けた。
「はぁはぁ…どうなってやがる…」
「お疲れ様。大したものだよ。初めてにしてはね。」
「なぜ、悪魔化がとけたんだ?頭にはまだ流れてるんだぞ?…」
「それは私が天使だからだよ。」
「て、天使…」
「うん。天使さ。まあ、人間から天使になったから天使もどきかな?あの人に私は生きさせてもらったんだ…」
「天使…まあ、その翼が何よりの証明か…てか、悪魔が居る以上天使もいるか…そんで、「あのひと」なんて含みのある言い方したら聞いてくれって言ってるようなもんじゃないか?」
「ふふふ。すまないね。では、聞いてくれるかい?」
「勝手にしろ…その間俺は休む」
「では…私は元は人間だったんだよ。賢者としてね。そして、大量の魔力を持っていた。この城の国王が私を見つけ雇ったんだよ。家族も大喜びさ、最後の日には村を上げて私をお祝いしてくれた。でも、私は呪われていたんだよ…どうやら、私は転生者のようでね…でも、うまくこの世界に適応できなくてね。精神は手校で来たけど、肉体が欠陥でね…表情が表せなかったり、寿命が短かったりね…」
「……」
「しかし、この国の国王はそんな私を大切にしてくれた。でも、寿命は尽きます。残り少ない命、私が寝ていると天使がやってきたのです。その天使は、私が異世界人で転生したこと。転生の記憶が無いこと。体が欠陥のことを話してくれました。そして、謝ってくれた。それは神に背く行為だったようです。私が気にしない。逆にありがとうございました。と言ったら、彼は笑ったのです」
「異世界…欠陥か…」
「ええ。運が悪かったんです。彼はそっと、私に言ったのです。「償う」と、そういって私に天使の立場と命をくれました。私は天使になり、命が尽きることがなくなりました。彼にお礼を言おうと思ったのでですが…しかし、彼は堕天し悪魔になったといわれました。いつの日か彼に一言でもお礼を言えたらなんて…」
「それで、俺に何が言いたいんだ?」
「もうすぐ、悪魔同士で戦争が起こるようです。おそらく、ハジメ君も関わるのでしょう?だから、力を求めて私のところにきた。その時、悪魔の中に彼を探してほしいのです」
「…わかった…ついでだ…」
「そういってくれると思っていました。彼の名は、フォカロル。水域の公爵 フォカロルです…」
「は?」
灯台下暗し!




